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EBUNE 大阪・西成漂着 撮影訪問記録ーー3U×屋台村ーー

大阪は東京に都市機能が移るまで日本の中心都市であり、市の民が集うターミナルだ。商人は魂宿るモノを一度無縁の品に変え、新たな縁を生み出す存在である。そして贈り合う「お土産」にこそ、文化が保存されている。西成周辺の表現者と、EBUNEがお世話になった店舗/コミュニティの方々が露店を出す「アジール屋台村」を開催!かつてこのあたりにあった屋台文化や「劇団維新派」名物の屋台村をオマージュ。様々な文化、新たなご縁を楽しもう!

フライヤーより

一般公開:2022年8月27日(土)~10月31日(日)
土日 open / 14:00~19:00


※『EBUNE大阪・西成 漂着』全体に関してのレポートをまずお読みの上、以下ご覧下さい。



『EBUNE  大阪・西成漂着』を構成する三つのスペースのうち、『3Uアジール』は『EARTH』から南海電鉄の新今宮駅方面に歩いて10分弱の場所にある。もともとは日雇いの労働者や生活保護の受給者が主に利用していた宿泊施設「マンション三友」だったが、現在は内装だけ解体撤去されたレンタルスペース『3Uアジール』に変わっており、『EBUNE 大阪・西成漂着』は会期中の土日に一階部分で『3U×屋台村』を開催している。『3U×屋台村』は、プレスリリースに書かれる通り、これまで『EBUNE』の「航海」「漂流」で縁が生じたアーティストやショップ、コミュニティに加え、西成周辺の表現者がそれぞれにフリマや古本屋、展示販売、特設ステージ設営など思い思いの「屋台」を出店。9月16~25日のあいだは上階で舞台演劇やパフォーマンス、大道芸などのフェスティバル『路地裏の舞台にようこそ』も同時開催しており、連携企画として相互に宣伝などで協力しあっていた。
筆者が取材へ訪れたのが平日だったため屋台村オープン時の雰囲気は取材できなかったが、会場全体の様子を以下に記録として写真とキャプションで紹介する。残りの会期で訪問を検討している読者の参考になれば幸いだ。


3Uアジール

外観

開催中だった『路地裏の舞台にようこそ』の看板が目立つ。


3Uアジール前の看板

『EBUNE』のフライヤーをはじめとして、開催している企画のフライヤーが貼られている。


屋台村 入り口

左から『 淡路島アートセンター(AAC)』、『THE BLACK BOX面』、『FIGYA』の並び。



THE BLACK BOX×上月陽平

『THE BLACK BOX』と上月陽平によるお面屋。『THE BLACK BOX』は上月の参加するノイズバンドで、そのライブに使用しているお面などを展示販売している。



淡路島アートセンター(AAC)

『EBUNE』がかつて漂着した淡路島で活動するNPO団体が西成に出張。淡路瓦を使った楽器や箸置き、津井トンネルに描かれた壁画の手拭い、伝説上のたぬき(芝右衛門狸伝説)をモチーフにしたマグカップなど様々なグッズ販売をしていた。



社会連帯ワーカーズひょんの実・珈琲倶楽部 ひょんの実 コーヒー

『社会連帯ワーカーズひょんの実』は、孤立しがちな釜ヶ崎・あいりん地区の高齢労働者に「居場所」「出番と役割」を作り出す試みを続けるグループ。主に珈琲焙煎を通して活動している。『3Uアジール』にも手製の「コーヒー屋台」で出張。



ワールドおさがりセンター西成(酒井貴史)

武蔵野美術大学構内や中之条ビエンナーレでの開催が知られる、元々は美大におけるマテリアルロス(卒制などで発生する廃棄物問題)とそのサルベージから始まった、「不用品(=おさがり)無償譲渡イベント」が西成へ。筆者も武蔵美で開催された際に利用したことがある。今回はセンターの象徴でもある、誰にも持ち帰られなかったものを物捨山に運ぶ『オサガリ様』は設置されていなかった。



