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鍋一つでできる油づくりのススメ 〜 3種類の油をイチからつくってみた

ラード🐷、ギー🥛、ココナッツオイル🥥の三種類の油を作ってみた。そもそも作れるとも知らなかったし作ろうとも思わなかったのだけど、世界にはそれを作っている人もいて、教わって一つ一つ作ってみたらとんでもない幸福感だった。

3種類作ってみた結果、作り方は全部同じで、しかも拍子抜けするくらい工程は単純。鍋一つあればできて、できたての油はうれしい "おまけ" つき。素晴らしいんです。

🐷ラード

豚脂。「豚肉の脂身からつくるとうまいぞー」と中国料理の料理人の方が教えてくれたので、やってみた。中国は豚肉文化の国だ、中国料理にラードは欠かせない。炒め物や焼売などに幅広く使う。
参考にしたのは、こちらのレシピ。

よくある作り方では、背脂の塊を1kgほど買ってくるのだけど、ちょうど家に届いたふるさと納税の豚肉の脂身が多くて困っていたので、ちまちま取って冷凍しておいて、これで作ってみることにした。やや赤身混じりなのは、切り取り方が下手だったから。(背脂は肉屋さんで安く買わせてもらえるそう)

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豚脂1kgに水100gを加えて鍋で加熱。いい香りがしてくる。動物性の油の香りって、なんてパワーがあるんでしょう...

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1時間弱加熱を続けると、肉カスと油に分離した。ラード完成!出来立ては美しい琥珀色の液体で、冷めると白く固まる。軽くなった肉カスは、焼きそばで迎えに行きましょう。

まとめ:ラードは、豚の脂身を煮詰めることで作れました。肉カスは焼きそばに。

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🥛ギー(精製バター)

インドの油といったらこれ。ざっくり言うと、「水分と不純物を取り除いた純度の高いバター」なので、暑いインドでも常温で液体状態で保存できるのが利点。料理の仕上げに使ったり、焼いたチャパティ(薄焼パン)に乾燥防止のために塗ったり、お菓子に使うこともある。バター以上に澄んだ豊かな香りで、アーユルヴェーダ的には体温を上げる働きのある食材らしい。

仕事で中途半端な無塩バターが大量にあまり、「ギー作れるよ」と言われたので作ってみた。参考にしたのは、こちらのレシピ。

本当のインドのギーは、生クリームのような状態から作り始めるらしいのだけれど、今回は「中途半端に余ってしまったバターをなんとかしなければいけない」がミッションだったので、バターから作ることにした。

鍋にバターを入れ、加熱。溶けて、液体になって、そのうちプツプツ沸騰し始める。もう、バターの香りが...🤤
ただぼーっと鍋を見つめながら、芳醇なバターの香りに包まれると、心底幸せな気持ちになる。
そのうち、バターに含まれるタンパク質(カゼイン)などがアクのように浮いてくるので、じっとこらえて取り除かずに凝集させる。

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加熱を続けるすること1時間弱。揚げ物のような音を立てていた油が「シュワシュワ」という音に変わり、アクたちが固まって天かすのようになったら完成。濾すと、黄金色のギーと「バターの天かす」に分かれます。後者は、言わばタンパク質のバター揚げなので、とんでもなくリッチに香ばしい。そのままでもフィナンシェのような満足感なのだけど、焼き菓子に入れる人もいるのだそう。

まとめ:ギーは、バターを煮詰めることで作れました。副産物のバター天かすは焼き菓子に入れると香ばしさup。

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🥥ココナッツオイル

ココナッツオイルに出会ったのは、インドネシアの家庭の朝食。肉そぼろの料理のおいしさに感動してじたばたしていたら、瓶に入った透明の液体を見せてくれて、なんだかわからないけれどその液体が自家製ココナッツオイルだった。この家で作り方を教わって以来、日本でも何度か作っている。レシピはこちら。

インドネシアは、世界一のココナッツ生産国。現地ではココナッツの実を割って殻をすりおろすところから始めるのだけれど、日本でやるのはあまりに非現実的なので、近所のスーパーでココナッツミルク缶を買ってきた。

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鍋にココナッツミルク缶を丸ごとあけ、触らずかきまぜず放置して、加熱すること30分強。ぷつぷついって、うまくいくと、透明な液体と白いもやもやに分離してくる(これがなかなかうまくいったりいかなかったりする)。

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さらに加熱を続けると、白いもやもやが凝集して茶色いそぼろになり、液体はすっかり透明になる。この頃にはもう、ココナッツアロマに部屋中が満たされている。

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濾して分離したら、ココナッツオイルの完成。この残ったひき肉そぼろ部分がなかなかにおいしくて、ほのかな甘味とこんがりしたタンパク質感がある。これに唐辛子やトマトを加えて炒めたものが、実は朝食の"ひき肉そぼろ"の正体だった。肉じゃなかったのだ。

まとめ:ココナッツオイルは、ココナッツミルクを煮詰めることで作れました。副産物のそぼろはご飯が進むおかずになる。

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(副産物に興奮しすぎて、主役を間違えましたの写真)

油は、作れる。作る過程がおいしい。

油って、工場のような機械がなくても、鍋一つで煮詰めるだけでつくれるんだ!!というのが私には大きな感動でした。

たしかに、オリーブオイルやごま油などの植物油は、圧搾や抽出のプロセスがあって家庭でやるのはなかなかハードルが高いけれど、ここで紹介した三つの油のように煮詰めたら作れる油もあって、これを自家製するのが最高に幸福なのです。完成品の油のおいしさももちろんなのだけど、「作っている最中の香り」「副産物が味わえること」が、絶対に店では買えない特権的なおいしさなので、ぜひ一度つくってみてほしいです。きっと幸せになれるはず。

※三つの中ではラードが一番失敗しにくいのでおすすめです。次にギー。ココナッツオイルは上級者向けです。
※水気がとんでいくとき油が飛びはねるので、片付けはちょっと大変です。心積もりしておいてください。。

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