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#056 妊娠初期その2、廃人のような生活

妊娠して色々検索をしてみると、9週の壁やら12週の壁やら何度か壁を乗り越えなければならないことがわかった。どうもその数週を超えると流産率もどんどん下がってくるということらしい。ただでさえつわりで1日が長いというのに、流産の不安のせいで1週間経つのが本当に遅かった。

9週目

つわりはしんどいが、自分が妊婦であるという実感がなく、自認としては「ただただ具合が悪く衰弱している人」でしかない。毎日クタクタになるまで働いてくる夫をみると1日中ベッドで虚無になっている無職の私という状況が辛くなってくる。体調的には働くなんて到底無理と思うが、精神的には働いていた方がまだ「生きていてごめんなさい」状態にはならなくて済む気もする。

死人になっている私に、休日の夫が出かけようという。そりゃ夫からしたらつまらないだろう。何度か断っているが、たまにはと頑張るもやはり頑張った分、後から気持ち悪くなる。けれど、行きつけの日本食レストランではとうとうお寿司を少し食べた。水銀が気になるマグロは避けて、サーモンをすこし。めちゃくちゃ美味しい。酢飯助かる。帰りに日本食材店でちらし寿司の素などを買う。酢飯助かる。

食べて寝ているだけなので、太ってきた気がする。二重顎になってきて落ち込む。流石にダイエットをしようとは思わなかったが、太っていくことにものすごく抵抗がある。仕方がないことだとはわかっているが。

夜中にお腹が空くようになる。今までは夜中にお腹が空いても我慢ができていたが、もう耐えがたい空腹ってくらいにお腹が空く。体重管理もまだそこまで気にする段階ではないらしいが、スープなどで誤魔化す日々。

つわりがあるとしんどいが、和らぐと和らぐで胎児がちゃんと生きてるのか不安になる。せめて初期は隔週で診てほしいと心底思う。8週の次のエコー検査は12週後半。長い。

10週目

たまに訪れる下腹部の鈍痛。出血がないので子宮が大きくなっていっているのかなと思う。それにしても頻尿がつらい。寝ていても2時間毎に目が覚める。(そのうち治るかなと思っていたが、これを書いている22週目でも全然継続中。トイレットペーパーの減りが早いのなんの。)

母性は変わらず目覚めていないが、他所さまのエコー写真で胎児の形がはっきり分かるものをみると「あら、かわいいわね」とおばあちゃんのような感想が出る。そうか、私はまだ自分の腹の中に黒い丸が写ってるのしか見てないから母性への目覚めが遅いのかもなと思うなどする。

一般的に10週目から徐々につわりが治ってくるらしい。が、全然継続中。ゲップの回数は増え、なんなら頭痛も出てくる始末。もう皿を洗うことすらしんどい。生ゴミにでもなったかのような生活。つわりに終わりなんてくるのだろうか。ていうか赤ちゃん産むのこんな大変じゃなくてよくない?もっと気軽にポルンと出てきてほしい。

顔が丸々としてくる。鏡を見るたびに落ち込む。母から「見た目を気にしてる場合じゃないよ、お母さんになるんだから」と言われる。ほんまそれなんですよ。太るのが嫌だとか落ち込んでるうちは素人ですわ。

11週目

私につわりの症状が出始めてから、夫もずっとゲップが止まらないでいる。男の人にもつわりはあるそうだが、日本では父親になるプレッシャーなどによる精神的なものと説明される事が多いが、こちらでは妻から出てくるホルモンの影響を受けてつわりになるという説明がされているらしい。お国違えば見解も違うのね。

飲む度にえずいていた妊婦サプリ(葉酸とか鉄が入ってる)をとうとう吐く。もうトラウマになってしまい、この日からサプリは中断。ごめんな中の人。

12週目

腰痛が出始めたので、夫と夫ママに骨盤ベルトを買ってきてもらう。私は相変わらず出かけられる体調ではなかった。。心はまだまだ母親ではないが身体はどんどん母親になっていくようだ。

相変わらず気持ち悪く、唯一あった食欲すらなくなってきた。なのにお腹がすでに出てきた。腹筋が弱いとお腹が出やすいらしい。身に覚えがありすぎる。でも見た目はまだまだ「太り始めてる人」という感じで、やっぱり落ち込んでしまう。なぜこんなに見た目を気にしてしまうのか。

翌週にはいよいよ検診だが、正直、先週くらいまでは「ダメだったらそれはそれで仕方ないよな」と思えていたが、この辺りまでくると「生きていてくれ…!」と思うようになった。しかしこれは母性というより「これだけしんどいんだから今更なかったことにしないでくれよ」的な気持ちだったりもする。それくらいつわりってシンドイ。

