幻日
一瞬で分かった。
一発で分かった。
一言で分かった。
ああ、この人だ。
私はこの人が好き。
信じる。
否、信じてる。
この人との間で、どんなに傷つくことがあっても、どんなに残酷なことがあっても、その責任は全て私が引き受ける。
全力で自分を捧げようと思える。
多分、これはそういう類の出会いだ。
運命ではない。
そもそも私は運命なんてものは信じない。
そんなありふれた言葉で片付けたくない、この情動は。
私の中の眠っていた細胞が一斉に動き出すような瑞々しい感覚。
しかしその一方で、まるで遠い故郷から聞こえてくるような懐かしい響きも持つ。
でも会ってない。顔も名前も背丈も知らない。
今、私が知覚したのは声だけなんだ。
これは何。
分からない。
教えて。
その波は、確かに私を震わせた。
その音は、確かに私の心に届いた。
その声は、確かに私の脈を速めた。
どんな美しい音楽より、内側から私を揺さぶった。
多分、私はこの人にいつか会うことになる
どこかの街ですれ違うのかもしれない。
或いはどこかの海。
或いはどこかの国。
或いはどこかの星の下で。
それはずっと先のことだと思う。
いつになるかな。
でもいいや、それでも。
生きる理由が見つかった、私にも。