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洋書レビュー The Help/Kathryn Stockett

The Help / Kathryn Stockett

仲良しで読書家の英語の先生に勧められて読み始めたThe Helpを読み終わりました。史実に基づいたフィクション(Hystrical Fiction)と言われる分類の本で、アメリカで黒人差別が公然と行われていた時代の、黒人家政婦と白人女性の友情を描いた本です。

読んでよかった、とても面白くグイグイ読まされました。字が小さい上に400ページを超えるボリュームなのに、続きが気になってどんどん読むことができました。黒人独特の英語(文法が崩れている感じ)が最初読みにくいと思うかもしれませんが、最初の十数ページ読めば慣れてきて、50ページもすれば違和感なく読み進めることができました。(洋書初心者さんにはちょっと厳しいかな?)


こちらの本、黒人の解放運動がじわじわ起こり始めた時代のお話なのですが、書いたのは白人女性…ということで、評判が分かれているようです。白人に都合の良いように、後味が悪くならないようにとの著者の意図を感じる読者もいらっしゃるようですね。確かに、最後の終わり方はそう見えなくもないですが、この時代設定で双方にとって分かりやすいハッピーエンドにすると、完全に作り物感が出てしまうと思うので、この落としどころはこの物語のとってベストだったんじゃないかなと私は思っています。とはいえ、最後の別れのシーンは涙をこらえることができませんでした…辛い(涙)


The Helpの後、同じくracismがテーマに含まれるYellowface / R. F. Kuangを読んでいるのですが、白人女性の著者が中国をテーマに書いた小説を出版する際に、出版前にSensitivity Readerを入れたほうがいいというアドバイスを受けるシーンが出てきます。Sensitivity Readerとは出版前に文学作品を読み、攻撃的な内容、固定観念、偏見を探し、著者または出版社に変更を提案する人のこと。古典作品を現代風に改訂する時などにこのSensitivity Readerは活用されているそうで、出版社にとっては、出版後読者からの批判にさらされるリスクを排除できる一方で、その文芸作品そのものを歪めてしまうという懸念もあると言われています。

どちらがいいのか自分の中で結論は出ていませんが、どんな人がどんな思いで書いたのか、どのような評判・批判があるのか、本をきっかけに調べることが、多面的に世界を見る上で大切なのかなと思います。本のレビューを、この本は面白いかな?と「読む前」にチェックする方が多いのかなと思いますが、「読んだ後」に人のレビューを見ると知識や物の見方が深まっていいなと思います。

こちらの本、邦訳版は残念ながら絶版になってしまっていますが、映画化がされています。映画も評判がいいようなので、この長いお話が2時間でどうまとめられているのか近いうちに観てみたいと思います。


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