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幼稚園教諭の同僚から受けたハラスメントによる体調不良が労災認定された例(令和3年4月23日和歌山地裁)

概要

学校法人が経営する幼稚園で教諭として勤務していた原告が、本件幼稚園の教諭らからいじめ、嫌がらせ、無視等を受けたため、大うつ病性障害及び心的外傷後ストレス障害を発症し、休職を余儀なくされたとして、処分行政庁である和歌山労働基準監督署長に対し、労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付の支給を請求したところ、本件処分庁がこれを支給しない旨の処分をしたことから、本件処分は違法であると主張して、被告・国に対し、その取消しを求めた。

結論

認容

判旨

元教諭は,平成24年4月に副主任になったものの,本件幼稚園において経験年数を上回るA教諭を差し置いての昇格であったことに加え,上司に当たる教頭と教務主任との間にも浅からぬ感情的な対立が存在しており,就任直後から,困難な人間関係の中に置かれており,また,元教諭が教頭に行ったA教諭に関する報告が原因で同教諭の元教諭に対する不信感が決定的なものとなり,これを背景に,A教諭は,本件幼稚園における定例行事であった研修会等への参加を拒絶し,結果として他の教諭らの協力も得られず,例年どおりの活動を行うことができなくなり,副主任として経験の浅い元教諭は更に対応に苦慮することとなり,元教諭は,ストレスが原因で胃潰瘍となり体調を崩すに至り,さらに,教務主任は,元教諭に対し,業務上の指導を行う際,既に信頼をなくしている旨の適切さを欠いた発言に及び,その後,元教諭は,深い対立関係にあったA教諭との共同担任を任されることとなるような経過であるから,本件各出来事を総合的に評価すると,発病直前に元教諭に生じていた心理的負荷の強度は「強」であったというべきであり,業務以外の要因による心理的負荷及び個体要因は認められないから,元教諭の精神障害の発病は,本件幼稚園の業務に内在する危険が現実化したものと評価することができ,相当因果関係が認められる。

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