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パワハラは否定され損害賠償請求、解雇無効地位確認等請求が退けられた例(平成30年3月29日大阪地裁)

概要

被告会社の従業員であった原告が、被告会社に在籍中、被告会社の従業員で原告の上司である被告甲からパワハラの被害を受けたとして、被告らに対し、不法行為に基づき、慰謝料及び弁護士費用の請求、原告は、被告甲のパワハラによってうつ病を発症し、被告会社を休職しており、その後に復職できる状況となったが、被告会社が環境調整義務を怠ったため、復職をすることができず賃金相当額の損害が毎月発生しているとして、不法行為に基づき、賃金相当損害金の請求、原告は、復職の許可を受けたものの被告会社に復職できなかったことを理由に解雇されたが、当該解雇は無効であるとして、当同契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた。

結論

棄却

判旨

(1)上司が月に1度の月例会議における元従業員のプレゼンテーションに対して,問題点を指摘したり改善を求め,時として1時間以上の時間を掛けて注意や指導をすることがあったこと
(2)平成26年5月23日に元従業員に対し,「…今週の土日はそれを踏まえたうえで行動してください」と記載したメールを送信したこと
(3)平成26年6月18日の接待ゴルフについて,元従業員とAに経費精算を求め,2つに分けて処理するよう指示したこと
(4)平成27年1月15日に不慮の事故の防止のため,運転を控えるよう命じたこと
(5)平成28年5月17日の面談において,担当者が販売先に同行しての引継は考えていない等と発言したこと
が認められるが,
(1)については,会議の性質に照らせば,これをもって不当ということはできず,不法行為を構成するとまでは認め難く,
また,(2)(3)(4)について,これをもってパワハラとして不法行為を構成するとは認められない。
休職期間中であった従業員が復職するに際しては,使用者においても,復職のための環境整備等の適切な対応を取ることが求められるが,もっとも,その個別具体的な内容については,法令等で明確に定められているものではなく,使用者が事業場の実情等に応じて,個別に対応していくべきものといえるところ,元従業員について,一応の業務軽減が図られていること,元従業員は,直行直帰を主たる勤務形態とする営業担当従業員であり,業務の遂行は元従業員自身の判断で調整可能であったこと,B支店における営業担当従業員の業務が特に負担の重い業務であるとまではいえず,元従業員が休職中は,4名で行っていた業務を3名で対処できていたこと,取引先に対し,同行しての引継は予定されていなかったが,平成28年5月17日のやり取りからすれば,元従業員が同行しての引継を求めれば,上司も対応する余地があったと考えられ,このような措置が取られなかったのは,元従業員からの要望がなかったためであること等から,本件において,会社において,法的義務に違反したとまでは認められない。
元従業員は,休職期間満了後も会社に出勤せず,会社は,再三にわたって出勤を求め,欠勤を続けた場合は解雇とすることもあり得ることまで明示したものの,元従業員は出勤しなかったものであり,かかる行為は,被告の就業規則における解雇事由に該当し,そして,労務の提供は,労働契約における労働者の中核をなす債務であるところ,元従業員は自らの意思でそれを行わず,しかもその期間が半年以上の長期にわたっていること等の本件の事情を総合すれば,本件において会社がした解雇が解雇権を濫用したものとは認められないから,本件解雇は有効である。

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