マガジンのカバー画像

小説評論

5
運営しているクリエイター

#魚腹記

太宰治 『魚腹記』から学ぶ死とは何か

『魚腹記』の解剖                          まずは、冒頭部分。『魚腹記』では、「本州の北端の山脈は~」と物語の舞台となる場所の説明から入る。スワの視点や気持ちから入らず、場所の説明から物語に入ることで読者が現実の世界と虚構の世界とを分かつ「敷居」を容易に跨ぐことができる。特に、この『魚腹記』は、「山奥の小屋で暮らす親子の物語」という、現実とは少し距離がある話なのでなおさら説

もっとみる

太宰治 『魚腹記』から小説技法を学ぶ

○「反復」からみるスワの「死」
四章でスワは鮒になり、滝壺のなかへくるくると吸い込まれていく。私は、スワはそのあと死んでしまったのではないかと考察する。
一章で、学生の死をスワが15歳の時に目撃したことが語られる。二章の「つまりそれまでのスワは~といぶかしがつたりしていたものであった。」と「それがこのごろになって、すこし思案ぶかくなったのである。」の間で学生の死を目撃し、彼女に自意識が芽生えたこと

もっとみる