12週目

定期検診前のNIPT検査で中の人の姿を確認できた。エコーに映ったウニョウニョ動く生き物はまさに胎児という感じで、母性が死んでいる私ですら「わぁ…!」と感動してしまった。夫はエイリアンみたいでちょっと怖いと言っていたけど、私には可愛く映ったのでヨシ。それに、胎児のとっている姿勢が私が寝る時の姿勢と全く同じだったため、夫が「君の子だね」と笑っていた。もう既に遺伝子出ちゃってるのか。でも動きが活発だったのでそこは夫に似ていると思う。

NIPT検査は日本だと希望者のみ?みたいだが、こちらでは普通にやる事になっているらしい。もしかしたら年齢によるのかもしれないけれど(ドイツは35歳以上だと受けるらしいのでベルギーもそうなのかも)、保険適用なので?日本のように高くもない。請求書を正しく読めていないので、正確な情報ではないかもしれないが、多分かかっていても1万円前後だと思う。

エコー自体では異常もなく、帰りに血液検査もして終了。この血液検査で性別も分かるらしい。

13週目

定期検診。先週の血液検査の結果はまだ出ていないが、とにかく順調とのことだった。実は、この病院にかかった当初から、途中で日本語の通じる病院に変えるべきかとずっと考えていた。やはり細かい事を伝えるには日本語の方が良かろうと思ったからだ。しかし、現地で出産した日本人ご夫妻に聞いたところ、「日本語話せるってだけで費用が高くなるからねぇ。駐在さんとかは会社が費用出してくれるけど、そうじゃないなら…」というご意見だった。費用面というのは無職の私にとって結構大きい。例え日本で産むより格段に安くつくと言ってもだ。それに私には医者の身内が3人もいる。気になる事があればすぐに聞ける。そして何より、担当してくれる先生も英語が母国語ではないので「とにかく重要な部分に絞って話してくれる」=「とにかく順調だよ!」でまとめてくれるので余計な不安や心配を煽られることがない。もちろん、夫は毎回ついてきてくれるので、本当に細かく説明すべき事はフランス語で夫に話してくれる環境だ。だが、夫も私に医療的説明を英語で出来るわけもなく、もちろん私も理解できないので、結果的に知れる情報は「とにかく順調!」だけなのだ。これが不安になる人もいるだろうが、私にはまぁ「ほなええか〜」程度に受け取れるので、なんだかんだ良いのかも知れない。(もちろん気になる症状、聞きたいことがある時は、翻訳機などを使って事前に伝えることを準備していきます。何とかなるものです。)

14週目

風邪をひいている。食欲もなく、ホームシックに拍車がかかる。妊婦はメンタルも不調になるから厄介だ。咳が止まらないのでホームドクターに診てもらう。PCRは陰性だったが、とにかく咳が腹筋に堪えるので中の人の状態も気がかり。

NIPTの血液検査の結果が夫へ電話で入る。こっちでは検査結果はだいたい電話でくるので非常に楽ちんである。染色体の異常等は見られないとのことと、性別が発覚。ずっと女の子のつもりでいたが、男の子だったらしい。あまり性別で一喜一憂すべきではないが、「おもてたんと違う」のは本当なので驚く。女の子の名前は既に決まっていたが、男の子の名前は何も考えてなかった。チソチソの扱いもどうしたらいいのか。また検索することが増えた。

この週は初めて「気力の回復」を感じる日があった。1日だけだったが、なにかをやりたいと思ったのはまさに2ヶ月ぶりくらい。一方、体の変化といえば、喉が乾きやすくなった。血液量が増えたりする事が原因らしい。ついでに咳やくしゃみの衝撃で尿漏れもするようになった。シンプルに悲しい。つわりによる寝たきり生活で筋肉という筋肉が全て失われた気がする。

15週目

妊娠初期といわれる最終週。相変わらず米の炊ける匂いが無理で、胃が気持ち悪い日々だが、気持ち悪さの質が変わってきた気がする。なんとなく、食べる量を調整すれば、気持ち悪さも落ち着くような。経産婦さんに聞くとだいたい16週目くらいにつわりが落ち着くらしい。実に3ヶ月は吐き気との闘いということになる。世の中はもっと初期の妊婦さんに優しくして欲しい。

胎動はまだ感じないが、仰向けになるとお腹の形が歪になるようになった。「なんか居る」感じがする。人が居るんですけど。

この週に、普段お世話になっている友人夫妻に我々の子のゴッドマザー、ゴッドファーザーになって下さいとお願いした。こっちでは必ず決める大切なものらしい。日本的に言えば、未成年後見人を指名するのだ。夫妻は快諾してくれた。これで我々が万が一しんでしまっても、大丈夫。死なないけど。

妊娠中期へ続く。

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