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優秀とは何か

海外駐在員としては異例かもしれないが、駐在先のススメで社外研修を受けてきた。英語によるプロジェクトマネジメントのトレーニングコース、みっちり二日間。今回はその体験から感じたことを記録として残しておきたい。

ただ、ここでは研修の内容には触れない。この研修は講義ではなくグループワーク中心のいわゆる白熱した議論と共同作業が必要な研修であったことだけ述べておく。例えば、

1.ペアで話し合い、最も売りたい商品のアイデアをプレゼン

2.自分が売りたいと思った商品を選ぶ

3.全員で最終的に4つに絞り、6人グループができる

4.商品のビジョンについて話し合い決める

5.この後の講義を元に各グループでビジョンを修正

6.商品のユーザーストーリーを各自考え、グループでまとめる

7.発表・・・以下略。

このように自分から参加しないとお話にならないグループワークであったので、参加者にはそれぞれ個性が出る。リーダーシップを発揮する人、まずは自分の考えを我先にと発言しようとする人、必ず反論しようとする人、様子を見て黙っている人。間違った時に指摘する人。

この研修に参加したとき、あなたはどの人を「優秀」だと思うだろうか?

リーダーシップを発揮した人
オランダ人、とあるメーカーの購買チームのマネージャー 

自分の考えを発言しようとした人
スウェーデン人、4か国語を操るソフトウェア会社のマネージャー 

必ず反論しようとする人
イラン人、フィンランドへ移住してきたエンジニア 

様子を見て黙っている人
フィンランド人、大企業NOKIAのプロジェクトマネージャー 

たまに指摘する人
フィンランド人、スタートアップのダイレクターと日系企業駐在員の私

正直、私は英語力、議論する力が足りずにあまり前へ出られず目立てなかった。帰ってから私のこういった力はまだまだだと痛感し、凹んでしまった。だが、本当にそうなのだろうか。研修の目的はあくまでも新たなスキルを身につけることで、グループワークを上手に回すことではない。英語を巧みに操り皆を引っ張ることではない。実はこの研修で学んだことを実世界で一番活かせるのは駐在員という立場の私かもしれない。

「優秀さ」とは定性的かつ刹那的なもので、環境依存と主観が激しいものである。こうやって活字にすると改めて「優秀」とは単なる幻ではないかと思う。だが、人は優秀になって他人に認められたい承認欲求を持っている。ではどうすれば優秀になれるのか。「優秀」という言葉はあまりにふんわりしているので、「人が仕事で成果を上げる要因」を以下に分解してみる。

(個人のスキル+経験値)×外部要因

・個人のスキル…英語力、コミュニケーション能力、問題処理能力、専門スキルなど

・経験値…様々な環境での体験による視野の広さ、修羅場をくぐった経験からくる自信、失敗から学んだ思慮深さなど

・外部要因…業界、職場環境、人事制度、人間関係、プライベート

個人のスキルと経験値は時間とともに加算されていく。その人が持つベースの能力のようなものだ。個人のスキルと経験値は足し算にしたが、組み合わせによっては掛け算にもなると思われ、戦略的に自分のスキルを活かせる活躍の場を選んでいくのが効果的と思われる。

外部要因を掛け算にした理由は、ベース能力よりも周囲環境の影響の方がよほど大きいからだ。自分が持っているスキルと性格を考慮して仕事に打ち込める場所に身を置けば成果は上がるし、能力も飛躍的に伸びる。人間関係は特に重要だ。無能な上司の下ではモチベーションが下がり、成果がマイナスに触れることもあるだろう。

研修からの経験ではないのだが、駐在先のあるプロジェクトで実際に目にしたことである。一人の若手エンジニアを私のプロジェクトチームにアサインした。正直、頼りないやつだったが、他に選択肢もなく仕方なく採用した。当初彼は自分の役割をこなすことは出来ず、皆の足手まといになっていた。正直可哀そうだと思ったので(彼には申し訳ないが同情だった)、挨拶をはじめ、コーヒーブレークなどでとにかく雑談するようにした。そうすると段々とプロジェクトチームにもなじみ始め、仕事が一気に進むようになり皆の進捗を追い越した。コミュニケーション不足からわからないことを放置し、進められなかっただけだったようだ。このように能力があるのにも関わらず発揮されない例もあるので、人間関係などの外部要因をまずは疑って改善してみるのも手だ。

「優秀」とはただの言葉である。この言葉に惑わされて他人と比較する必要はない。重要なことは自分の内面のスキルマップと経験に冷静に向き合い、自分の能力をうまく発揮できる環境と人間関係を戦略的に作っていくことだと思う。

記事まとめ
1.優秀とは所詮ただの言葉で、個々人の能力を活かせる場とタイミングはそれぞれ違う

2.能力を活かせる場を冷静に選び、その一瞬の劣等感に惑わされず戦略的に自分を鍛える 

3.優秀ではないように見えても実は優秀かもしれないので、それぞれの要因の棚卸をしてみる

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