ドラフト2023を俯瞰してみる

ドラフトが終わって、1週間と少し。始まるまでは長いのに、終わってからは、あれ、まだそれだけしか経ってないの?という気分になります。各媒体のドラフト関連の記事の出る早さには驚くばかりです。というわけで、少し遅れ気味ですが、ドラフト2023を俯瞰するnoteを書き、今年のドラフト関連noteを締めたいと思います。


上位予想してたけど、どうやったん?

最初に。予想したからには、検証が必要ですね。ドラフト前の最後のnoteで予想を書き、その後、ひとり入れ替えたものはこちらです。的中した選手は太字にしています。

前田悠伍 細野晴希 西舘勇陽
度会隆輝 武内夏暉 常廣羽也斗
西舘昂汰 古謝樹  草加勝  
下村海翔 
真鍋慧  上田希由翔

上田大河 横山聖哉 岩井俊介
滝田一希 
森田大翔 辻本倫太郎
尾﨑完太 宮崎一樹 高太一
廣瀬隆太 
熊田任洋 松本凌人

進藤勇也 木村優人 
古田島成龍
中島大輔 堀柊那  百崎蒼生
萩原義輝 坂井陽翔 東松快征
鈴木叶  武田陸玖 日當直喜

1位指名予想は、11人正解。横山聖哉は入るかも、と思っていましたが、代わりに真鍋慧を外す判断はできなかったです。
上位予想に関しては、今年は26人が的中、10人は的中ならずでした。
名前をひとりひとり挙げますと、

真鍋慧
➡3巡目までという基準だったが、どこも指名せず。今年は高校生野手の上位指名が極めて少なく、3人だけに留まった。同じタイプである佐々木麟太郎が志望届を出さなかったことも影響したように思う。

森田大翔
➡真鍋と同様、一三塁の高校生野手は誰も上位指名されなかったことによる影響を受けたか、指名漏れ。4巡目から指名が始まったので、もしかしたら3巡目までに指名されなければプロに行かないと言っていたかもしれない。

堀柊那
➡こちらも、上位かと思いきや、4巡目まで名前は呼ばれず。今年は4巡目で6人も高校生野手が指名されており、例年より1巡ほど下だった印象。

鈴木叶
➡堀と同じ理由と思われる。4巡目の3番目だったので、かなり惜しかったことは惜しかった。

百崎蒼生
➡いわゆるポテンシャルショート枠で上位かと思ったが、山田脩也が先に呼ばれたので百崎は4巡目だった。山田は遊撃守備の上手さや、高校代表にも選ばれたことが評価されたのかもしれない。

尾﨑完太
➡上位指名かと思ったが指名漏れ。今春は四球が多めながらも活躍したが、活躍したシーズンが4年春しかなかったことや、直近のシーズンでの成績の悪さが影響したか。もしかしたら2巡目までしかプロに行かない等の縛りがあったのかもしれない。

熊田任洋
➡3巡目までの縛りだったが、指名はなし。今年は支配下で大社二遊間を指名した球団が4球団にとどまり、上位で指名されたのは津田啓史と廣瀬隆太のみだったことが響いたか。中日が2巡か3巡で指名していたら・・・といったところだった。

萩原義輝
➡大学生捕手が支配下で1人しか指名されず、指名漏れ。捕手に関しては、支配下で入る道がほとんど高卒に限定されつつあるのが現状で、社会人捕手はもう4年も指名されていない。萩原は他ポジに転向しても大丈夫そうなほど打力があると判断していたのであるいは、と思っていたが、厳しい結果となった。

中島大輔
➡もしや上位も、と思って入れていたが、6巡目。指名があってよかったと正直思っている。上位指名された大学生外野手は1人だけであり、昨年、外野手の上位指名が多かったことによる影響を受けたと思われる。

古田島成龍
➡リリーフもできる社会人投手ということで上位指名予想していたが、松本健吾が先に呼ばれたり、独立リーグのリリーバーが上位指名で選ばれたこともあり、6巡目だった。とはいえ、指名されたのは良かった。

ということで、ここから先は予想できなかった10人を。

津田啓史
➡直前で上位指名候補に挙げられたので、これは指名あるのかなと正直思ったが、予想に組み込み切れず。身体能力がかなり高いショートなので、仮にショートを守り切れなくても、打てれば他ポジでも咲ける選手だと思う。

松本健吾
➡今年はリリーフでの登板が増えてきており、上位指名としては少しアピール不足かなと思ったが、社会人投手の中で最初に呼ばれた投手に。都市対抗での6回無失点アピールが効いた可能性が高い。

森田駿哉
➡今季27歳シーズンの選手が指名、しかも上位とは完全に予想外。今年は都市対抗で2先発・12回で自責点2と、二大大会では過去最高のアピールが出来ており、それが評価されたのかなと思う。

