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食文化と調べ物の日記#2 フライドポテト、スイートポテト、ソフトクリームの共通点

4/11(月)~17(日) きみも日本語だったのか…

私の今住んでいるシェアハウスは、日本人と外国人が半々で住んでいる。日々会話をする中で、自分があたりまえだと思っていたことが思い込みだったことにしょっちゅう気付かされる。言葉もそうだ。
今週は、英語と日本語の狭間で頭を悩ます体験をたくさんした。

フライドポテトはフレンチフライ?チップス?

じゃがいもが手元にたくさんあったので、ひたすらフライドポテトを作って「フライドポテト、みんな食べて!」と英語でメモを添えて置いておいた。アメリカ人のハウスメイトに、「フレンチフライのことだね」とやさしく教えられた。
そう、フライドポテトは和製英語で、英語ではFrench fries。確かに日本語でも「フレンチフライ」という呼び方もあるけれど、フランス生まれではないし、フランスでフレンチフライとは呼ばないので、フランス人のハウスメイトへの気遣いもあってあえて避けたのだけれど。でも、フライドポテトは英語ではない。アメリカ人のハウスメイトにとっては、フレンチフライなのだ。「フライドポテトで意味はわかるよ!」言ってくれたけれど。

話し込んでいたら、焦げた。

そこに登場したオーストラリア人のハウスメイト。「わー、chips! んーでもtomato sauceをかけた方がもっとおいしいね」とつまみながら言う。
イギリス英語では、french friesではなくchipsなのだ。フライドポテトも、ポテトチップスも、chips。そしてケチャップはtomato sauce。 "chips with tomato sauce" と言ったら、ポテチにトマトソースをかけるのではなく、フライドポテトにケチャップなのだ。混乱する…

スイートポテトで作るスイートポテト

仕事の対価として、徳島の鳴門金時を段ボールいっぱいいただいた。お金ではなく、「ちょっといい食材」のお給料は本当にうれしい。ふかし芋も焼き芋も大学芋もやったけれど、まだある。スイートポテトを作ることにした。

スイートポテトを作るなんて、子どもの時以来だ。クックパッドで調べて作った。蒸してつぶしてトースターで15分。焼き上がり。案外早くできるものだ。ちょうど夕飯時でみんな集まっていたので、「スイートポテト、どうぞ〜」と言って持っていった。

Source: Photo AC

フランス人のハウスメイトが、手をのばしながら首を傾げる。

フ「sweet potatoの何?」
私「さつまいも(sweet potato)からつくった、スイートポテトというお菓子だよ」
フ「スイートポテトのスイートポテトということ?」
私「そう…だね。」

ここではっとしてググると、やはり、スイートポテトは日本生まれの洋菓子だった。確かに昭和の香りがする。秋に獲れたさつまいもに、少しのバターと牛乳を入れて風味をつけ、オーブン使わず家庭で簡単にできるお菓子。焼き芋やふかし芋のような芋臭い印象と対照的な、小洒落た洋菓子。栗きんとんや芋金時の延長の発想かもしれない。
素材名がそのままお菓子の名前になってしまったのは、スイートという響きがかわいかったからなのか、それともパイやケーキほど手の込んでいない「素材そのもの」なお菓子だったからなのか。わからないけれど、とにかく令和の国際化時代になり、私は "those are sweet potatoes made from sweet potatoes" というマヌケなことを言っている。

ソフトクリームはソフトなクリーム、ではなくソフトなアイス

これは、先週の投稿に対して、アメリカ在住の編集者、佐藤政人さんがTwitterで反応してくださったことから始まる。佐藤さんは「世界のサンドイッチ図鑑」や「世界のスープ図鑑」を出版されている方だ。

ん?ソフトサーブ?

佐藤さんいわく、アメリカでは(少なくとも彼が住んでいるボストン周辺では)ソフトクリームをソフトサーブと呼ぶそうだ。
慌ててググると、ソフトクリームは和製英語で、英語では soft serveだった。

soft ice, frozen dessert, ice creamと呼ばれることもあるが、soft creamでは決してない。

ではなぜ日本で soft cream と呼ばれるようになったのか。オンラインの英語教育等を提供するBBTのブログには、soft serve ice creamの略だと書かれている。でもそもそも soft serve ice cream ってなんだ。

疑問が解けないので日本のソフトクリームと言ったらのニッセイのHPで、ソフトクリーム誕生の歴史を紐解く。曰く、ガチガチのアイスクリーム (ice cream) をやわらかくしてサーブする(soft serve)機械がアメリカで開発されたことが、ソフトクリーム誕生のきっかけだったという。

"soft serve ice cream (やわらかくして提供するアイスクリーム)"

なるほど。そして、ソフトサーブアイスクリームは確かに日本人には長い。
しかし、もし当時の日本人にお願いできるならば、ice cream のことを「アイス」と略すのだから、soft served ice creamも「ソフトアイス」と略してくれたらどんなに楽だったか。
料理の英語では、クリームは生クリームを指すことが多く、ソフトクリームは「やわらかい生クリーム」を指しうる。そもそもソフトなものだから意味重複な上に、ソフトクリームとちがうものを想像させてしまいまぎらわしい。。

和製英語は歴史の伝言

こうして見てみると、和製英語は「外からそれが日本にもたらされた当時はナイスセンスだったけれど今となってはちょっと違う」なものもちらほらある。けれど当時の人の感覚や時代背景が垣間見えて、その頃に思いを巡らすのもなかなか楽しい。

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