ADEの説明が気持ち悪い①既存の説明に突っ込む

最近、例のワクチンでADE(Antibody-Dependent Enhancement:抗体依存性感染増強)なる現象が生じるのではないかと話題になっている。

正直どっちもどっちな医師なのだが正義のお医者様方が情報発信をして下さっている。是非「もう打ったわ遅いわ!!」という突っ込みをされる前に話を聞いた方がいいかもしれない。多分釈然としないけど。

※というかEnhancement(増強)しか書いてないのに「感染」の意味はどこから来るんだろう?

で、そんな騒ぎを他所に我らが厚労省様の見解は以下の通りだ。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0093.html

報告ないんだって。流石忠実なワンコ集団プロフェッショナル集団が妄言適切なアドバイスをされてますからね。

さて、そんな大変な接種後の現象ADEなのだが、タイトルの通り、私にはどうもこの用語の説明が気持ち悪くて仕方ない

抗体依存性感染増強 (Antibody-dependent enhancement, ADE) とは、ウイルス粒子と不 適 切 な 抗 体とが結合すると宿主細胞への侵入が促進され、ウイルス粒子が複製される現象である[1][2]。不適切な抗ウイルス抗体は、食細胞のFcγ受容体(FcγR)または補体経路を経由して目標の免疫細胞のウイルス感染を促進する[3]。ウイルスと相互作用した後、抗体は特定の免疫細胞または補体タンパク質の一部で発現されるFcγRに、Fc領域で結合する。この相互作用は、免疫細胞によるウイルス抗体複合体の食作用を促進する。

Wikipedia-抗体依存性感染増強

何や不  適  切 って!!!!(# ゚Д゚)

不適切なんて用語を使うなら「適切」を定義しやがれ!!!
と私はこの僅か二行目の時点で胡散臭さを感じてしまうわけなのだ。

まぁどうせ「中和抗体」と言いたいのだろうが、だったらそう書けばいいのになんだこの言い回しは

で、だ。そこを百歩譲って先に進んだとして、重要なのは

>宿主細胞への侵入が促進され、ウイルス粒子が複製される現象

この部分なのだろう。
・我々を守ってくれるはずの抗体がウイルスに結合した
にも関わらず
・ウイルス感染が起こった
が本質らしい。
全身に細胞って70兆個あるわけだがどれだと突っ込みたいが、その答えが

>目標の免疫細胞のウイルス感染を促進する

ここなんだろう。更に先を読み進めると

通常は、食作用後はウイルスが分解されるが、ADEの場合は逆にウイルスの複製が引き起こされ、その後免疫細胞が死滅することがある。つまり、ウイルスは免疫細胞の食作用のプロセスを“誑かし”、宿主の抗体をトロイアの木馬”として使用する。

何で科学用語に「トロイアの木馬」なんて神話用語が出てくるんだ?ただカッコつけたいだけやろうがどうせ要するに

・ウイルスさんが抗体を引っ提げたまま
・別の免疫細胞にアクロバティックに感染する

ということが言いたいらしい。

うん。。で?

この説明に則るならただ単に免疫細胞が死んだだけだ。そっから何が起こるの?

抗体依存性感染増強(Antibody-Dependent Enhancement:ADE)とは、
・ウイルスなどから体を守るはずの抗体が
・免疫細胞などへのウイルスの感染を促進
その後、
・ウイルスに感染した免疫細胞が暴走し
症状を悪化させてしまう現象を指す。

ワクチン接種やウイルス感染で中和活性の無い抗体が誘導されると、抗体のFc領域がヒト細胞上のFc受容体に結合し、ウイルスを積極的に取り込んでしまうと考えられている。

日経バイオテク-抗体依存性感染増強(ADE)とは

今度は「免疫細胞の暴走」と来たもんだ。しかしその原因が「中和活性のない抗体」とある。漸く「中和」の文字が出てきた。これで「不適切」なんて曖昧用語は排除できる。

しかしこれまでの話で疑問点がある。
抗体「」ウイルスの侵入を「促進」するのだろうか?
それとも中和活性のない抗体のせいでウイルスが侵入してしまう、つまり「事故」なのだろうか?

