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1か月単位の変形労働時間制を採用しようと考えている特例事業場(1週44時間)がある。場所は東京。

通常、1日の所定労働時間が7時間(あるいは8時間)などとして1か月以内の変形期間を平均して特定の日、特定の週において、それぞれ1日8時間を、1週40時間(特例事業場なら44時間)を超えて勤務させても問題ないし、その限りで勤務している分には残業代さえ発生しない柔軟な働きかたが、1か月単位の変形労働時間制である。

今回依頼のあった特例事業場は所定労働時間が特に決まっておらず、「1日8.5時間、2月以外22日勤務(2月20日勤務)する」ことによって1か月単位の変形労働時間制の総労働時間の枠にうまくおさまるようになっている。

この場合、割増賃金の計算において、勉強不足を露呈するが、少し悩んでしまった。

(労基法施行規則19条)
法第37条第1項 の規定による通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額は、次の各号の金額に法第33条 若しくは法第36条第1項 の規定によつて延長した労働時間数若しくは休日の労働時間数又は午後十時から午前五時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの労働時間数を乗じた金額とする。
一  時間によつて定められた賃金については、その金額
二  日によつて定められた賃金については、その金額を一日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異る場合には、一週間における一日平均所定労働時間数)で除した金額
三  週によつて定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によつて所定労働時間数が異る場合には、四週間における一週平均所定労働時間数)で除した金額
四  月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額
五  月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
六  出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額
七  労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額
休日手当その他前項各号に含まれない賃金は、前項の計算においては、これを月によつて定められた賃金とみなす。

割増賃金の計算において、この事業場は、分母に「所定労働時間」と「1年間における1月平均所定労働時間数」のいずれも採用することができる。
(1)この場合、どちらを採用すべきか?

次に、「1年間における1月平均所定労働時間数」を採用する場合、1日の所定労働時間が決まっていないこの事業所では、1か月単位の変形労働時間制を採用することによってはじめて「1日8.5時間(毎日)が所定労働時間」となったわけである。

(365日−年間休日数)×1日の所定労働時間÷12か月=●●●.●時間(少数第2位以下切捨)

(2)この場合の「1日の所定労働時間」は、1か月単位の変形労働時間制により決まった「8.5時間」か、あるいは特例事業場とはいえ1日の法定労働時間は上限8時間に変わりはないので「8時間」とするのか、いずれなのか?

恥ずかしながら、勉強不足を承知で東京労働局に問い合わせした。
午後1時、電話に出た女性職員の回答は、スムーズで流れるようなものだった。
(1)
労基法施行規則第19条の組み立ては、原則所定労働時間となってますが、わずか2月だけとはいえ、他の月と所定労働時間が異なるということは、カッコ内の「1年間における1月平均所定労働時間数」を採用するのが筋でしょう。
(2)変形労働時間制で決まったこととはいえ、1日8.5時間が変更なく毎日の標準労働時間であるならば1日の所定労働時間は「8.5時間」である。仮に8時間で計算すれば、その答えは、「1年間における1月平均所定労働時間数」の実態からかけ離れた結果となる。
「1年間における1月平均所定労働時間数」を求める以上、実際の8.5時間を1日の所定労働時間とすべきである。

こちらもそうだが、労働局職員も労基法施行規則をパラパラめくる様子で回答してくれた。このような質問事例は、東京では当たり前のことなのだろう。
文字に起こしてしまえば、なんでもないことだが、電話の10分間、労働局職員はわずかに悩んだ風を出しながら、施行規則とその趣旨を淡々と、しかしながら無感情というわけではなく一つ一つ確認しつつ説明してくださった。
とても気持ちの良い週末金曜日、午後の回答である。

普段、この部分、私自身はそんなに拘らない。
今回はこだわる理由がある、それは助成金の申請がこのあと多く控えているから。

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