『レッスン!』はダンスはもとより、目的を見失った子への指導法としても観れる良作
映画『レッスン!』を知っていますか?
社交ダンスが題材。実在の人がモデルになっている映画です。
まずこれ、めっちゃ良いです。(ある程度オトナに)オススメします。
独自評価は☆4です!
(☆4レベルはテーマ・題材に興味がない人にもオススメできるレベル)
ただし、舞台がアメリカの高校ということです。ほんの少し、犯罪のシーンとキスシーンがあります。言葉として「娼婦」が出てきます。また、銃が出てきますが、殺傷シーンや過激なものはありません。キスはいわゆるお姫様抱っこの延長のような王子様キスです。
潔癖な人には予めお伝えしておきますが、いまどきの子なら小学生でも大丈夫かなと思います。家族で観て大丈夫です。
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【概要】
原題「TAKE THE LEAD」
2006年製作のアメリカ映画
117分
世界チャンピオンであるダンサー・指導者、ピエール・デュレイン氏の実話を元にしたフィクション映画。
舞台はニューヨークの高校。落ちこぼれ生徒の扱いに困っている校長に直談判して、ダンスの指導を通して彼らを改心させる手伝いを申し出るデュレインのダンスレッスンが始まった。。
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この映画の好きなところ、オススメしたいところは次の3つです。
①ダンスがホンモノ!!すごい!
②名言がふんだん! 芯の強いメッセージ!
③カット割りの巧みさ! 編集のテクニックが上手い!
「ダンス映画」をいろいろ並べてみると、見所としてダンスパフォーマンスを最大の目玉としているだけのものも多々あります。
そういったものはお話がツマラナイとせっかくのパフォーマンスも映画そのものを観続けるモチベーションが維持できずに気持ちが離れてしまうんですね。
だけど、この映画はそうではない。
観飽きない。むしろグイグイ引き込まれるんですね。
理由があります。たしかな理由が。
センスと技術が良いということになるんでしょうね。一言で言えば。
上に挙げた3つともそれが結集したものということ。
①ダンスが本物
これはこのジャンルでは欠かせない要素。もちろん、この映画でもそこはしっかり押さえてあります。
主人公のピエール・デュレイン氏は実在するダンスの名人です。社交ダンスの聖地といわれる世界一有名な競技ダンスの大会で4連覇を成し遂げた人。劇中のダンスが達者でなければ説得力がなくなってしまう。
そこで、主役を務めたのがアントニオ・バンデラス。
好きなんですよね。カッコいい。立ち居振る舞い、姿勢、目力。
これまではラテン系の熱いイケイケって印象が強かったのですが、この映画ではずーっと押さえた静かな真面目な感じです。
でも、目力がすごい。強い信念の炎がめらめらと奥に宿る瞳。
そのアントニオ・バンデラスは幼少から演技とダンスを学んできた俳優さんです。舞台も経験していてブロードウェイのミュージカルで主演を務め、トニー賞にノミネートもされている本格派。
劇中で「社交ダンスなんてダサい」とやる気を出さなかった生徒達の心を一瞬で翻させた官能的なダンスにもめちゃくちゃ説得力。
そして、その官能的な表現で男子はもとより、女子達をも羨望の眼差しで惹きつけたセクシーなダンサー、モーガンを演じたのはカティア・バーシラス。
俳優として日本での知名度はそんなにないです。それもそのはず、彼女は本物のプロのダンサーです。カナダのラテンダンス選手権で優勝経験もあり、自身のツアーも行っているプロダンサーなのです。俳優としてはアメリカ版『Shall we Dance?』にも名前がありました。ダンサーの一人なのかな?これは未確認です。
生徒の中に、物語の進展に比してダンスシーンが多い子が一人。サーシャ役の人。彼女はダンス映画『ステップアップ』のヒロイン役のジェナ・ディーワン。踊れるはずですね、流石というところです。
②名言がたくさん
これが1番の注目なんです。
とても響くよいことをたくさん言ってるんですね。
私は英語は話せないので字幕をみての理解ですが。心に直接訴えてくる言葉の数々。センスが良いのですね。作り手の。