大谷輝龍
➡まだまだ続いたサプライズ2巡指名。独立リーガーで2巡指名は、10年前の又吉克樹以来の快挙。近年は社会人投手がプロの壁に跳ね返されることが多かったため、MAX159km/hということもあり、パワーリリーバーとして期待されているということだと思う。もしかしたら、外れ外れ外れ1巡まで出現したことで、2巡目から上田希由翔を繰り上げ、空いた枠に滑り込んだのかもしれない。

椎葉剛
➡大谷輝龍に続いての2巡指名。もしかしたら直前の大谷指名を見て、下まで待ってられないとばかりに繰り上げたかもしれない。彼もまたMAX159km/hのパワーリリーバー。彼らが初年度から活躍できるなら、ワンチャンの上位指名を狙って、社会人からでも独立リーグ移籍するパワーリリーバーが増えるかもしれない。

河内康介
➡木村優人より先に名前が呼ばれるとは思っていなかった。身長180㎝・MAX150km/hは上位指名されても不思議はないが、甲子園経験もなく、代表候補に呼ばれたわけでもなかったので、下位かなと思っていた。フォームは良いなと感じていましたので、この点が評価されたのかもしれない。ただ、2年連続の高校生右腕の上位指名だったので、指名したかった選手を他に指名されたのかも?という可能性はある。

山田脩也
➡百崎の欄で書いたように、高い遊撃守備力や、甲子園&高校代表の経験が評価された可能性はある。百崎とそこまで圧倒的な差があるわけでもないのであれば、こちらを優先する判断もできたかもしれない。

佐々木俊輔
➡今年の巨人は社会人ドラフトだったことで、こちらもやはり読み切れない指名。大社外野手という枠であれば中島大輔などを選ぶこともできたと思うが、この辺は球団の指名方針によって左右される。

杉山遥希
➡MAX147km/hだったので上位指名の可能性はあるかもと思っていたが、先に呼ばれるのは福田幸之介と思っており、福田も上位から漏れるなら杉山も厳しいだろう、と予想していた。思っていた以上に投手指名が多かったということを読めなかったのが響いた形。

石原勇輝
➡もしか上位も?と言われていたが、今秋は先発しているものの、基本はリリーバーで、MAX149km/hと大台に届いておらず、上位はないと思っていた。尾﨑完太の指名漏れを見ても、やはり限度以上に四球が多い投手は避けられる反面、四球の少なめな石原が評価されたのかもしれない。なお、六大学のリリーバーで上位指名は、たとえば楽天の津留崎大成のように前例はあり、MAX150km/hという数字を意識しすぎたのが予想を外したことの最大の理由。

今回は二択で迷って外したほうが上位指名、というわけでもなく、単純に目の付け所が悪かったなと思います。来年以降に活かしたいです。

上位指名についての俯瞰的感想

やはりこれは大切だねということで、上位指名を幾つかの視点から分析してみました。例年、上位指名となると

代表代表候補全国大会のいずれかor複数
・そういうものに出ていなければ身長184㎝以上が望ましい
・左腕やセンターライン以外だと身長180㎝以上が望ましい
右腕だと身長175㎝以上は必須条件に近い
左腕だと身長170㎝以上、センターラインだともう少し低くてもOK
・野手だと50m6.0以内
・右腕だとMAX150km/h、左腕だとMAX147km/h以上
右腕でMAX153km/h以上、左腕で150km/h以上なら上位濃厚
・野手ならセンターライン、投手なら先発
記事やスカウトのコメントで「上位候補」と言われていることが多い

およそ、これらの要素を持っています。これらをすべて持っていないという上位指名は数年間のスパンで見ても片手に収まるほどしか指名されていません。今年も、全ての選手がこれらの項目のうち、最低1つ、多くが複数を満たしています。

敢えて言えば、身長180㎝&MAX150km/hながら、地方大会どまりで代表候補にもなっていない河内康介の上位指名は少し意外でしたが、ここに現れない要素(フォームがすごく良い等)も絡んできますので、見てるところ見てるんだなという感想を持ちました。

一番上が入札、次いで最終1巡、2巡、3巡

今年の上位指名を見てみますと、やはり目につくのは、投手の多さ。なんと25人も投手が上位指名されており、これは近年ですと2016年の26人に次ぐ多さです。
今年は大学生投手がかなり濃く、2016年と同様、14名も上位指名。こういう年ですと、周りが投手指名に走る中、抜け駆けして上位で野手指名、と考える球団がもう少し出てくるかとも思いましたが、野手を2名以上、上位指名した球団は3球団に留まりました。そこまで野手が弱いとは思いませんでしたが、高クオリティの投手を諦めてまで上位、と考えさせるほどには強くなかったのかもしれません。昨年、かなり野手が上位指名された反動もあったかもですね。