中和抗体の定義は

中和抗体(ちゅうわこうたい、: neutralizing antibody, NAb)は、
病原体や感染性粒子 が
細胞に対して及ぼす
生物学的な影響 を 中和して、
・細胞を防御する 抗体である。
中和によって
・病原体や感染性粒子 は
感染性や病原性 を 失う

中和抗体とは、抗体の中で特に中和能力を持ったものを指す。中和抗体が結合したウイルスは、この定義に則れば活性を失ってしまう。抗体の中にはこの活性を持つものと持たないものとがあることになる。

ウイルスはとにかく感染したいはずだ。ということは中和活性を持たない抗体に味を占めてウイルスは目的を遂げようとするはずだ。だとするなら「抗体"が"」「感染"を"」「増強」とは何なのか?

大阪大学の荒瀬尚教授を中心とした微生物病研究所・蛋白質研究所・免疫学フロンティア研究センター・感染症総合教育研究拠点・医学系研究科等から成る研究グループは、COVID-19患者由来の抗体を解析することにより、新型コロナウイルスに感染すると感染を防御する中和抗体ばかりでなく、
感染性を高める感 染 増 強 抗 体が産生されていることを初めて発見しました。本研究成果は2021年5月24日(月)に米国科学雑誌Cell誌に掲載されました。

国立研究開発法人:日本医療研究開発機構
-新型コロナウイルスの感染を増強する抗体を発見―COVID-19の重症化に関与する可能性―

また意味不明だ。次から次に用語が出てくる。感染増強抗体ってなんだ。何の目的で生体がそんな抗体を作るんだ。抗体は生体を守りたいはずじゃないのか?

だが最近こんな文面を見つけた

大規模接種前から予想されたこととして、他に抗体依存性感染増強(ADE)があります。
コロナウイルスのスパイクタンパクは細胞表面の受容体ACE2に結合する。このとき、コロナウイルスに対する抗体があると、抗体と複合体を作ったウイルスが免疫系を刺激し炎症系を暴走させます (サイトカインストーム)。
あるいはADEのもうひとつの発症機序として、マクロファージを介したものがあります。抗コロナ抗体に包囲されたコロナウイルスはマクロファージに貪食される。普通のウイルスならこれで終わりのところ、コロナウイルスは貪食に耐性があり、免疫系を”トロイの木馬”として利用する。つまり、抗コロナ抗体があるせいで、コロナウイルスは通常では感染しないはずの免疫細胞にも感染できるようになります。
これがADEです。ADEが起こるとワクチン接種者のほうがコロナウイルスにかかりやすくなるし、感染時には症状が重症化します。

荒川央先生のレクチャー,AccessDate:2022/9/22

まず注目したいのはコチラ

 抗体と複合体を作った
ウイルス が
 免疫系 を 刺激し
  炎症系 を 暴走させます

一番しっくりくる説明だ。主体がウイルスだからだ。しかしこの記事には以下の表がある。

「コロナワクチンを接種された猫が死亡したという話はデマだ」とか「猫が実験動物に使われることはない」などという批判がありますが、これは正しくありません。
猫におけるコロナワクチンとADEの研究は、古くは1990年代から見られます。

おやおや?????中 和 抗 体でADEが起こっている????
どういうこと????

引用されているこの論文には何と以下の記述がある。

in vitroでのウイルス感染のADEは多くのウイルスで報告されている[4]
ADEのメカニズムは、
・ウイルス-抗体の複合体が
 ・Fc受容体 または 補体受容体
 を持つ細胞
  即ち:単球やマクロファージ
・…と、結合することである。
これらの複合体が結合またはオプソニン化されると、感染力が中和されるのではなく、感染が成立する。
ADE of viral infection in vitro has been described for a number of viruses(4). The mechanism of ADE involves binding of virus-antibody complexes to Fc or complement-receptor-bearing cells, i.e., monocytes and macrophages. Binding or opsonization of these complexes results in infection rather than neutralization of infectivity

J Virol. 1990 Mar;64(3):1407-9.

