#050 ハイパー牛歩タイム
また放置癖が出てきた。およそ一か月前、結婚手続きを進めていて、めちゃくちゃ苦労したけど日本でできることはもうやったよ!と報告した。現状どの程度進んだか発表しよう。
変化なし、だ。
何も動いていないわけではなかった。散々動き回って現在地が変わらないのである。そういう術式なのかと思う(呪術廻戦をやっと読み終えました。)。
まず前回書いた「今コミューンが書類を出してくれるかもしれない」と言った件は、「移民局に正式に却下されて終了」だった。
今コミューンは頑張ってくれた。だが、彼が今無職状態であり、移民を受け入れる保証人として機能しないという理由で却下になった。交際しているしていないは関係ない。金が全てモノを言うのである。ま、国としてはそうしないと自国民を守れないからね、仕方ないよね、とは思う。
頼みの綱だった今コミューンが倒された。次の手段は「大使館に直談判」だ。
前知識として、半年くらい前までであれば未婚であっても交際相手が現地にいるなら渡航は許可されていた。本当に交際しているんだよという証明を出したりなんだりの書類を用意しなければならなかったので、まだ着手していなかったが、背に腹はかえられない。
「パートナーに会いに行くので入国許可をください」と大使館へメールした。案の定、「まずは交際の証明とパスポート送って。それから追加書類のリスト送るから」と言われた。ここまでは想定の範囲内。すかさず交際の書類等を送り返答を待った。だいたい、一日に一往復くらいのスパンで連絡していたので、なかなか前に進めず毎日ストレスだった。
そして翌日、追加を要求された書類は一つのみ。「90日以内に帰国することを証明する書類」というものだった。とりあえず、余っている帰国分のチケットを提示した。すると、「それでは不十分」と言われた。「日本で賃貸借契約を結んでいるか、労働契約を結んでいるか、学生であるかの証明を出して」という。いや、もう1年前から仕事辞めてるし、結婚するために渡航するから家もないし、学生でもないし、帰国チケットくらいしか証明しようがないんですけど…。
ということで「どれも持ち合わせてないので、他に何か例はないですか?」と聞いた。返答は「90日以内に帰国することが強く証明されるものを提出してください」だった。だ か ら そ れ を 教 え て く れ 。
要するに、向こうも何とははっきりとは言えないけど、「お前の帰国チケットじゃ無理だし、賃貸借契約書か労働契約書か学生証出せたら許可するか考えるんで。」ということしか言えないと。
どれも出せない。完全に終わった。もう打つ手がない。
彼が痺れを切らして「彼女と結婚するんだから入国許可を出せ」と別口でメールを送ったが「今彼女と連絡取ってますんで」とだけ返事が来た。シンプルに感じが悪かった。
私はその辺りから毎晩腹痛を起こし、お腹を下し続けている。
SNSをチェックすると、既に結婚しているにも関わらずビザをなかなか出してもらえず足止めを食っている人や、残すは市庁舎でセレモニーをするだけなのに「帰国しないんならC-VISAの必要書類を全部だしてね(VISAは出さんけど)」と難癖をつけられている人、様々だった。
絶対に外国人を入れてやらねぇからなという強い意志を感じる。わかるよ、自国民を守りたいんだよね。ただでさえ移民いっぱいだもんね。まぁ、こちら側からしたらめちゃくちゃ腹立つけどな?????
行政書士や弁護士、現地日本人の方にも相談したが、残念ながら「既にやった手」しか答えがなかった。唯一最後に残された方法は、「引っ越し後の新しいコミューン(以下、次コミューン)に私不在でも結婚手続きができるか聞く」だった。
これは現地日本人の方からも言われたことだが「コミューンによって手続き方法は違うし、コミューンの中でも担当によって対応も言うこともバラバラだから、ある人はダメといっても別の人は良いと言ってくれることがある」。だから次コミューンに引っ越したら再度挑戦してみるべき、と。
結婚手続きに着手さえできれば、時間はかかれども、ただ恋人であるというよりも渡航するのに強い理由ができる。
4月某日、無事「次コミューン」に彼が引っ越した。早速コミューンに電話すると「彼女が結婚手続きするのに同意してる委任状にアポスティーユつけてくれたら、彼女がベルギーにいなくても結婚手続き進められるよ」との回答。本当にこれが最後の希望…!私は翌日にはやったこともない「英文で委任状を作って、公証役場に連絡、認証を得る」というプロセスを爆速で済ませ、その日のうちに、EMSで彼に送った。これが1週間前のことである。
そしてつい数日前、「ベルギーの国境が開くかも!」という速報が入った。国境が開きさえすれば、自由に渡航ができる。大使館からの嫌がらせ(※彼らは彼らの仕事をしているだけです。)も受けなくていい。彼も私も、そして私とほぼ同じ境遇にある友人もワクワクして発表を待った。結果は「国境を開けます!!!(EU圏内のみ)」だった。ヽ(・ω・)/ズコー
ちなみに、ベルギーは5月1日からレストランの営業を再開させるとほのめかしていたが、蓋を開けてみると「5月8日からレストランの営業を再開できます!!!(テラス席のみ)」だった。
彼は「あいつらにはキン●マがない」と吐き捨てていた。いや、本当、タイトルで盛り上げて内容がないユーチューバーみたいなやり口、どうにかならんのか。
この一か月、相変わらず毎日毎日状況が変わっていた。彼の鬱がまた再発しかけたのも辛かった。引っ越し先が4階で、屋根に上るのが簡単な構造=死にやすいのもすごく不安だった(幸い、投薬が効いていて今は落ち着いている)。こちらがどれだけ焦っても大使館は態度を変えないし、状況も変わらない。私がいくら「大使館が無理だと言ってる」と伝えても、彼は「何か方法があるはず」と食い下がってきて互いの空気が悪くなることも多々あった。そんな中で彼が一度「みそに会いたい」とフェイスブックのタイムラインに書きこんだのを見たとき、「辛い」の限界がきて初めて泣いた。(しかしその投稿のコメントに彼の友達が「ゲームやろうぜ」とマリオゲームのリンクを貼っていたのを見たときはちょっと笑った。オタクの励まし方、世界共通。)
とりあえず、散々動き回ってまた「日本でやれることはもうやった」状況に戻った。彼は根拠もなく私がもうすぐ渡欧できると思っているが、個人的には、あと数か月かかることも考えておかないとな、と思っている。
こんな中、SNSで知り合った同じ境遇にある友人には本当に助けられている。彼女がいなければ大げさでなくもっとハチャメチャな状態だったと思う。私が彼に言われて「フランスになら入国できるからフランスから陸路で行けばいいかも!」と言い出したときも、彼女に「日本人は入国ができないとされているのに裏技使って入国→結婚しちゃうと、ビザ申請のときに必ずバレて、突っ込まれたら終わる(ので一旦落ち着こう)」と正しいブレーキを踏んでもらえた。そう、我々は移民で、絶対的に弱く、目を付けられると終わるのだ。そういう感覚も、きちんと身に着けていくべき期間なのだと思う。
私は昔から「海外に住みたい」と思ったことはなかった。周りに「海外で暮らしたい」という人はいたけれど、「日本にいた方が楽じゃん~」としか思わなかった。そして実際に「日本にいた方が楽だな~」と思う。海外で暮らしたい人はなかなかチャンスに恵まれず、日本大好きな私には海外で暮らす道が待っている。人生って本当に分からない。
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