高校生は10名であり、これは2年前と同じ人数で、少なめな数字。今年は大学生の上位候補が濃く、さらには独立リーグの投手が2人も上位指名された関係で、特に高校生野手の上位指名が少なかったなと思わされます。2016年からこのような調査をしていますが、その中で最も少なく、3名しかいませんでした(武田陸玖を含めても)。なお、その反動なのか、4巡目は6人も高校生野手が指名されています

これらのカテゴリ別で、平均人数を出しますと、

高投:5.9 大投:10.8 社独投:5.0 高野:6.6 大野:5.6 社独野:2.1
右腕:15.3  左腕:6.4   捕手:2.4  一三:1.9 二遊:5.6   中堅:3.0  両翼:1.5

今年は異常値といえるほど上位指名の投手が多かったですが、昨年は逆に、かなり野手が多かったのでその反動と思います。来年はもう少し、野手が増えそうですね。外野手が2021年・2022年と連続してかなり多かった反動が来たのが大きかったように思います。

投手で言いますと、左腕の人数は上振れと下振れが大きく、この人数が投手全体の人数を左右する傾向になりつつあります。最近はMAX150km/hの先発左腕も珍しくなく、指名漏れする選手も出てきているぐらいです。来年はどうなりそうか、noteを書き終えてから調べてみようと思います。

あと、忘れてはいけないのが、独立リーグの投手が2名も2巡目で指名された件です。これに関しては、NPBとしては社会人投手をリリーフ目的で指名することが多い反面、社会人野球で多くの先発機会を得る投手はスピードタイプではなくバランサータイプであることが多く、NPBの求めるスピード水準に達していないことが増えてきたためかと思います。昨年は5人もの社会人右腕が上位指名されましたが、通年で戦力になったのは大津亮介、もうひとつ結果を出しきれなかったのが吉村貢司郎で、他の3人は厳しい結果となりました。これを受けて、圧倒的なスピードを持つパワーリリーバーを探した結果、独立リーグの2人が選ばれたということかなと思います。

全体を見ての俯瞰的感想

支配下指名全体を見た際、今年で言えば、やはり独立リーグの指名が多かったということが挙げられるでしょう。2016年からで見ますと、

1→6→2→3→2→1→1→6

となっており、上位指名も2人いるとなれば、ドラフトを考える際、調べないわけにはいかないと思います。指名された4投手をまとめますと、

土生翔太❺ 23歳 181/92 右 MAX154km/h
宮澤太成❺ 24歳 183/91 右 MAX155km/h
大谷輝龍❷ 23歳 180/82 右 MAX159km/h
椎葉剛 ❷ 22歳 183/92 右 MAX159km/h

であり、若さよりもスピード能力が買われたのかなと思います。25歳未満で、154km/h以上であれば支配下の可能性が出てくると考えてみてもいいかもしれませんし、160km/hに迫るスピードがあれば上位指名の可能性もありそうです。

あと、今年で言えば大学生野手の指名がかなり少なかったですね。近年は上位指名だけでもかなりの人数が指名されていましたが、今年は8人のみに留まりました。来年は大学生野手が今年以上に豪華だと言われていますから、期待したいです。

この表を見て気づかれたかと思いますが、支配下指名自体がここ7年でかなり減っています。2018年と2019年の間に谷があったようで、昨年は70人すら割り込むほどでした。かつての下位指名が育成指名に回っているためと思われ、育成指名の人数は、昨年ですと支配下指名とほぼ同数なほどに増えていました。おそらく来年も、支配下指名は70人ほどかと思います。

ポジション別に見ますと、ずっと減り続けていた右腕の人数が、ついに増加に転じました。野手で言いますと、年によって増減の幅が大きいのは外野手であると改めて分かります。その他のポジションは案外、そこまで大きな増減がないですね。目減りした翌年は増えていることが確認できるので、来年は外野手がそれなりに多くなるかもしれません。

捕手に関しては少し気になる傾向が出ており、高校生以外の捕手の支配下指名が激減しています。2016年以降の推移をまとめますと、

もうほとんど、支配下指名捕手≒高校生捕手 になりつつあります。社会人捕手はこの4年間、1人も指名されていませんし、大学生捕手の指名すら激減しています。捕手でプロを目指すなら、育成でもいいので大学生のうちに飛び込んだ方がいいのかもしれません。

●おつかれさまでした!

もう少し細かく考えてみても良いかと思ったのですが、ひとまずここで切ろうと思います。また思いついたことがあれば追記するかもしれません。普段は主にTwitterの世界で活動していますが、今年は何があったのか、多くの方が見てくださって、このnoteの閲覧数もこれまででは考えられないほど多かったです。この場を借りて感謝申し上げます。

今年のドラフトnoteはこれで終わりです。また何か、書きたいことがあれば動かすこともあるかと思いますが、本格始動はまた来年になるでしょう。その時はまた見てくださるとありがたいです。それでは、またいつか。

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