引用のnote記事は「スパイク蛋白が危ねぇ」の論調だが、そんなことより、この論文が中和抗体を計測しながら実験動物にADEが発生したことを報告していることだ。

あれれれれれ????「不適切な抗体」やら「中和活性を持たない抗体」やら「感染増強抗体」のせいなんじゃなかったかしら????結局抗体の種類は関係ない????


…と。簡単に調べて出てくる範囲ではこんな矛盾だらけの情報ばかり引っ掛かる状況だ。ハッキリいって気持ち悪い。

そしてそもそもの問題は「抗体だけに注目し」「その役割だけを見て」次から次に命名を生み出すことにある。だからこんな厄介な事態になるのだ。
病原体を中和した→中和抗体
病状が悪化した→感染増強抗体
などなど。

だが抗体とは、構造的にIgE/IgM/IgD/IgA/IgGの5つ(細かく言えば10)のクラスに分類できるはずだ。

やさしいLPS:免疫グロブリンとは~体の中での働きと免疫グロブリン製剤について~

中和抗体とはこの内のどれかなのか
それとも
この5つとは別に中和抗体という種類があるのか?

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染すると、体内ではウイルスに結合する様々な抗体がつくられます。
そして、
抗体の中でも
 ウイルスに結合して
 細胞に侵入するのを妨害する効果を有する抗体は
 「中和抗体」と呼ばれます。
ヒトの抗体にはIgM、 IgD、IgG、IgA、IgE の5種類があり、SARS-CoV-2の感染症では
感染初期にIgM抗体が、
その後にIgG抗体が作られることから、過去の感染の有無を検査するためのIgM / IgGに関する抗体検査(キット)が用いられてきました。

免疫記憶を担う抗体は主にIgG抗体であることから、従来はIgG抗体=中和抗体と認識されてきました
し か し、
広島大学・京都大学の共同研究グループは、新型コロナウイルスに感染し、回復した重症度の異なる患者(23歳から93歳)を対象に血液を採取し、血清中に含まれる抗体の分析を行ったところ、
感染から2週間以上が経過している全ての回復患者がIgG抗体を獲得している
に も 関 わ ら ず
 、
その約4割はウイルスを中和する活性が弱いか、
検出感度以下であることを究明し、

IgG抗体=中和抗体であるとは必ずしも言えない事が判明しました

Medical Export-新型コロナウイルスの中和抗体とは?

というクソみたいなことが起こるわけだ。

中   和   抗   体   っ   て   何   な   ん   だ

要するにこの内容だと、「これが中和抗体だと掲げられるものなどなく、後から抗体分析をして「中和をしているか否か」という結果論で判断していると見られても仕方ない。これは一体誰に聞けばいいんだ?

天下の国立感染症研究所様が「中和抗体の定義がお答えできない」そうだ。

まぁこれは一般窓口に聞いたことが場違いであった可能性もある。この記事を読まれている方の中に、適切な問い合わせ窓口が浮かぶ方がいたら是非ご連絡を頂きたい。

※実際「中和」を何を以て判断しているかは後ほど検討するが、とにかくこんな↓マニアックな構造解析に励んでいらっしゃるようだ。中和後の複合体の生理活性が問題だと考える私からすれば無駄極まりない研究だ。

Science . 2020 Aug 7;369(6504):650-655.  -Fig.6

彼らは「中和」をゴールにしているため、in vitro(試験管内)で中和だけ確認できたらOKだと判断するのだ。中和後の塊を処理する生体のことなど微塵も考えていない

