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海外駐在中の女性は妊娠する権利がない?

1.先輩からのアドバイス:妊娠は迷惑!

 中国赴任の打診が来た時、中国駐在したことがあり、旦那さんのヨーロッパ駐在に同行し、現地で出産などを経験をした、今や2児の母となった先輩に色々人生相談をした。

 最後らへんに、私の年齢(当時30歳)も考えて、「子どもを産むなら早く妊娠することに越したことはないけど、もし駐在中に妊娠したらどうしよう」と、ちらっと私が言った一言に先輩が反応した:

「絶対やめてください。周りに迷惑がかかります」

 その時に思ったのが、あ、この先輩にとって、個人より、会社の方が大事なんだなって。
 それ以外に特に何も思わなかったが、最近になって、どんどんおかしいと思ってならない。

2.会社の海外勤務規定:規定がない!


 まず、赴任にあたり会社の海外勤務規程を読んだ。妊娠した場合は会社としていったいどう対処するのか、知りたかった。びっくりしたのは、そこに妊娠、出産、産休育休規定なんて、一言も書いていなかった。そこから、「出産」をキーワードにして検索してみた。いくつかの内規は引っかかった。クリックしてみたら、きちんと国が定めた法規に従った産休育休のルールが書いてあった。ただ、但し書きはそこにあった: 国内勤務社員のみ適用すると。
 はぁと思いながら、もう一つキーワードで引っかかった内規を見てみた。それは既に読んだ海外勤務規程だった。

 あれ?確かなかったはずと思いつつクリックしたら、そこにあったのは、海外勤務社員の配偶者が妊娠時の一時帰国の規定だった。
 衝撃を受けた。
 海外勤務社員が出産の場合の規定がなく、配偶者が妊娠した場合の規定があるのは、これは完全に、「海外駐在員が男性のみ」という前提に立って作った規定だと思った。

 規定がない=産休育休を取得できる権利がない=人権侵害されていると私は思っている。

3.会社の全海外駐在員の数の5分の1を占める女性駐在員が人権侵害されている


 21年の8月に中国赴任前、私は当時我が社の女性駐在員の数を数えてみた。
 会社全体では海外駐在員が150名程度いるなか、その中女性駐在員は約30人だった。5分の1は決して多くはないが、他の会社より女性登用が進んでいる方ではないかと私は自負をしていた。
 ただ、私も含めこの5分の1の女性駐在員が現に人権侵害されていること、会社に認識して欲しい。 
 「妊娠の可能性がある女性/妊娠している女性/小さい子どもを育ている女性は海外勤務に出さない、海外勤務中の女性に妊娠させない」のではなく、妊娠中でも育児中でも、女性社員はどこに行っても活躍できるように、サポート体制を整えることが必要だと思った。海外勤務でも、妊娠・出産・子育てができる支援の仕組みを整えるのが必要だと思った。

4.どうして女性駐在員の妊娠が、迷惑なんですか?


ここで一番最初に、先輩に言われたことをもう一度思い出した。「絶対やめてください。周りに迷惑がかかります」
どうして妊娠することが、迷惑なんですか?
聞きたくてしょうがない。

彼女が言ってることも分からなくもない。
駐在は普通の国内勤務より、会社がかけているコストが大きい。こんなにコストをあなたにかけてるのに、会社の投資と期待と信頼を裏切り、勝手に自己都合で妊娠して、駐在期間をぶった斬るなんて無責任すぎる。

投資は確かにしてくれている。ただ、私もここでプー太郎してるわけではない。私はそれなりに会社の期待に応えて、頑張って成果を出しているつもり。スナックとゴルフばかりのしょうもないおじさんたちよりずっと働いていると思う。それに、私じゃなくても、他の人を派遣しなければならないし、このタイミングじゃなくても、私は他のタイミングで派遣されるはず。
そして、本社で働いても、国内拠点で働いても、海外で働いても、私たちは同じ社員じゃないか。どうして海外だけ特別なの?

妊娠が迷惑、その考え自体が女性の活躍推進を阻害してると私は思った。
迷惑、じゃなくて、迷惑とならないように、規定やサポート体制を整えるのが大事だと思う。

人間の意見や考え方は基本、自分の経験と知識とそれに基づく想像で形成されるので、その先輩を責めるつもりはありません。その先輩は、トントン拍子で海外駐在と配偶者海外勤務同行休職を経て、30代半ばで妊娠も出産も順調にこなせたから、後輩の私にそのようなことを言えたと思う。もし逆に、30代前半を駐在に費やし、その後妊娠しようと思っても上手くできず、不妊治療をその後続け、40歳近くになっでも難しい状況に置かれていたら、多分私へのアドバイスは全く異なった内容になっていたはず。

「規定やサポート体制を整えるのが大事だ」と私も言いつつ、実現可能性が高い良いアイディアがなかなか思い浮かばない。これからの宿題とさせていただきたい。先進的に取り組んでいる企業や諸外国はどのように対応しているか。調べていきたい。


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