見出し画像

金木犀の香りにのせて

気がつけば、なんだか久しぶりのnoteです。
毎日、あれこれ色々の時間を過ごして、ああこれを書きたい、この気持ちを忘れてしまわないように言葉にしておきたい、と思うのになんとなくnoteを開かない日が続いていました。

あれ以来、ラジオ体操も継続中。和さんもひっぱりだしてみたところ、思いの外心地よかったみたいで毎日一緒に行くようになりました。二人での朝散歩も楽しい。今のところ、寝坊したのは1回。我ながら上出来!

さて、お店では金木犀シロップの豆花がはじまりました。
ラジオ体操へ向かう道中、白い塀に囲われた素敵なお宅の庭からこんもりとした金木犀の木が顔を出していて、毎日、そろそろかなあ、と気にしながら通っていました。ある日突然、あの懐かしいような甘やかな香り!それを胸いっぱいに吸い込んだらシロップ作らなきゃ!という気持ちになってせっせと仕込みました。

我が家のお庭には金木犀の木がないので、桂花茶(ドライ状態の金木犀のお花)を使います。せっせと…とは言ったものの私がすることはほとんど無くて、たっぷりのお湯とたっぷりの桂花茶でゆっくり抽出、お砂糖と一緒に火にかけて完成、です。これを濾しながらガラス瓶に注ぎ入れてゆくのですが、つややかに光る黄金色のシロップがつるつると瓶に落ちてゆく様子は何回見ても飽きない。魔女にでもなった気分です。そして、これ、本当に美味しいのです。やさしい金木犀の香りに包まれて、口に含むと桃や柿みたいなフルーティーな甘さを感じます。幸福の味!です。

このシロップを最初に作ったのは確か1年半くらい前のこと。他のシロップと同様に、トッピングをのせた豆花に合わせるつもりでした。ところが、トッピングを合わせると金木犀の香りが隠れてしまう。こんなに心ときめく香りなのに、どうにもこうにも、ただの甘いだけのシロップになってしまう。

そこで、思い切ってシロップだけのシンプルな豆花にしてみました。
…と、言葉にするとそれだけのことなのですが、そのときの私には迷いがたくさんあって、結構勇気のいる決断でした。

せっかくお店まで来ていただいて食べてもらうのに、あまりにシンプルな見た目にがっかりさせてしまうんじゃないか、とか、SNSに写真を載せても魅力的に映らないんじゃないか、とか。要は、「映えない」ことを気にしていたんです。「映え」をどこか否定的に捉えながらも、結局はそうしないとお客さんは喜んでくれない、と思っている節があったのだとこのときに自覚しました。

でも、杞憂に終わるとはまさにこのこと。年間を通してみても私たちのお店で一番人気の豆花になりました。このシロップがある時期に何度も何度も通ってくださるお客様も多く、大盛りもたくさん作りました。金木犀はいつですか?と聞かれることもしばしば。

自分のつくるものも、この店を愛してくださるお客様のことも、ちゃんと信じられていなかったのは私だったなあ、と反省しました。
華やかでなくても、写真には切り取れなくても、その時間だけ、からだいっぱいで感じ取る美しさ、美味しさ、みたいなものを、ちゃんと受け止めてもらえて、とってもとっても嬉しくて、このお店で自分がやっていることに自信を持てたのも、このときでした。

こうでなくちゃいけない、とか、普通はこうだから、とかそういうのを取っ払うのって思っている以上に難しいな、と思います。そもそも、そういうことに縛られていることに気付けなかったりもするし。
でも、本当に大切にしたいことは何だっけ、と心のなかで問い続けることはやめないでいたいな、と思います。

金木犀シロップの豆花、ぜひ食べにいらしてくださいね!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?