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なぜ野党は内ゲバするのか【三世議員のゆる政治エッセイ Vol.4】

 「自民党って国会議員を休ませない政党だよな」と参議院議員だった兄が自民党に入ったとき、ボヤいていた。

 自民党はパーティー政党だ。5月に派閥のパーティー(当時)、夏に県連のパーティー、秋に自分のパーティー、これらにはそれぞれノルマがある。ほかにノルマは自民党員の獲得もあって、時期になると支援者をまわって、「パー券、10枚お願いします」、「党員になってください。できればご家族の分も」とお願いをしなければならない。
 引き受けてくれたとしても、そのあとボーっとしていると、またすぐ次のノルマがやってきてノコノコお願いに行くと、「おまえ、この前もパー券買ってくれって言ってたよな??」となりかねない。

 だから、日ごろから支援者のもとに足しげく通い、政治の話をし、陳情ごとを聞き、常にお願いできる関係を作っておくように、とノルマを通じてある種の組織的なマネジメントが効いている。

 ノルマがムチなら、自民党にはアメもある。
 自民党のために汗をかけば、所属議員はやがては大臣や、(地方議員なら)議長になれ、いわば「苦労に報いるポスト」がある。また与党だから政策決定権もある。そんなアメとムチのため、所属議員はノルマがつらくても、裏金バッシングがひどくても、言ってることがよくわからないおじいちゃん議員が幅を利かせていても、党のため、自分のため(そして国民のため)に我慢する。

 ところが野党にはアメがない。魅力的なポストも政策決定力もないので、党に対して我慢するインセンティブがない。議員は自分の意見が党の方針が異なった場合、普通は内部で話し合いをするのが先だが、話し合うのはめんどくさいし、「これは目立つネタだ!」と思ったら先にSNSやマスコミに発信する。
 そんなスタンドプレーヤーの行動が「党内に異論あり」と報道されて外からは内ゲバに見える。こうしたスタンドプレーは出世と引き換えの関係だが、そもそも野党では出世する旨味もあまりない。

 自民党がこの体たらくで、大幅な議席減が予想されている。野党としては大チャンスで、本気で政権交代を目指している野党が選挙で勝利できれば、与党になれる。所属議員はスタンドプレーをするより、党内評価を上げてポストについた方が得だろう。
 こんなときに内ゲバしているってことは「政権交代を目指す!」なんてしょせん口先だけなのだ。

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