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Facebookおじさんに要注意

本を出版するなら、相当後半の方に書いておきたいことなのだけど、思いついてしまったので書いちゃおうと思う。クラシック音楽の愛好、というものについて、という本筋からは少し離れてしまうかもしれないが、後々に本筋に近づくと思ってこの件について書いてみようと思う。

Facebookおじさん、というワードを検索しても定義は出てこないが、打ち込むとその後に「うざい」とか「あるある」という検索関連ワードが出てくる。思わず笑ってしまった。

FacebookというSNSを利用している若者はほぼいない。少なくとも高校生以下(最近は大学生もかな)は絶対使わない。つまり、Facebookの人口は確実に高齢化している。その中で、誰に対する発信でもないのに頻繁に更新したり、やたらDMを送ってきたり、過度にコメントをしたりしてソーシャルメディア・ハラスメントに近い言動を起こしてしまう人のことを「Facebookおじさん」と呼ぶ。とりあえず、ここではそう呼ぶことにする。

おばさんではなく何故おじさんか?というと、そういうことをする人がおじさんに多いからだ。というか、そういうおじさんをよく見てきたからである。つまり、音大生への直接的干渉と、音大生の被害(被害とまで言うと語気が強いかもしれないけど、あとでその意味が分かります)が物凄く多いのだ。

具体的な言動としては「政治批判を繰り広げる(何でか知らないが、こういう場合は過激な共産主義的主張が多い)」「リクエスト承認をしてもらうとわざわざ『承認ありがとうございました』のコメントを送り付ける」「誕生日になると花束の画像と共に祝福のコメントを送り付ける」「DMで、こんにちは!と送ってみる」「暇ですか?お茶でもしませんか?と誘ってみる」「LINE交換しませんか?と言ってみる」などである。

これがソーシャルメディアの中で行われているやり取りならまだしも、Facebookおじさんは実際の行動に移す。お気に入りの女の子の演奏会に出向いて、終演後のロビーでの挨拶を狙って、写真を撮ってくれとネダる。イェーイ、と謎ポーズで無理矢理撮った後は、謎にダサい絵文字と共に写真(もちろん無許可)と文章を投稿する。酷い場合、演奏会のまさに演奏中、客席から写真をパシャパシャ撮って(もちろん無許可)、自分のスマホの画像アルバムに溜め込む。実際、妻の演奏会に行った時、撮られていたのは別の人だったけど、演奏中にめっちゃ撮ってて注意されていたおじさんがいた。あの後どうなったんだろう。

これが、Facebookおじさんの実態である。余談だが、おじさん達がDMを送り付けることが多いのは8月のお盆らしい。仕事も休みになって、暇になったから女の子に絡んでみているようだ。構ってほしいのである。つまり、Facebookおじさんは、ただキモいのだ。同性から見てもキモいと思う。

音大に入ったばかりの大学1年生などは、このFacebookおじさんの被害を初めて受けてビックリしてしまう。愚痴をこぼす人たちも多い。しかし残念なことに、Facebookおじさんには、自分がFacebookおじさんである、という自覚がない。つまり自分がキモいことをしているという自覚がない。お気に入りの女の子と写真が撮れて良い気分になってるなんて、風俗か何かだとでも思っているのだろうか。勘違いも甚だしい。

そうだ。何故28歳のアラサーの半ばおじさんがこんな話ができるかということだが、すべて妻が体験してきたことだからである。妻は、音大生であること、そして女性であるということは、立場が圧倒的に弱い、と常にこぼしてきた。彼女の体験談に基づき、今この文章を書いている。もうすぐ私も、おじさんと呼ばれる歳になってしまうのだから、おじさんになる前に書いておかないと説得力がなくなってしまう。善は急げ、だ。

話が逸れてしまった。Facebookおじさんに戻す。ところで、「じゃあ嫌なことを言われるならFacebookやらなきゃいいじゃない」とか「ブロックすれば?」という話だが、そんな簡単な話ではない。先程述べたように、Facebookの利用者には高齢者や中年の人が多い。クラシック音楽の視聴者の大半が高齢者や中年の人なのだから、Facebookというソーシャルメディアは、特に若い演奏家にとって自分の演奏会や自分のプロフィールを宣伝する絶好の広場になる。Facebookを見た人が自分の演奏会に来てくれると、自分の収益が増える。そうして関係を持った顧客と懇意になれば、彼らは今後の活動にも参加してくれるリピーターにもなる。

これがジレンマだ。ブロックなんてすれば、「こいつは簡単にブロックする奴だ。こんな人の演奏会なんて行かない」と、Facebook上の口数の多いユーザーにより自分の評判を落とされてしまう。これが、音大生や女性の立場の弱さなのだ。

Facebookおじさんの被害を最小に抑えるには、謎DMに対して懇切丁寧にお断りするか、通知が来なかったという体で無視するしかない。そういえば、先日Twitterで、同様の被害に辟易して愚痴をこぼしていた演奏家がいた。プロの演奏家でもそういう状況である。

あんまりFacebookおじさんの批判をすると、おじさんの手によって吊し上げられるかもしれないので、この辺りにしておくが、なぜこんな文章を書くか?ということだ。つまり、なんでもそうだが、クラシック音楽の愛好家にとっても、ある程度の節度が必要だということである。初期の文章で「思想が強い」人たちのことについて書いたが、SNSとの関わりを間違えると辟易されてしまう(どの世界でもそうだと思うが)。クラシック音楽そのものが敬遠されてしまう要因に繋がってしまうことが1番悲しいことである。

私自身がコミュ障、ということもあるけれど、Twitterを相互フォローしてようが、ましてや一方的にフォローしてる人でさえも、用もない限り、面識がない人にはリプを送ったことはほとんど無いし、DMなんて怖くて出来ない。ソーシャルメディアを使いこなせていないだけかもしれないけど。距離感の問題かもしれない。私にとっては、舞台上で演奏している姿を観て聴いているぐらいが丁度いい。


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