「泥臭い知恵で地域再生を」『まちづくりの思考力』が日本農業新聞で紹介されました

図書出版 実生社 note

快走している『まちづくりの思考力』ですが、日本農業新聞さんにすてきな紹介記事を掲載いただきました。

私も編集作業中、河川工学者の島谷幸宏先生による「むしろ壊れるようにつくるんだよ。」というセリフに心を動かされたものです。

「壊れない」モノづくりが理想とされ、日本製品が世界を牽引してきた時代がありますが、いまやフェイズが変わりました。プラスチックなど分解されないゴミ、放射性廃棄物等、「壊れない」ことが起こす問題が巨大化しています。


許可をいただき、書評記事をここにも紹介させていただきます。

「泥臭い知恵で地域再生を」
(評)農林中金総合研究所客員研究員の行友弥 様

まちづくり、地域おこし、地方創生。言葉もニュアンスも少しずつ違うが、人口減少が加速する今日の日本で「地域を立て直さなければならない」という問題意識が高まっていることだけは間違いない。だから、地域再生を論じた本や論文は無数にある。本書もその一つだが、単なる事例紹介や方法論の提示にとどまらず、「そもそも地域とは、まちづくりとは何か」という原点に立ち戻って考察を進めているのが最大の特徴だ。

著者自身が携わったプロジェクトや内外で調査した事例だけで十分な読み応えはある。しかし、一方で、政治学、社会学、人類学、時には動物学や物理学、哲学などの幅広い知見を駆使し、課題の捉え直しを試みている点が本書のユニークな点といえよう。

手っ取り早い課題解決の手法を得たい読者には回りくどいかもしれないが、本質論を欠いた上滑りな地方創生策が旧来型の“他力本願”的開発主義に陥りやすいことを考えれば、こうした論考が今こそ求められているように思う。
特に、興味深いのは終盤で論じられる自治・自給・起業というテーマである。いずれもキーワードは「水」で、集落による水道の自主管理に取り組む静岡市葵区梅ケ島地区、「自糸の滝」を地産地消のエネルギー源として活用する福岡県糸島市自糸行政区、海外の事例としてインドネシア西ジャワ州の小水力発電事業も紹介されている。

第10章に登場する河川工学者の言葉が印象的だ。「(小水力発電は)むしろ壊れるようにつくるんだよ。壊れたときにそこにいる人で直せないから、技術が人から離れていく」。西ジャワの非政府組織(NGO)リーダーも「よい技術は、技術そのものを超えて、文化を結びつける。コミュニティーを結びつける力がある」と語る。

国家という「想像の共同体」と違い、暮らしを基盤に成り立つ生身の「地域」を再生させるのは、こうした泥臭い知恵だろう。そこに気付く力=思考力をもたらしてくれることに本書の価値がある。

日本農業新聞2022年11月13日付朝刊


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