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夢を見るのは更なり

 気づいてしまった。いや、薄々そうかなぁ……なんてことも感じていたけれど、必死で目を背けてきたのだ。

 しかし、気づいてしまったのである。

 私が、“王子様”というものにめちゃくちゃ弱い、ロマンス好きであるということを――!

 大学時代、漫画のために食費を削るということをしていた私(今でもよくする)。ケータイには漫画アプリなるものが数個入っている。プロ・アマチュア関係なく、面白いものは面白い。ウェブで公開しているクリエイターさん大好き。
 そんな私がこれまで頑として入れようとしなかったのが、出版社が運営している漫画アプリだ。これ、絶対コミック欲しくなるじゃないですか……。
 本屋の立ち読み用の小冊子だけで大人買い、ウェブの試し読みで大人買い。気に入ったらとにかく大人買いがスタンダードな私にとって、これはなかなかの鬼門だと思っての自衛だった。

 しかし、そういう我慢はちょっとしたきっかけ1つで崩れる。
 大好きな作家さんの作品が読めると知った瞬間にダウンロードした。そして、他の作家さんの作品にドはまりしている。無意味な反抗だったのだ……。

 基本的にはどのアプリも1日限られた話数を無料で読むことが出来る。“無料”って甘美な響きだ。こういうときにすることと言えば一つ。これまで面白いことは知っているけれど、手を付けていなかった作品を試し読み以上に読み進めること!
 そして、私はまんまとその策に引っかかった。

 そんなふうに読んでみた作品が、どれもこれも“王宮系”!

 もっと簡単にいうと、シンデレラストーリーってやつなのだが、これがダメだった。伯爵さまが出てくる漫画とか、堅苦しい(気がする)からと敬遠していたのに……。
 非現実的だから、私がときめくはずがないと避けていたのに。

 1日4話ほど無料で読めるのだが、とにかくそのチケットを使い切っても足りない。初回特典でもらったボーナスチケットまで使い倒す勢いだった。そして、私は思った。

「これ、買ったほうが早いわ」

 頭のなかで小銭が落ちていく音がする。しかし、この考えには抗う術がない。だって、イケてる伯爵さまが一所懸命に女の子と口説いて、甘やかして、悶々とするんだもの!
 この魅力に抵抗しろってほうが不可能に近い。己の萌えに抵抗することほど、人生をつまらなくすることはない。

 私はあまりにもファンタジーが過ぎるものは少し苦手だと思っていた。だって、角や翼の生えた馬は目の前に降り立ってくれないじゃない?親指サイズの少年との出会いを、私は17年くらい待っているのになかなか叶わない。
 それなら、日常に密接した萌えが欲しい……!だから、最近読む恋愛ものと言えばOLだとか大学生が主役のものばかり。
 高校生たちが主人公のものは、いつの間にか読まなくなっていた。……だって、キラキラし過ぎててツラいんだもん。といいつつ、なんだかんだ読み返したりはするのですが。
 それもときめくためというよりも、自分がその作品を読んでいた時代を反芻するためと言ったほうが正しい気がする。

 私の生活に、ここ十数年溢れていた少女漫画的萌えが、めっきり供給できていなかったのだ。足りない、足りないとまさにゾンビのようにときめきを欲していた。

 そんな生活のなか満を持して到来したのが、王族・貴族ブーム!
 自分の世界とかけ離れすぎていて、“逆に”安心してときめける!“逆に”夢は夢のままで日常を楽しめる!この“逆に”というのが、なかなかいい感じだ。
 OLが主人公とかだと、上司がカッコよかったりするじゃないですか……。現実って非情だよなぁ、本当。
 バイト先にカッコいい先輩はいないし、ミスをフォローしてくれる同期もいないのさ。

 でも、20もとうに超えた女が「王子さま好きなんです!」って色々イタイじゃない。
 乙女ゲームをするなら、オフィスを舞台にしているものが好きなんです。弁護士で実直なお人柄のイケメンと結婚して幸せをかみしめるんです。性格は、ドS系が好きだし、そっけない態度にきゅんと来るほうが多い。
 でも、それって根底には“やさしさ”ってもんがあるから成り立つわけなんですよ!
 そして、そのやさしさを持っているのはやっぱり王子さま!短絡的だと言われようが、私の中ではそうなのです!

 どんなにそっけない態度をとっていても、ピンチのときには颯爽登場!
 鈍感な主人公にめげずに愛を囁き、ちょっと拗らせていたりする。たまりませんねぇー!

 そして、スーツが似合うんですよ。フォーマルな姿が大変麗しいんですよ!これで惚れないほうが無理ってもんじゃない?
 私はブリティッシュスタイルな男性が大好き。イギリス人男性のスーツ姿は大好物です。細身で気は少し弱そうなのに、自信たっぷりで(偏見です)。突然の雨で雨宿りをしているときに、すっとエスコートしてほしい!

 思い返せば、私はハーレクイン系の物語が好きでした。ハーレクインの小説は読んだことないけれど、コミックの試し読みに1日費やしたこともありました。
 お嬢様に筋肉質なSP(たまに見せる笑顔に鼻血出る)みたいな話、好きだったなぁ。年商うん億円の社長と秘書の両片思い的なものも好きなのですが。ちょっとあっさりしすぎているのよね、うん。壁が思ったよりも薄く突破しやすいため、私の萌えゲージが言うほど振り切らないというか。
 設定やらは大好物なんだけど、読み応えがいまいち……。そう思うと、少しかさばったって、ちょっと長めの少女マンガをあさるのが一番なんだろうなというところに着地するわけで。

 それにしても、私はショックだった。

 合コンやらに夢見るなや!とか言って、ビールをあおってたんです。こんな男いねぇよ!と鼻で笑ってたんです。
 でも、ふたを開けてみれば私が一番夢を見てるんじゃない……?
 舞台やらコンサートでテンションが上がるたびに言っていた自分のセリフを思い出す。
「○○くんは王子さまだよー!」
「身のこなし、本当に王子さまだ!」
 こんなこと言って、騒ぐんだもの……やっぱり好きなんだよね。だって、カッコいいものは仕方ない。ツボなんだもの、どうしようもない。

 首を痛めているポーズよりも、手をこちらに差し伸べてくれているポーズやら胸にそっと添えているポーズの方が好きなんだもの、こりゃあ決定的だ。

 でも、私は守られるだけのプリンセスになるのはごめんだから、ロマンスが始まりそうにはない。
 なんて言いながらも、リムジンで迎えに来られたら、そっと差し伸べられた手に躊躇しながら自分のものを重ねちゃうのかしら。重ねちゃうんだろうなぁ。
 とりあえず、私は私の中のブームが去るまでちょっと王子さまに夢中になりたいと思う。好きなものは好きなんだから仕方ない。

 イタかろうが何だろうが、ときめきの世界において王子さまは正義なのだ!

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漫画が好きすぎた青春時代。少しおさまって来たかと思っていたんですが、そんなに簡単なものじゃないです。平成最後の夏、私の夏には王子さまとのロマンスが刻まれました。

公式サイト「花筐

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