屋台村 会場風景

左から『妖怪美術館』『山本宗』『蔭井暢春』『本宮氷』による屋台&展示。



山本宗

山本宗による妖怪画作品。『妖怪美術館』と『蔭井暢春』のあいだに隠れるような位置。紐とクリップで吊り下げる形式で展示していた。



蔭井暢春

能面作家、蔭井暢春によるインスタレーション。自作の能面『橋姫』を怨ボックスの裂け目から鑑賞できる仕掛け。



本宮氷

樂描の会代表、円空学会会員の本宮氷による平面作品。『屋台村』に複数枚展示した作品のうちの一つ。ダイダラボッチをイメージした絵画。


屋台村 妖怪美術館

『EBUNE』のクルーでもある画家、柳生忠平が小豆島で館長を務める妖怪専門の美術館。会話の中から相手の妖怪性を発見して似顔絵にする『妖怪風似顔絵』のブースを出していた。15分3000円。



FIGYA

此花区、梅香エリアにあるアーティスト・ラン・スペース。此花は「見っけ!このはな」「此花メヂア」などを契機にアーティストが多く住んでいる街であり、FIGYAは2013年にオーナーのmizutamaが住居兼スペースとしてオープン。2017年10月に元質屋の蔵物件に移転しリニューアルした。mizutamaが2000年代に東南アジアでアートコレクティブの在り方に触れた経験を活かし、不定期に展覧会やライブを企画。
『EBUNE大阪・西成漂流』では、mizutamaとチャッピ、藤崎荘志、三田村裕介、Yüiho Umeokaが機材(貸出)提供をする他、『EARTH×EBUNE』の外観屋上や屋台村の屋台造形を担い、Yüiho Umeokaはyoutube配信、三田村裕介は『EARTH』に作品を展示するなど、FIGYAとそこに関わるアーティストとの協働は、今回のEBUNE漂着にとって非常に大きな、欠かせないものだという。



成田屋(成田久司)

西成の名物おでん屋『成田屋』の店主、成田久司の造形作品をEBUNEクルーが複製。住吉大社の「初辰まいり」のように、店主の造形した奇妙な猫を集めると大きな猫を購入できる。成田は戦後期の著名な前衛美術集団『PLAY』三喜鉄雄や、『日本維新派』デカルコ・マリィの友人でもあり、『成田屋』前で彼らが路上パフォーマンスに造形制作や撮影者としても長年関わる。その縁から、店内には成田がコレクションした彼らの作品や骨董がひしめいている。



屋台村 会場風景

奥側。入り口側から特設ステージ方向。


奥側。特設ステージから入り口方向。



原泉アートプロジェクト、セルフ祭り

静岡県掛川市の原泉地区でアーティスト・イン・レジデンスを中心に活動する『原泉アートプロジェクト』と、通天閣そばの新世界市場で10年前から開催されている「21世紀の奇祭」、ジャンル分け不可のパフォーマンスイベント『セルフ祭り』が一階置に特設ステージを形成。
※『原泉アートプロジェクト』は10月13日(木)〜11月27日(日)の木、金、土、日に『原泉アートデイズ』を開催中。



占あや(黒田綾)

『ひょんの実コーヒー』『紙芝居劇むすび』などに関わる表現者の黒田綾が、占う相手を捕獲し、タロットを使ったり使わなかったり、いいかげんな占いをする屋台。守秘義務なしの完全公開占いであり、この占いの模様を盗聴・盗撮し、爆音で上映しながらパフォーマンスをするという公演を『路地裏の舞台にようこそ』で、デカルコ・マリィなど日本維新派の旧メンバーと周辺の表現者が行った。



