学校の中の白黒とグラデーションな人生。
まっすぐに続くこの道。懐かしさと儚さと尊さが津波のようにこころに押し寄せすっぽり覆ったかと思えば波が一気に引いていくような強烈な寂しさに襲われた。
この道は、高校三年間、スカートがなびくのを片手で抑えながら自転車で風をきって登下校した道。サイクリングロードと称した草と空と川をまるで金八先生みたいときみとゲラゲラ笑いながら漕いだりもしたっけ。
先生に見つからないようにイヤフォンをして好きな曲をフルボリュームで聴いた。春になれば坂の上の桜の木めがけて花びらの中を勢いよく立ち漕ぎをして、日が暮れた水門には幽霊が出ると聞いて泣きながら通った。
クラスメイトの好きな男の子との初めてのデートはこの道を一緒に帰ることだったし、部活の帰り道は食べ物の話ばっかりしながら毎日きみと帰る。雨の日はカッパを着て、風の日は一漕ぎ一漕ぎが筋トレだった。
***
久しぶりに会おうと、テスト期間になると制服を着たままよく行ったかわいいカフェなんかじゃない、サイゼリアできみと待ち合わせた。
駅から駅への移動、それ以外の待ち合わせは本当に久しぶりで、地元っていいなとつんっと冷たい空気に懐かしさが蘇る。
生きづらいよね。とぽつりぽつりとわたしたち。
ドリンクバーのコップばかりが増えて、ああ何にも変わってないとまるでいつかの日の続きをしているような日差しに包まれた。
戻りたいね、ほんとに。噛みしめるように絞り出すように現実の重みを含んだその台詞。
お気に入りのあの制服を着てた頃は、まるで息するように何にでも一生懸命になれた。だからこそ儚く輝いていた。だからこそ全力で駆け抜けられた。そう心から思えるあの場所が眩しすぎて目を細め俯き加減の寂しさえ覚える。
それでも、昔ばかりを振り返るようなわたしたちではなかった。もっともっと未来に縛られて生きたい。やりたいことを実現させたい。そうまっすぐに語るわたしたちは、やっぱりあの日の続きを生きていた。
温かい飲み物とジュースを交互に飲みながら、変わらない自分と変わっていく自分が繋がっている当たり前な時間の流れに不思議さを覚える。ああ、生きるって面白いな。悩んで悩んで悩んで、その先に何かを見つけたいともがくわたしたちは、きっと制服を脱いだこの瞬間も儚く尊く輝いているのだろう。
***
もう怒ってくれる先生はいないし、答えを教えてくれる解答用紙もなければ答えを見つけようと必死になる答案用紙もない。
白か黒か。だと思っていた。合格か不合格か、頭がいいか、悪いか。できるか、できないか。得意か不得意か。校則を守るか守らないか。怒られるか褒められるか。学校の中はいつだってそうで。
でも、人生はグラデーションだった。
嘘のような本当と本当のような嘘。正義のような悪と悪のような正義。幸せのような不幸と不幸のような幸せ。間違いのような正解と正解のような間違い。
自分で見つけて、自分で答えて、自分で答え合せをするのだ。誰にもわからない。何が正解か、なんて最初からないのだ。
人生は成功例はあっても正解はない。自分が何に幸せを感じるか、それを考えて感じて知るところから始まるのだと学校では教えてくれなかったたくさんのことを制服を脱いだ今、少しずつ拾い集めている。
先生達は知っていたのだろうか。
ここに書く答えは一人一人違っていいことを。知っているけど自分で見つけて欲しかったのだろうか。わたしたちに何を学び、感じ成長していってほしかったのだろう。そして、二度と戻らないこの日々に何を伝えたかったのだろう。
知っていたのなら、教えてほしかった。
もっともっと、
自己満足に生きていいって。
青く澄んだ空がグラデーションの夕日に染まる。暗い未来も明るく生きられるのだ。
時代とか社会とか、本当は関係なくて、いかに自己満足に夢中になって生きれるか。100点満点だった時代や社会なんて無いのだから、答案用紙に100点をもらえなくても自分の人生を最期のとき、いい人生だった!と言えればそれでいい。誰に何を思われても、わたしが満足ならそれでいい。
我慢しないで好きなことをやりたいことを見つけることに、もっと必死になって苦しくなるくらい夢中になって、"自分で決める"力を教室で先生の生きる姿から学びたかった。
そんなふうに思えるのもきっと、大人になった証拠なのかもしれない。
だからわたしは、キャリアアドバイザーになって人の生き方の選択肢を広げたいと、心からそう、思えるのだから。
***
一緒に生きていきたいと思える友達に出会えたあの儚い日々だからこそ、一日でいいから戻りたいと思うのだろうか。
そんな日々をこれからも積み上げていく。制服を着ているときには無かった幸せになる覚悟と責任を今はしっかり胸に刻んでいるのだから。
旅するように生きる。ここから、また。
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