不貞寝
慌てて目を覚ました。
最近の眠りは浅い様で深い。
夜中に何度か起きてしまうのに決めた時間には起きられない。
直ぐに起き上がり枕元にある筈のiPhoneを探す。今は一体何時なんだ。明らかに寝過ぎた感覚だけはあって恐らく昨日設定した10時45分のアラームはとうの昔に鳴り終わっていると容易に想像出来た。
枕元には無い。毛布にも掛け布団にも隠れていない。
ふとベットの下を見ると寂しそうに私のiPhoneが転がっていた。
「ごめんよ。」
私は裸のiPhoneを拾い上げる。今時は顔認証なんて物もあるが残念ながら私のiPhoneにはその機能はなかった。そしてまた残念な事にキンキンに冷えた私のiPhoneの充電は0%だった。
「…最悪。」
すぐに充電器に繋いで彼が回復するのをベットの上で胡座をかきながらボーッと待つ。
きっと12時は過ぎてしまっているだろうな。この部屋には時計が置いて無いからまだ確かめようがないけれど、私には分かる。この感覚はそういう事なのだ。
何となく部屋を見渡す。12畳程のこの部屋は正に私だった。散らかった服、書きかけの書類、読みかけの漫画。
こんな部屋だから、こんな私だから駄目なんだろう。
「クソだな。」
この部屋に対して言ったのか、自分自身に対して言ったのか、それともこの世の中に対して言ったのかは定かでは無いけれど不意に「クソだ」と思ってしまったのは紛れもない事実で、真実で確実な事だった。
充電器に繋がれたiPhoneに目をやると林檎のマークが表示されていた。充電はされたみたいだ。
ようやく時間が確認できる。
パスワードを打つ。
SoftBank 3%
12:18
12月9日 水曜日
私は顔を顰めた。
分かってはいたがこうして現実を見せつけられるとやはり心に来るものがある。
もうどうでも良くなってしまった。どうせ今日は何の予定も無いし、別に起きる必要は無いんだ。
私は再び布団の中へと潜り込んだ。
「…クソだな。」
再び私はそう言った。何に対してそう言ったのか、それはもう既に明白な事だった。
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