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11 みふ子ばあさんの友達

みふ子ばあさんには友達がいる。

外に出る時は必ず一緒に居るし、仕事の時もずっとだ。店の特等席に佇んでいる友達は、いつでもばあさんと行動を共にする。

ばあさんを支える仕事をしてくれる友達はいつも準備万端だ。

ばあさんは膝が悪く友達が居ないと上手く歩けない。膝から全体ばあさんを支えるとても頼もしい存在である。
年老いると足の歩幅も短くなり、
一歩が重く感じる。足の筋肉が細くなり、足の裏での着地が上手く出来なくなってくるのだ。


頭がT字の細身のシルエットに黒を基調としたメタリックピンクの花柄の服を纏っている。

ある日、ばあさんが

「友達どこ行った〜?」

と周りを探し回っていた。
当初は何を言っているか分からず、
私が困惑していたら息子である社長が

「ああ、友達ね、杖のことだよ。」

と笑いながら教えてくれた。
その時のばあさんの表情はこの冗談を笑って欲しそうな顔をしていた。

よくどこに置き忘れたか探し回るので、
私が見つけて渡してあげることもよくあるのだが、使用者に合わせて杖というものはとても軽く丈夫に作られていて関心した。

友達とは長い付き合いのため、T字になっている持ち手カバーが随分と使い込まれている。

今にもカバーが取れそうな風貌だが、
先端の足はまだまだ摩耗しても大丈夫そうだ。

絶大な信頼を置かれている友達は、身体だけでなく、心も支えてくれているのである。

今日もばあさんは友達と
市場へと買い物に出て行った。

#みふ子ばあさん #小説 #エッセイ #高齢者 #魚 #杖

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