言葉のセンス。短いワードで、やり取りのテンポも心地よく、受け止めやすい名セリフが随所に出てきます。この映画でキャストと一緒にデュレインさんご本人も告知キャンペーンに加わっていたくらいですから、きっとその言葉の数々にはご本人の意向が反映されているのでしょうね。
実際の言葉は本編の中で感じ取ってもらいたいのですが、少し紹介します。
ワルツを学ぶ二人に教えるシーンでのこと。「リードは男がするもの」と言うと、勝気な性格の女子は「男がボスってこと?」と反発。そのときの先生の説明はこう。「男性がするのは提案のみ。受け入れるかどうかは女性が決める。対等なんだ。」と。
また、相手が自分を信用するはずがないと思っている二人には「信頼は獲得するものだ」と言って背中を押す。
いまひとつ自信を持ちきれない子には「信念は最強の秘密兵器」と揺るがない信頼をしてみせる。
学校の教師も含め、大人たちが子供を「落ちこぼれ」と決め付けて何もさせないように縛り付けていくことに、ダンス指導を通して真の教育とは何か、ということを訴える。言動を通してすごく強い信念を感じます。
教育メソッドとして、子供達を指導する立場にある人すべてに意識してほしいことがたくさん出てくるんですね。言うことが正しくても響く言い方をしなければ届かないのだから。大切なことです。マインド。
③カット割りが上手い!
これは何かと言うと。技術的なことはホントのところは知りません。プロのする仕事に口出しするつもりではなく。
昨今の映画やテレビドラマ見ていると、画面の切り替えやシーン変わりのときに音楽を挿入して雰囲気を作って、、、、という場面、あるよね?
安易にそれを使わない。
ダンス映画だから音楽が入ってくるのは違和感感じにくいだろうけど、それをあえて巧みなカット割で繋いでいるという感じが見受けられるんですね。
例えば、前のシーンの終わりの音が響いたまま、、、次のシーンの絵が重なってきて、その音が効果的に雰囲気を作っているとか。その逆に絵が残っているところに次のシーンの音が重なってくるとか。
また、気付きにくいところなんだけど観ていて「飽き」を感じるときとか、静けさに気まずくなる一瞬がいくつか重なると映画って緊張感が解けてツマラナイと感じてしまうもの。それって、カット割りのつなぎ目がヘタだと起こると思っているところがあります。
映画館で急に自分の呼吸音が気になってしまう一瞬ですね。
それがこの映画は一切ない。リズム感とテンポが良いことと編集に気を使っていることの現われだと思います。密な計算。
シーンが変わったときのカット。必ずカメラが動いているのです。或いは画面の中で何かが動いている。この躍動感。
実際、この映画カメラがすごく良い。カメラもダンスの達人っていう感じ。躍動感を捕らえていて、舞台を自らの目で見ているよりも臨場感を感じると思います。視点をカメラが誘導してくれているから。観るべきところをしっかりと見つめて逃すことなく見極められる。そういうカメラ。
そして、もう一つ。
セリフで言い表すことなく、目や顔の表情をしっかりと見せる。
そのときの人物の感情がきちんと画面に映し出される。目やかすかな口元の動き一つが、画面の端っこであっても表現されているのがリアルなんですね。
自分がその場に居たら、きっと彼女のこの表情からこんなこと感じ取っただろうな、、、という感覚。そういったところもすごく好きです。
一人ひとりのキャラクターが実在の人として感じられるかのような。
そうだからこそ、物語の中に入っていきやすいのです。
そして登場人物たちと同じように一喜一憂してしまう。ときおり挟む小話シーンも上手い。つい、クスッとする。
ストーリーで魅せる映画ではないので、展開はいわゆるテンプレ通りというか。まあ、よくある話の類です。水戸黄門的な。
でも、オモシロいです。観終わったときに爽やかな気持ちになります。
劇中でダンスの種類や歴史をデュレインが解説するシーンもなるほど、と分かりやすくて良いなと思いました。
とても参考になり、ダンスも見れてラストは思わず体が動いてしまう感じの楽しい良作でした。
よかったらぜひ。ダンスに興味がなくてもある程度楽しめる映画です。
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