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4-5. 故郷に生まれる のではなく、故郷を「作る」 【ユクスキュル / 大槻香奈考】

よくよく考えてみれば「生まれ故郷」を持つのは人間だけだという、当たり前の事実に気づかされました。

クモは巣を作り、たえずそこで活動する。この巣はクモの家であると同時に故郷でもある。(中略)モグラも自分で家と故郷を築いている。地下にはクモの巣網のように整然としたトンネル・システムが広がっている。しかし、彼の支配領土は個々のトンネルだけではなく、トンネルで囲まれた土地全体なのである。

家と故郷が一致する場合、そうでない場合の違いはあれど、生物たちは自らの手で故郷を「作って」いる、ということ。

巣作りする鳥や巣穴を掘るアリなどをこれまで何度も見てきたはずなのに、全くその視点が無かった自分に驚きました。探究のためには当たり前を当たり前で終わらせず、自分なりに考えることが大切なのだなと、改めて感じ、肝に銘じた次第です。

個人的な話になりますが、私は早くに実家を出たため、いわゆる「郷愁の念」を上手く感じることができません。そこはたしかに生まれたときに居た地点ではありますが、それ以上の感情が湧かないのです。

しかし、実家を出た後に住んだ様々な街や家に対しては、懐かしさを感じたり今どんな風になっているのかなと思いを馳せたりすることもあります。それは自分で作った家であり故郷だったからなのかもしれないなと考えるようになりました。

地元愛が湧かないことに後ろめたさを持つこともありましたが(特に田舎は地元愛強めの方が多いので…)、生物の目で見れば取るに足らないことだと思えるようになり、心が軽くなりました。生物たちは常に捕食などの危険と隣り合わせであり、引っ越しや新たな巣作りが当たり前の世界で生きているのですから。

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