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⑦ みふ子ばあさんと社長

オープンの時間は実は決まっていない。
慣れたもので朝の準備は早ければ15分以内には終わるのでオープンをゆっくりと待つことが多い。 

だが、6時を目処に朝酒屋の前に停めていたばあさんを乗せたトラックが再びやって来る。 

ばあさんの一人息子である社長の到着とともに淡水屋は始まる。
AMラジオをセットした運転手。
ばあさんに商品と値段を伝えるのも、
鰻の背を開いているのも社長だ。

社長のトラックが仕入れた鮮魚達を卸業者から運んでくる。到着と同時にすぐ私は荷物を降ろし、指示された配置通りに店に並べるのである。

川魚を扱う鮮魚店を主に淡水屋というのだが、
ばあさんの店は『鰻』を主に扱う。

注文や時期によってはドジョウや、鮒、もろこと言った川魚も販売に応じている。
海鮮魚も扱うので、寿司ネタの定番であるカツオ、カンパチ、甘エビ、サバ、イワシなどたくさんだ。

他にも、ウニからホタテ、赤貝と言ったものまで豊富な種類の魚が並ぶ。


この淡水屋を支える一人息子の社長。

誠実で真面目な性格と優しい眼光は、
プロからの信頼も厚く、
固定で仕入れをお願いされる件数も実に多い。

仕事の質も頷けるのだが、


「人柄が客を引き寄せる」

の典型ではないかと私は思う。

淡水屋オープンと同時に、
私は多忙を極めるこの主人の動きを読みながら優秀な猫の手になろうと勤むのである。

#みふ子ばあさん #小説 #エッセイ #高齢者 #魚

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