話を戻すと、そもそもの問題は抗体を役割で語ることであり、中和だのオプソニンだのに拘るからいけないのだ。抗体が何をするかなど、分泌しているのが生体なのだから、生体の体調栄養状態、遺伝で決定されるはずだ。

一例としてこんな論文を紹介する。

胚中心選択と親和性成熟にはmTORC1キナーゼの動的制御を必要とする

抗体の成熟に伴い、胚中心(GC)B細胞は、明帯(LZ)での親和性駆動型選択と暗帯(DZ)での増殖および体細胞超変異の間で周期的に変化する。胚中心B細胞は、LZで抗原に依存したシグナルを受け取ると選択されるが、DZではそのようなシグナルがなくても増殖が起こる。我々は、T細胞によって引き起こされるポジティブセレクションが、mTORC1(mechanistic target of rapamycin complex 1)を活性化し、DZの増殖を支える同化プログラムを促進することを明らかにした。増殖前にmTORC1を阻害するとクローン増殖が阻止されたが、細胞がピークサイズに達した後に阻害してもほとんど効果がなかった。逆に、mTORC1を恒常的に活性化すると、DZは豊穣になるが、細胞の競合性が失われ親和性の成熟が損なわれた。したがって、mTORC1の活性化は、細胞周期の進行そのものよりも、DZ増殖の前にB細胞を活性化するために必要であり、親和性ベースの選択を効率的に行うためには、周期的再突入の間に動的に制御される必要があることが明らかになった。
During antibody affinity maturation, germinal center (GC) B cells cycle between affinity-driven selection in the light zone (LZ) and proliferation and somatic hypermutation in the dark zone (DZ). Although selection of GC B cells is triggered by antigen-dependent signals delivered in the LZ, DZ proliferation occurs in the absence of such signals. We show that positive selection triggered by T cell help activates the mechanistic target of rapamycin complex 1 (mTORC1), which promotes the anabolic program that supports DZ proliferation. Blocking mTORC1 prior to growth prevented clonal expansion, whereas blockade after cells reached peak size had little to no effect. Conversely, constitutively active mTORC1 led to DZ enrichment but loss of competitiveness and impaired affinity maturation. Thus, mTORC1 activation is required for fueling B cells prior to DZ proliferation rather than for allowing cell-cycle progression itself and must be regulated dynamically during cyclic re-entry to ensure efficient affinity-based selection.

Immunity. 2017 Jun 20;46(6):1045-1058.e6.

mTOR筋トレマニアに馴染み深い物質である。一般的には体内の栄養を中継し筋肉の合成を指令する(同時に筋肉の分解を抑制する)物質として知られ、立派な筋肉を見せびらかしたい筋トレマニアは如何にこのmTORを活性化するかに命を捧げている。この論文は、そのmTORが免疫形成にも関与していること報告したものだ。

東邦大学 理学部 生物分子科学科 大谷研究室-環境変化が免疫に与える影響を分子レベルで探るー図2:mTORC1はmTORを中心とした酵素複合体で環境変化を感知して細胞の様々な機能を制御する

皆大好き抗体の中和活性は「親和性成熟」とほぼ同義であるが、その親和性成熟はmTORが制御している。この論文は

①ヘルパーT細胞からの指令が出た時点で、B細胞中のmTORC1が活性化
②抗原に特化したB細胞の増殖をmTORC1がサポートし、親和性成熟に寄与する
③ただし、mTORC1を(薬理学的・遺伝的に)持続的に活性化させ続けると、無駄なB細胞を残すことになることから、動的なオン・オフ制御が行われていると考えられる

という内容であり、そのmTORの機能は栄養状態に左右されるのは上図の通りだ。従って生体の栄養・健康状態を考えることなしに免疫を語ることはナンセンスである。

研究者らは、抗体というタンパク質、つまり物質と向き合っているがために、その物質を作り出しているのが生体だという前提を忘れている。だから彼らの話には「個体の生活習慣」という重要な因子が欠落していて、机上の空論ばかりが飛び交うことになる。





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