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最近読んだ本まとめ④

正月十一日、鏡殺し/歌野晶午

ようこそ、裏本格の世界へ――(歌野晶午)
本格ミステリ大賞二度受賞作家による処女短編集を、新装版で。
彼女が勤めに出たのは、このままでは姑を殺してしまうと思ったからだった――。夫を亡くした妻が姑という「他人」に憎しみを募らせるさまを描く(表題作)。猫のように性悪な恋人のため、会社の金を使い込んだ青年。彼に降りかかった「呪い」とは(「猫部屋の亡者」)。全七編収録。鬼才初の短編集を、新装版で。

ミステリ短編集。重たい話が多い。序盤の2つはそこまで重くなく、1番始めの「盗聴」はむしろ爽やかに終わるのだが(全部バッドエンドかと思ったのでびっくりした、でも好き)、後半になるにつれてどんどん重くなっていく。

やっぱり表題作の「正月十一日、鏡殺し」のインパクトがすごかった。後味がキツくて、しばらくイヤミス読みたくねえ!と思った(前回読んだ「絶対正義」もかなりキツかった)。

歌野さんの短編ミステリ集でいえば、好きな話が多かったのは「ハッピーエンドにさよならを」なのだが、インパクトの強さはこちらだと思う。本当に表題作がキツい。


ABC殺人事件/アガサ・クリスティ

ポアロのもとに届いた予告状のとおり、Aで始まる地名の町で、Aの頭文字の老婆が殺された。現場には不気味にABC鉄道案内が残されていた。まもなく、第二、第三の挑戦状が届き、Bの地でBの頭文字の娘が、Cの地でCの頭文字の紳士が殺され……。新訳でおくる、著者全盛期の代表作。

「そして誰もいなくなった」「アクロイド殺し」「オリエント急行の殺人」と並ぶ言わずと知れたクリスティ代表作。クリスティの作品は色々読んでいるのだが、実はこういった代表作にはあまり手を出したことがなく、今回読んだABC以外だとそして~しか読んだことがなかった。なぜならあとの2つはネタバレを踏んでしまっているからである。悲しい。でもいつか読みたい。

クリスティの作品って大体登場人物が多くて(なので読む前に登場人物の名前を頭に叩き込むことから始まる)、まずじっくり人物描写をしていくからなかなか事件が起こらない印象だった。

それがこの作品だと物語の性質上名前を叩き込むことなく読み進められて混乱しないし、事件が起こる早さにめちゃくちゃ驚いた。すぐ起こるやん。今まで読んだクリスティ作品の中でも取っつきやすさが段違いで、そりゃ代表作になるわなあと思った。

トリックもすごくよくまとまっていて煩雑さがなく、「あーなるほどそういうことね」と思ってもひっくり返してくる手腕がすごい。やっぱりクリスティはミスディレクションが上手すぎるよな。


アニメプロデューサーになろう!/福原慶匡

1冊で一気に学べる「アニメ製作の教科書」
アニメのプロデューサーには「製作」と「制作」、2つの役割があります。「製作」はアニメを「商品」として見る立場、「制作」はアニメを「作品」として見る立場です。日本のアニメはクリエイティブのレベルが高く、世界中でニーズがあります。でも、ビジネス面では発展途上です。この構造を変えられるのは、「製作」と「制作」両方のスキルと変革の意志を持った、新時代のアニメーションプロデューサーだけです。本書は「この先」を作るために、アニメーションプロデューサーに必要な「今現在の常識」を一気に学べる本をめざしました。アニメビジネスの未来のために、この本をぜひ使ってください。

ここ最近アニメを見ていて「こんなに配信サービスが流行してアニメ業界儲かってんのかな?」と純粋に思ったので読んでみた。あと二次元・声優界隈にいるオタクなので、こういう業界話にすごく興味があった。

アニメ業界でよく聞く「製作委員会方式」のことなど、すごく詳しくわかりやすく書かれていて勉強になった。ここ数年アニメの本数多すぎる、こんなに数いらないだろと勝手に思っていたのだが、日本のアニメビジネスは1つの作品にMAX出資して大当たりを狙うよりは、少額ずつ多くの作品に出資することで損を減らす、そのうちの1つが大当たりすればいい的な風潮があるためにアニメが増殖しすぎてしまうと書かれていてめちゃくちゃ腑に落ちた。そして大当たりする作品ではなく、負けない作品を作る傾向が強いために原作付きアニメや、似たようなアニメができてしまうそう。

あと声優の話もすごく面白かった。オーディションで決めることが多いのかと思っていたのだが、ここ最近3番手くらいまでのメインキャラは決め打ちしてしまうことが多いらしい。その理由も、

アイドル声優的な稼働ができる方にお願いしたいから、とか、プロモーション効果を考えてツイッターのフォロワー数がある人に、といったものがあります。そういった方がキャスティングされやすくなっているのが現実です。

めっちゃシビアだな!でもまあそうじゃなきゃあらゆるアニメのメインキャラ十数人の声優で回しているのでは?みたいなキャスティングにはならないよなぁと思ったり。

話には聞いたことがあったけど、アニメ仕事は花形の印象が強い割に稼げなくて、アニメレギュラー1本(イベント出演キャラソン込みで)の手取りは大卒の初任給くらいで(ナレーションだと年収2~3000万稼げるそう)、声優にとってはとにかく数出ることが重要らしい。それを踏まえると何か同じ人ばっかりじゃない?なキャスティングにもうなずけるなあ。

他にも具体的な数字や表込みで詳しく説明されていて本当に面白かった!

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