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僕の好きなアジア映画 02:楽園の夜

『楽園の夜』
2019年/韓国/原題:낙원의 밤e 
監督:パク・フンジョン ( 박훈정)
出演:オム・テグ(엄태구)、チョン・ヨビン(전여빈 )、チャ・スンウォン (차승원)

 『新しい世界』、『ザ・ウィッチ』などで注目のパク・フンジョン監督による韓国ノワール。激烈なヴァイオレンス、壮絶なカーアクション、血塗れの映画です。Netflixオリジナル。そういう映画が苦手な方はこれはご遠慮いただいた方がよいでしょう。でもこの映画、韓国ノワールがそれほど好きではない私でもどこか強く惹かれるものがあるのです。しかし、なんでしょ、韓国ヤクザが使う刃物ってなんかとても痛そう。(↓こういうやつです。)

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この映画、まず俳優たちの眼差しが素晴らしい。
主人公を演じるオム・テグ。不器用で実直なヤクザの役。強面ですが虚無を見るような暗くて深い、しかし優しさを秘めた眼差し。

楽園の夜2-1-min

でもオム・テグさん、普段はこんな感じのシャイな好青年です。役者って凄いですね。

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そしてヒロイン役はチョン・ヨビン。余命幾ばくもない、不治の病の女性役ですが、孤独と絶望を滲ませたクールな眼差しに痺れます。拳銃の腕の素晴らしさを問われて、ぶっきらぼうに「私は殺したい人が山ほどいるから」と答えます。ほんと痺れます。この拳銃の腕前がラストの伏線になっています。

楽園の夜2

彼女はNetflixでのドラマ『ヴィンチェンツオ』での弾けた弁護士役も素晴らしかったなぁ。演技をみるのが楽しみな女優さんですね。

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さて、ヤクザの抗争で楽園「済州島」に逃げて来たオム・テグが、彼をかくまう武器商の姪役、チョン・ヨビンに出会います。恋愛に発展することはないのですが、孤独な者同士の心には短い間にお互いへの共鳴が生まれます。楽園であるはずの「済州島」だけど、絶望的な彼らには全く「楽園」の意味がない。「済州島」の映像も明るくハッピーな楽園のそれではない。死に向かって追い詰められていく二人を、ブルーがかった、時には詩的ですらあるスタイリッシュな映像と、センシティブな音楽で描いています。血生臭い中に、凡百の韓国ノワールとは一線を画す秀作であり、パク・フンジョン監督の個性を強く感じさせます。そしてあまりにやり切れない展開は、衝撃のラストでカタルシスを迎えるのです。僕はこれ、傑作だと思うなぁ〜。

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追記:この映画には「水刺身(ムルフェ)」という出てくる印象的な食べ物が出て来ます。済州島や釜山などの名物料理なのだそうです。作ってみました。これ美味しいです。チャミスルやマッコリでいただきます。
こちらレシピなど

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