屋台村 会場風景

『屋台村』会場風景
左手奥に『別府チーム出張屋台 EBUNEプロジェクト 大阪西成』。
右すぐ横に『なタ書』の古書販売スペース、奥の壁に本宮氷の絵画作品。



別府チーム出張屋台 EBUNEプロジェクト 大阪西成

近年、芸術祭をきっかけにするアーティストの移住やコミュニティ形成が盛んな別府から、『作家がみた別府』、『(ゆ)』を中心にアーティストがフリマ形式で作品を展示販売。詳細はリンクから。



なタ書

香川県高松市にある完全予約制の古書店『なタ書』の屋台。大阪にはあえて手ぶらで訪れ、各地のイベントをまわって買い取った本を転売する古書市を開いていた。段ボールに手書きされた店舗紹介がユニーク。ブースやポップ、ショップカードなどの制作は『なタ書』西成支部長としてEBUNEを手伝う山口里奈。 



アラヤシキ(寺川大地、森本洋史)

『EBUNE大阪・西成漂着』と同時期に開催されていた、西成各所を使った芸術祭『路地裏の舞台にようこそ』(9月16~25日)の主催であるアラヤシキ(寺川大地、森本洋史)と近隣住民が制作。『カラオケ居酒屋 長盛』、『COFFEE&ELECTRIC コスモス COSMOS』、『BAR 地雷原』、『BAR 野良犬』他の看板が確認できる。『EBUNE』は、このブースの雰囲気を拡張する形で『屋台村』を作ったという。



『屋台村』アラヤシキスペースで案内してくれたKOURYOUと。『EARTH』お土産やに展示する成田久司の作品と一緒にポーズ。


撮影:東間嶺 / RAY THOMA
『FIGYA』画像提供:KOURYOU



EBUNE 大阪・西成漂着 撮影訪問記録
EARTH×EBUNE

https://note.com/misonikomi_oden/n/nbdd85ba1d6fe
3U×屋台村
https://note.com/misonikomi_oden/n/n4a4953dde21e
EBUNEアーカイブ×BAKURO
https://note.com/misonikomi_oden/n/n9e1f31aaff32




概要

EBUNE 大阪 西成漂着
8月27日〜10月31日
会場:
■EARTH> 14時~19時
大阪市西成区太子1丁目3-26
■3Uアジール> 土日開催14時~19時
大阪市西成区萩之茶屋1丁目4-20
■どやねんホテルズBAKURO> 14時~17時30分
大阪市西成区萩之茶屋2丁目8-12

乗船料:1,500円/リピーター割引あり
お問合せebune.drifters@gmail.com

EBUNE WEB
https://ebune.net/
EBUNE SNS
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https://www.facebook.com/EBUNE.koukai/

KOURYOU
https://twitter.com/pyon27_ary

参考資料
https://note.com/ebune/
https://note.com/misonikomi_oden/m/m669e765914a3




取材・執筆・撮影:東間 嶺 
美術家、非正規労働者、施設管理者。
1982年東京生まれ。多摩美術大学大学院在学中に小説を書き始めたが、2011年の震災を機に、イメージと言葉の融合的表現を思考/志向しはじめ、以降シャシン(Photo)とヒヒョー(Critic)とショーセツ(Novel)のmelting pot的な表現を探求/制作している。2012年4月、WEB批評空間『エン-ソフ/En-Soph』を立ち上げ、以後、編集管理人。2021年3月、町田の外れにアーティスト・ラン・スペース『ナミイタ-Nami Ita』をオープンし、ディレクター/管理人。2021年9月、「引込線│Hikikomisen Platform」立ち上げメンバー。




追記
【特報】遠方から乗船する皆さまへ
EBUNEアーカイブ展の会場「どやねんホテルズ バクロ」系列3店舗が、EBUNEと一緒に西成漂着してくださる方に、お部屋代30%引き提供してくれます! 詳細はWEBにて。
https://www.facebook.com/EBUNE.koukai/posts/pfbid02W8qYgJuS1Rrb91uSXQKx34VUVSoQZFn2BXYuuA5578kCtCpEB8ZCLs5pt618yfHpl



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