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短編小説

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月 満ちる

人を待つ。ただそれだけのことが、ふいに時を突き動かす。

9月も終わり、頭上に満月をのぞみながら、松下彰は車で同僚を待っていた。
“ごめん、今日の夜、迎えに来てくれない?”
就業時間中、スマホが彼のポケットの中で震えた。周りに見えないように机の下で開くと、営業部の白石杏子からメッセージが入っていた。

二人か働いている食品メーカーでは、今回新しいドレッシングを開発していた。そのドレッシングがつい

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