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僕の好きなアジア映画08:悪女

『悪女/AKUJO』
2017年/韓国/原題:악녀/The Villainess
監督:チョン・ビョンギル( 정병길)
出演:キム・オクビン(김옥빈)、シン・ハギュン(신하균)、ソンジュン、キム・ソヒョン、チョ・ウンジ、チョン・ヘギュン

こういう血塗れのアクションとヴァイオレンス、個人的には普段はあまり積極的に観ることが無い種類の映画だし、たとえ観たとしても特にあまり印象に残らずに終わってしまう、ということが多いのです。アクション/ヴァイオレンス系の映画って、しっかり説明があって了解不能ということがあまり無いので、逆に後に引き摺らないんです。しかしこの映画は特別でした。監督は『殺人の告白』のチョン・ビョンギル。

まずは映画冒頭の6分余りに及ぶ壮絶な、息をもつかせないノンストップのヴァイオレンスシーンで度肝を抜かれます。

これは見事なまでに計算し尽くされたシークエンスですから、NGが出たら間違いなく大変なのですが、このシーンでNGがでなかったという可能性はとても低いでしょう。撮影の大変さは想像に難くありません。

そしてもう一つバイクでのアクションシーン。これも壮絶。このスピード感、いったいどうやって撮ってるのでしょう。これは出演者も命懸けですね。

さらにもう一つおまけにウェディングドレスでの狙撃シーン。これもたまらないシーンでした。


主演のキム・オクビンはこの映画のため3にヶ月間みっちり訓練したそうですが、女性が3ヶ月でこれだけ出来るのが驚きです。もちろんスタントなしではあり得ませんが、元々余程運動神経が良くないと不可能でしょう。彼女、パク・チャヌク監督の『渇き』にも出演していた女優さんで、テコンドーの黒帯を持っているそうです。

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そして敵役には『復讐者に憐れみを』、『JSA』、『トンマッコルへようこそ』など、韓国を代表する名優シン・ハギュン。冷酷さと哀しみを見事に演じています。流石というべき重厚な演技でした。

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もちろん最初は最先端の衝撃的なアクションやヴァイオレンスシーンに持っていかれてしまうのですが、この映画それだけではありません。本作はとんでもなく悲しい映画です。ネタバレしないように物語には触れませんが、全編を通して漂っているこの悲しみが、この映画を単なるヴァイオレンス映画とは一味違うものにしているように思います。キム・オクビンもシン・ハギュンも、運命を諦念しているような演技が見事で、実に悲しいんです。この映画はスタイリッシュなアクションに鷲掴みされて、「悲しみ」の余韻に後ろ髪引かれるのです。

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