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私と肉。

 肉が憎い。ギャグではない。マジである。

 腹の周りの肉が、ひたすらに厚くなってきている。今まで見ないふりをしていたが、もはやそうもいかない状況になってしまった。さぼりがちだった日々の体重測定を、渋々再開したら案の定。

 つらい現実と、高すぎる壁がそこにあった。

 この2カ月ほど、私はほぼ深夜に帰宅というスケジュールで生きていた。仕事中は、ほとんど炭水化物を取らないという生活をしているのだが、それではお腹がすく。それに、糖類を取らないと、脳みそが動いてくれない。

 疲れたよ~お腹がすいたよ~という、身体の声にバリバリ素直になった結果、私は深夜に次の日のために大量の炭水化物を摂取するようになった。おかげさまで、体重はまさにうなぎ上り。約2キロの成長を見せた。
 深夜、それも寝る前に白米1合、もしくはパスタ(乾麺状態で)200グラムほど。どう考えても、太りたい人間の食生活である。そうでなければ、なんだというのだ。
 私は、体形は生活環境を映す鏡だと思っている。だらしない生活をすれば、それなりにだらしない体つきになるというもの。これが、持論だ。

 独り暮らしを始めた時、私は人生で最高の重力を欲しいままにしていた。大学の入学を機に上京した私は、ひっそりと恐れた。これまでは、出されたものを食べていた。しかし、これからは自分の食事を準備するのは自分だけ。生活がモロに体形に反映されてしまうのだ。しかも、私が入学したのは女子大だった。田舎で地味な女に属していた私は、周りの女の子たちとのギャップに面食らってしまった。これ、誰の隣を歩いても女としてだらしないと思われる、と。
 “可愛く”というのは、すぐには無理だろう。まだまだガキだった私は化粧がとにかく下手だったし、髪を染めただけでオシャレになれると思い込んでいた。

 だからこそ、痩せるべきだと思ったのである。せめて、しっかりとした人間だと思われたい。今どきの女の子のようにダイエットをして、ちゃんとした“オシャレ”な人間になろう。そう考えた。そうすれば、染めた髪もまだ下手くそなメイクも馴染んで、女の子らしく可愛くなれると信じていた。

 若くて、がむしゃらさを持ち合わせていた私は必死だった。必死でダイエットに励んでいた。

 1年間ほとんど油を口にしなかったし、飲み物もジュースなんてありえなかった。基本的に調理法は蒸すか煮るか。持参していたお弁当には、味噌と野菜だけを詰め込んで50回は噛んでいた。

 そんな生活を続けていたら、10キロほど落とすことに成功。

 最後の仕上げには断食を決行。これのおかげで、一時期食べ物を受け付けない身体になり、なにごともほどほどが大事なのだと身をもって知ったのである。

 再度、あのころの生活ができるかというと、たぶんというか絶対に不可能である。若さというか、無茶をするだけのエネルギーが、私には残されていた。それに、初めての独り暮らしで張り切っていたということもある。

 現在、私は毎日エネルギーをひたすらに使い切って生きている。それで太っていくのだから、まず食生活がおかしいのである。そうでなければ、やりきれない。へとへとになるほど頭を使って、家に帰ったら家事に打ち込んで、夜が深まって布団に倒れこむ。

 こんな生活をしていて、エネルギーに満ち満ちるほどスーパーウーマンではない。もともと、体力は少ないほうだし。
 さて、これからの私のダイエット生活について言及しておきたい。

 まず、私は昼間に炭水化物をとることにした。これまでと摂取するエネルギー量は一緒。でも、エネルギーをとるタイミングは変えてみる。夜に一気に糖質を摂取することは避ける。
 この一週間、つまり体重の上昇を自覚してから私は夜にひたすらおかゆを食べることにした。キムチやらと煮込んで、納豆や豆腐を適当に入れたおじやとおかゆのハーフのような食べ物を無心で食べている。全く、体重に変動が現れないのが悲しいところだが。それに、最近さぼりがちだった運動やマッサージもきちんと取り入れてみた。ちゃんと成果が出ればいいのだけれど。
 ひとまず、この生活を続けてみようかと思っている。どうかどうか、結果がついてきますように。

 毎晩、毎朝、服を脱ぐたびに、ぽこんとした腹が顔を出して私に重い気分を強いてくる。特別痩せていたわけでもないし、素敵なスタイルだったわけでもない。

 でも、すっきりとした身体のほうが嬉しいし、なにより服を選ぶのにも張り合いが出てくる。
 暖かくなって、これからはどんどん着るものが薄くなっていく。誰に見られても恥ずかしくないボディラインを目指して、コツコツ痩せていくための努力をしていかなければ。決意はとても、とても固いのだ。こればかりは、きっちりと襟元を正して励んでいくしかない。見せる人がいるとか、いないとかそういうことはどうでもいいのだ。ダイエットなんて、基本的には自己満足の世界なわけだし。

 数年前に比べたら、ずっと痩せにくい身体になったこの身体にムチ打ちながらせっせと励んでいこう。傷の治りもそうだが、年を重ねるとすべてが鈍くなっている。こんなときに年を感じるというのは、まだまだ怒られそうな年頃ではあるのだけれど。

 さて、そんな私の今夜の予定。

 大好きな後輩と、お肉デートである。腹にまとわりついている肉は敵だが、美味しいお肉は大好きだ。

 たっぷりと食べて、明日からのダイエットに備えようと思う。

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