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ツバメと娘が教えてくれた、生きるということ

今年もツバメが巣を作った。
我が家の玄関を出ると、ツバメの夫婦に会うことができる。
卵はまだ孵っていないようだ。

可愛い雛に会えるのを、6歳の娘は楽しみにしている。

青い光

去年のことだ。
我が家の向かいのお家にツバメが巣を作ったことを、娘は、それはそれは喜んだ。

毎日ツバメに挨拶をし、
幼稚園では先生に自慢し、
雛が生まれたときなんて飛び上がっていた。

毎日せっせと餌を運ぶ親ツバメ。
毎日大きな口を開けて待つ雛。
毎日それをニコニコと見る娘。

そんな折、第二子妊娠中だった私は、切迫早産で入院した。
お見舞いに来てくれた時も、娘は日々育つ雛の話を聞かせてくれた。

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無事退院し、娘と過ごす穏やかな日常が戻った。
ツバメの雛も大きくなっていた。

そんなある日。

娘と散歩から帰ってくると、何やらご近所さん達が集まっていた。
雰囲気から、何か悪いことが起きたことは予想できた。

近くに行くと、地面に羽が散らばっていた。
頭上には、悲鳴のように泣き喚くツバメが2羽。





カラスだった。

カラスがツバメの雛を食べてしまったのだ。
ショックで言葉にならなかった。

娘が受けたであろうショックを受け止める前に、私が沈黙を破り、「ひどいよ、、、カラス、大嫌い。食べちゃうなんて。」と呟いてしまった。

すると娘は私の右手をつなぎ、こう言った。 

  「わたしもカラスは好きではないよ。でも、わたしも、お母さんも、牛さんや豚さんを食べるよね。ツバメさんだって、虫を運んでもらって食べていたよ。カラスだって、生きるために食べたんだよ。命の重さは、みんな、同じだよね。」

私は、繋いだ手をぎゅっと握り返して、
「そうだね。命の重さは一緒だね。」と答えた。

それが精一杯だった。

その夜、私たちが夕ご飯に何を食べたかは覚えていない。
でも、命をいただいたから、私たちは今日も生きている。

程なくして、私は丸々とした男の子を産んだ。
娘は出産に立ち会ってくれた。
弟が産まれたその瞬間を、小さな二つの目で見てくれた。

一日のはじまり2

あれから1年。
今年のツバメはあの時のツバメだろうか。

今年は外からは見えない死角になっている場所に巣を作ったので、なかなかに卵の様子までは見えにくい。

娘は嬉しそうにツバメを見守っている。
今年は弟と一緒に。

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