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【第32回】Via701  館長 秋元亮彦さん

この記事は、2024.3.10に公開したものです。

https://www.city.mishima.shizuoka.jp/media/05095060_pdf_2024313_rad4A23E.pdf

「ものづくり好き」がつなぐ文化拠点に


 2023年1月、年以上に亘り商店街を活性化し、三島の文化拠点となっていたVia701が装い新たに生まれ変わりました。市民はもちろん、ものづくりやアート鑑賞、建築愛好家も楽しめる文化拠点として動き出しています。その仕掛け人である、館長の秋元亮彦氏にお話を伺いました。

ー 新しいVia701はどんな場所でしょう。

 1階は「根継商店(ねつぎしょうてん)」です。プロの大工が常駐して工具や木材を使ってDIY作業やワークショップができる貸しスペース「まちの作業場」と、建築アイテム・家具・木製品の展示販売や建築とアートに特化した品揃えのマニアックな「ものづくり書店」です。2階はこれまで通りのレストラン「レスカリエ・ド・三島」とレンタルギャラリーで、地域の皆様にご利用いただいています。

ー どのような経緯からこのスペースをつくられたのですか。

 Via701は1999年に商店街の方々によって、三島に文化の発信や人が交流する場所が必要だという思いからつくられた建物です。この場所の運営を普段は建設会社の社員である我々が引き継ぐことになり、改めてVia701の歴史や三島の文化、周辺環境などを調査し、大元のコンセプトは継承しながら、新たな文化の交流が生まれる場所に変えていこうという発想に至りました。ギャラリーやホールで様々な作品が発表され、人が集まる場所だった歴史に、我々がどんな付加価値をつけられるか考えました。


ものづくりからヒト・モノ・コトが繋がる場所


 DIYができるスペースは他県等にもありますが、現役のプロの大工が常駐しているところはほとんど無いと思います。我々が所属する会社は自社で100人以上の大工を育てている全国的にも珍しい建設会社です。そんな会社の技術を担う大工が常駐する、DIYや木工のワークショップが気軽に出来る場所があったらとレンタルスペースを作りました。また、普段の仕事では建築の関係者としか話すことがないスタッフが、時々ここで色々なお客さんと関わることはとても新鮮で、対応力の養成にも繋がっています。
 大工さんって当たり前ですが、ものづくりが好きなんですよね。そんな大工さんたちが、関心を持ってくれた方々にものづくりの楽しさを伝える機会になっています。ここがものづくりとの出会いの場となれば嬉しいです。
 会社としてお店を「建てる」ことはこれまでたくさんしてきましたが、実は「運営する」のは初めてのことです。根継商店のスタッフのほとんどは建設会社の社員です。日替わりでローテーションしていますが、普段の仕事は設計業務や現場の管理・大工です。つまり、大工スタッフも含めて建築についてはプロですが、お店の接客は基本初めて。しかし、建築依頼者以外の方々との交流にはさまざまな発見や出会いがあり、そこに生まれる色々なコミュニケーションが社員の成長にも繋がっています。

根継商店のDIYスペース「まちの作業場」



ー  ほかにはどんな特徴がありますか?

 ものづくり書店は、様々な建築のプロによるお薦めの本が並んでいます。中には世界的に有名な建築家の推薦図書コーナーや、大工さんお薦めのマニアックな本もあり、大型書店に負けない濃い品揃えとなっております。絵本であっても、家づくりや大工がテーマのものばかりですよ。専門書店が少なくなっている今だからこそ、建築の好きな人がわざわざ来たくなるような、新たな発見や交流に繋がるような場所を目指しています。


連携から交流や発見が生まれる場所に


ー オープンから1年、どんなことが印象深いですか。

 学校や公的な機関、さまざまな活動をしている方々との交流は、想定外の嬉しい出会いでした。例えば、こどもの日には三島で子どもとアートの活動をしているLab Qurio(ラボキュリオ)さんと、木の端材を使ったワークショップや展示を行いました。他にも三島のハーバルケアサポートtokuraさんと、「木工カフェ」として認知症予防のワークショップを定期開催しています。元小学校の先生によるQuilot(キュイロット)さんと子ども向けの木工ワークショップも開催しました。
 レンタルスペースは水・日曜以外は貸し切りもできるので、絵画教室や金継ぎ教室などのカルチャースクールや、企業での貸切イベント等にもご利用いただいています。イベント情報はインスタグラムや店舗前の掲示板で是非ご覧ください。お子様からお年寄りまでさまざまな接点のある場所でありたいと思っています。
 根継商店では、箸作りなどのいつでも参加できる通常メニューに加えて、鯉のぼりやクリスマスツリーなど季節に合わせた木工ワークショップも開催しています。根継商店のスタッフで考えたオリジナルメニューです。夏休みには宿題の工作支援も行いました。

ー 今計画中の新しい試みや、やってみたいことを教えてください。

 棚や空いたスペースを低価格でレンタルできるようにして、気軽な展示・販売スペースにする企画を進めています。地域のアーティストやものづくりをする方々に使ってもらうことで、ここにしかないアイテムの販売や展示が楽しめるようにしていきたいと考えています。
 現在まちの作業場にはスタンプカードがありますが、通って技能がアップすると、会員ランクが昇格して道具や作品が保管できるなど、楽しくものづくりができる制度を整備したいと考えています。また、大工さんによる本格的なDIYスクール等も計画しております。


若い創作の力を支援し街の文化の発展へ


 地域の文化活動への支援という思いから、2階のギャラリーは学生の利用を7割引にしています。特に作家やクリエイターを目指す学生や団体に積極的にここを使っていただきたいと考えています。
 街中の本格的なギャラリーで、創作する楽しさ、たくさんの人に見てもらえる喜びを感じることや、ここで生まれる交流が三島の文化の発展に繋がるのではないかと思っています。ぜひお気軽にお声がけください。

ー 三島にはどんな印象をお持ちですか。

 私は沼津出身ですが、三島の街は首都圏からの移住者も多く、常に新しい人が入ってくるところだと感じています。根継商店周辺もマンションがどんどん建っています。
 そんな新陳代謝がある街でありながら、三嶋大社や三嶋大祭りといった伝統的な面も色濃く残っていて、川や緑といった自然もあり、コンパクトな中にさまざまな年代や価値観が共存する多様性が豊かな街だと感じています。一言で言えば「濃い」ですね。
 三嶋大祭りやハロウィン、大通り商店街の歩行者天国イベントの際も、商店街と協力して休憩所や救護所として気軽に立ち寄ってもらえる場所として活用いただきました。
 Via701は年代問わず、さまざまな皆様にお使いいただける、新たな出会いや発見に繋がる場所でありたいと思います。


Via701
三島市本町7-30
TEL 055-955-5770


秋元亮彦氏プロフィール
1978年沼津市生まれ。日本大学理工学部を経て1999年(株)平成建設へ入社。3年間型枠大工、鳶、土工事に従事し、静岡東部エリア・東京エリアで営業職を12年担当。その後、本社企画部にて様々な営業支援や広報、商品開発・不動産開発等に携わりつつ2023年1月にVia701新館長に就任。

2024.3.10 text Yuka Nimura, Maki Sumi & photo: Akiko Matsui

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