（7・終）まんがを描いていたら首をいわしたので描き方を丸ごと変えてみる

月に100枚まんがを描いていた人が、姿勢が悪かったために首をいわして、まんがの描き方をまるごと変えようとしたら他のものまで変わりそうな話。その７。

ひとまずの区切りにしようと思う。

だいぶ絵を描く姿勢は整ってきたからだ。
まんがが描けるようになるまでにはまだいろいろな工夫が必要だろうが、今整えた絵を描く姿勢がベースになるのは間違いない。ひと月かけて、なんとか「絵は描けそうだ」というところまで来た。うれしい。

絵が描けるんならまんがもいけるんじゃない？　と思われるでしょう。でもだいぶ違うんですよ。

わたしの考えるまんがにとって、絵はいうなれば乗り物で、車とか新幹線とか自転車とかに近い。緻密な描線を誇るプライベートタクシーか、トーンバリバリ高級感たっぷりの特別列車か、フラットな軽快さが魅力の自転車か。どれも素敵だ。

まんがは旅の行程そのもの（個人の見解です）。しかも、旅の計画をたてるワクワク感から、終わった後の余韻まではいってるワンパッケージの娯楽だ。その旅をする＝まんがを読むことで人生が変わることもある。大好きな場所が増えることもある。口に合わないこともある。

そのワンパッケージを作るのがまんがを描く作業なのだから、乗り物だけ選べても（絵だけ描けても）全然足りないんである。

旅の目的、メイン観光地、なにを食べるの、どこに泊まるの。

ぜーんぶ決められるので本当にまんがは楽しい。ところどころ隙間を作っておいて自由時間をもうけておくと、その隙間から、読んだ人の旅が別の方向へ始まったりもするので最高だ。その旅の行方を感想でときどき教えてもらえるので、とびあがるほどうれしい。

その道程を、わたしは真っ白のコミスタ（まんがを描くソフト）の画面を見つめることで作ってきた。

長時間、変な姿勢で固まって立ち上がりもせず、真っ白な画面に自分の脳内に見えている絵を幻視しながら、テキストツールでセリフを打つ。絵を幻視した状態でフキダシの位置を決める。くりかえしくりかえし調整する。

ハッとするような、ここがキモだ、世界が変わるポイントだ、と思うところにはその段階でも絵を入れた。それは液タブという、パソコンの画面にそのまま書きこめる道具を使っていたからできたことだった。文字の入力と絵の描きこみとの間を、意識せずに行ったり来たりできるから。

もうできない。

わたしの腕を支えてくれるウエストクッションは分厚くて、板タブを載せたままではキーボードを載せたトレイを引き出せない。

板タブを一度脇に置いて、キーボードのトレイを引き出し、文字を打ち込む。ウエストクッションをつけていると、板タブがない状態でも、足置き台から足をはずして足首を座面の下で組み、太ももの面を下げなければクッションが邪魔でトレイを引き出せない。（脚が太い）

逆にウエストクッションなしでセリフを打ち始めるなら、絵を入れるべきところでまずクッションを装着するところから始めなくてはならない。

どちらにせよ、もたもたしている。幻視していた映像が逃げてしまう。

アナログでノートなどに描くのはどう？　ダメだ。うつむく姿勢は首に負担がかかってしまう。セリフなどのテキストを後で打ち込むとなると二度手間だし、位置の調整などは結局白い画面に向かってやらなければなんともならない。

できない、できない、できない。
わたしはイラストレーターではないので、まんがを描かないと仕事にならない。楽しみの根幹を占める趣味もまんがを描くことだ。
すごい。なにもできない。人生が吹き飛んだ感じだ。

まんがを描くことのハードルの高さに気づいた当初ポカーンとして、本当は未だにポカーンとしているのだが、何をすべきかはわかっている。

変える。

今までどおりに、と思っていたらできないことだらけでべっこべこにへこむだけだ。二度とあのシームレス環境は手に入らないのだから、へこみ続けてまんがをあきらめることになるかもしれない。
（正直まんがのことを考えたくなくて、しばらくエンタメから目をそらしていた。全部まんがに結びついてしまうので）

今までどおりを捨てるか、まんがを捨てるか、

なら今までどおりを捨てよう。まんがは楽しい。
変わればいい、それだけだ。

今までどおりにはもうできないから、
絵を描く姿勢を変えたように、まんがの描き方も、仕事のやり方も、今までなじんだものを全部変える。ここからまた長く描いていくために。

希望はあるけれども不安の方が強い。イライラするだろう、癇癪起こしてあばれるかも。思い通りにならない、というのはかなり心を削ってくる。

でも、これしかない、と思い込んでることも、意外に変えられるもんだ。
肘を上げて描くことを捨てられる日が来るとは思わなかった。歳をとって衰えて、天井から吊るす設備を作る方が先だと思ってた。

だからたぶん、まんがの描き方も変えられる。今のところノープランノーアイディアだけど。

いずれ、
いや～～～あのタイミングで描き方変えといてよかった～～～～
ってなるといいな。

おわり。
読んでくださった方ありがとうございました。
またね。

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