風鈴
7月に入っても関東は雨がよく続いている。
もしかして今週は太陽をほぼ見ていないかもしれない。
数日前、部屋に風鈴を吊るした。
毎年7月には風鈴を箱から出し、8月の終わりか9月の始めには仕舞うのが例年の小さな儀式のようになっている。
風鈴は10代最後の夏に当時の友人と代官山で遊んだ時におそろいで買った。
小粋なカフェやおしゃれ服の店が並ぶ一角にポツンと佇む和雑貨の店で、そこだけが都会の中のオアシスのように感じて、ホッとしたのを覚えている。
一目見て2人で「可愛い!これ買おう、これ買おう」とはしゃぎながら購入した。
それから今まで、風鈴は数度修繕された。
短冊は強い陽射しで変色するので手持ちのポストカードをちょうど良い大きさに切って代用したし、糸も切れそうになるたびに新しいものを用意して繋ぎ直していた。
そして、今年ついに舌(風鈴の音色を鳴らす管のようになってる部分)や止め玉までバラバラになってしまった。
さすがにそろそろ新しいのを買おうか。
そう思ったけれど結局不要なボタンやブレスレットのパーツを持ち出して何とか修繕し、今年も同じものを使っている。
風鈴を置いてそうな近所の店を回ったけれど見当たらなかったのと、もしかしたらあの時の友情の証を今もちゃんと取っておきたかったからなのかもしれない。
眩さとかきらめきとか、恋なんてしていなくてもそんなものがあの頃の日々の中にたくさん詰まっていたことや、弾けるように楽しい時間を一緒に共有したことを。
たとえもう会わなくなってしまっても。
連絡が途絶えてしまったとしても。
雨空の窓から弱い風が吹き込む。
風鈴が小さくちりん、と鳴った。
外はまだ小雨が降り続いている。
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