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愛知県美術館 2022年度第1期コレクション展

愛知県美術館では2022年7月3日(日)まで2022年度第1期コレクション展を開催しています。ミロ展も同時開催中です。


展示室4 20世紀西洋美術の名品 戦前のヨーロッパ美術
2020年に新収蔵されたモーリス・ドニ《花飾りの舟》(1921)がお披露目されています。ドニと同じナビ派のボナール作品、ナビ派へ影響を与えた後期印象派のゴーギャン作品が並んでいます。またミロの生きた20世紀ヨーロッパの美術も一望でき、ミロ展の参考にもなるのではないでしょうか。

モーリス・ドニ《花飾りの舟》(1921) 愛知県美術館


展示室4 20世紀西洋美術の名品 戦前のヨーロッパ美術 展示風景 愛知県美術館



展示室6 宮本三郎―隠された裸婦の謎

宮本三郎の油彩画《家族》(1957年)は、1976年度に愛知県文化会館美術館が収蔵し、現在の愛知県美術館に引き継がれてきた作品です。キャンヴァスが二枚重ねてあったことから、昨年、表のキャンヴァス《家族》を剥がしたところ、下のキャンヴァスは1937年に制作され、同年の二科展に出品された所在不明の《裸婦》であることが判明しました。

PRより

宮本三郎《家族》(1956)の画布裏から、《裸婦》が発見され新収蔵されたことから宮本三郎の特集が組まれ、愛知県美術館が収蔵する宮本作品や関係資料を展示しています。


宮本三郎《裸婦》(1937年) 愛知県美術館


展示室6 宮本三郎―隠された裸婦の謎 展示風景 愛知県美術館


展示室6 宮本三郎―隠された裸婦の謎 展示風景 愛知県美術館



展示室7 庄司達/新聞紙

 庄司達(1939-)は、長らく愛知県の美術界を牽引してきた美術家で、1998年には当館で久野真との二人展を開催しています。庄司の代表作として広く知られているのは、布を用いた立体作品やインスタレーションです。糸や棒を使って引っ張る、あるいはたるませたるといったシンプルな操作によって豊かな表情を見せる布作品は、1968年に初めて発表されて以降、様々なヴァージョンが作られ続けています。
 今回、この展示室でお見せするのは、そうしたよく知られる作品とは異なる系列の作品です。新聞紙を使ったこの二つの作品は、1970年に行われた第10回日本国際美術展「人間と物質」展に出品されたものです。一方は新聞紙の一部分だけ残して赤く塗られたもの。もう一方は、新聞紙を等倍の大きさでコピーして、本物の新聞紙を一部分だけ切り取って貼ったものです。庄司は「人間と物質のあいだ」(企画段階のタイトルには「のあいだ」がついていました)という展覧会のテーマに対して、人間と物質のあいだにあるものとは、すなわち「情報」ではないかと考えて、この作品を制作しました。そして、日々、最新のニュースが送り届けられる新聞というメディアに着目したのです。この展覧会を主催したのが、毎日新聞社だったということも、意識されていたのかもしれません。
 赤い方の作品は、塗り残された部分だけ記事を読むことができますが、それ以外の部分ははっきりとは読めません。一方、等倍コピーの白い方の作品はすべての記事が問題なく読めます。つまり情報が引き継がれさえすれば、新聞紙という物質が別の紙に入れ替わってしまっても大丈夫ですが、物理的に塗料で覆われてしまうと、そこから情報を引き出すことが難しくなる、といった物質と情報の関係をめぐる思考を誘います。
 庄司はその後も、自身が「グラフィカルな作品」と呼ぶ、平面作品のシリーズを継続しています。そうした試みがなされた最初のものという意味でも、この二つの作品は重要な意味を持っているといえるでしょう。

報道向け配付資料


展示室7 庄司達/新聞紙 展示風景 愛知県美術館


展示室7 庄司達/新聞紙 展示風景 愛知県美術館


展示室7 庄司達/新聞紙 展示風景 愛知県美術館


展示室7 庄司達/新聞紙 展示風景 愛知県美術館


《新聞紙30枚に四角の孔を残して赤く塗った新聞紙》(1970年)
、《コピーした新聞紙の上の一部に本当の新聞紙を貼った52枚の新聞紙》(1970年)の展示に加え、「人間と物質」展の研究成果も紹介されており、作品配置図とともに庄司作品が設置された部屋や展示風景が資料で展示されています。また「人間と物質」展は場所に規定される展示だったにも関わらず巡回展をしており愛知県でも展示をしました。その様子も資料を通じて推察されています。
それら資料や庄司作品、そして庄司作品に使用された新聞紙から読み取れる生々しい状況をから、70年代という時代、そして当時の作家にとって切実であった問題と表現方法を知ることもできますね。

廊下には彫刻シンポジウムで滞在制作している模様や、時間を作品テーマの組み入れた映像作品が流されています。


庄司達 展示風景 愛知県美術館


庄司達は名古屋市美術館において大規模な回顧展を開催しています。そちらも合わせてごらんください。

布の庭にあそぶ 庄司達
2022.4.29 - 6.26
名古屋市美術館
https://art-museum.city.nagoya.jp/shoji




関連イベント

■コレクション・トーク①「庄司達と“人間と物質”展愛知会場をめぐって」[講師]石崎尚(当館学芸員)
[日時]2022年4月29日(金・祝)13:30-15:00
[会場]アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)
[定員]先着90名
展示室7で開催中の「庄司達/新聞紙」に関連して、1970年前後の庄司達の作品を振り返るとともに、「人間と物質」展愛知会場をめぐる事柄について考察します。
*終了しています


コレクション・トーク②「絵画を消すとき、隠すとき」
[講師]桒名(くわな)彩香(当館学芸員)
[日時]2022年6月12日(日)11:00-11:40
[会場]アートスペースE・F(愛知芸術文化センター12階)
[定員]先着30名
展示室6で開催中の「宮本三郎ー隠された裸婦の謎」に関連して、別の絵の下に隠れていた絵画が調査によって発見された類似事例を挙げて、《裸婦》のカンヴァスになぜ《家族》のカンヴァスが重ねられたのかを考察します。


講演会「和菓子の歴史とデザイン(仮)」
[講師]中山圭子氏(株式会社虎屋 虎屋文庫 主席研究員)
[日時]2022年6月19日(日)13:30-15:00
[会場]アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)
[定員]先着90名
展示室8で開催中の「木村定三 利休流無作法茶会」にちなみ、茶の湯の魅力を知る機会として、和菓子の歴史や意匠について紹介します。




会期:2022年4月1日(金)- 7月3日(日)
※4月28日(金)まではコレクション展のみ、4月29日(金・祝)からは企画展「ミロ展──日本を夢みて」との併催となります。ミロ展会期中はそのチケットでコレクション展もご覧になれます。

会場:愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)

開館時間:10:00~18:00
金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)

休館日:毎週月曜日

観覧料:一般 500(400)円、高校・大学生 300(240)円、中学生以下無料※( )内は20名以上の団体料金

主催等:愛知県美術館

WEB
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/000357.html

同時開催 ミロ展──日本を夢みて
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/000354.html

ミロ展レポート(レビューとレポート)
https://note.com/misonikomi_oden/n/n4ccb5b4c649b




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レビューとレポート