京都暮らし、桜を探し求める旅 Vol.3
満開を迎えた桜が、少しずつ散り始めている。ほんの少しの風が吹くだけで吹雪のようにピンクの花びらが舞って、その姿がとてもきれい。
第3弾となる今回は、京都市内の北側を巡った桜の旅について記録したい。私の家から半径3キロ以内にある、桜の世界。しみじみと、このエリアで暮らしをはじめてよかったなあと目を細めたくなるような、そんな景色が広がっていました。
賀茂川沿いの桜
鴨川は出町柳のデルタを超えると、西側が賀茂川、東側が高野川に分岐される。私が住んでいるのは、賀茂川の方。四条から三条あたりの鴨川とはまたひと味違って、川沿いに建物がないからか、とても空が高くて開放的だ。
京都に暮らし始めてからというものの、2日に1回は賀茂川沿いに散歩に来ていた。だからいつもの散歩の延長で歩いていると、あまりにもきれいでボリュームのある桜並木がいきなり目に飛び込んできて、驚いたものだ。
川沿いにずらっと並ぶ桜の木が織りなすピンクの世界といったら…!どこまでも続いているようで、なんだか足を踏み入れると戻ってこれなさそうな気がするほど、圧倒された。
ひとまず、この世界に足を踏み入れる。桜の木が揺れるたびに、足元の影も揺れる。上をみると太陽に反射して透ける桜の花びら、そして青空の組み合わせに、思わず目を細めてうっとりとしてしまった。
上賀茂神社
いつもの散歩コースからは少し外れているので、今の家に引っ越してきてからは初めて立ち寄った、上賀茂神社。京都の寺社仏閣のなかでも有名な神社だけど、広い境内には木や小川があって自然が豊かで、散策するにもぴったりの場所だ。
鳥居をくぐって中に入ると、真っ先に大きなしだれ桜が目に飛び込んできた。少し散り始めだったけれど、それでも十分すぎるほどきれいだ。
重要文化財にも指定されている真っ赤な楼門と桜のコントラストもいい絵になっていた。桜を見つつもしっかりと参拝をして、境内にただよう粛々とした空気を味わう。
京都府立植物園
上賀茂神社から京都府立植物園へ。途中で気になっていたパン屋さんに立ち寄って、ランチ用のパンを購入。植物園の桜もちょうど満開!こんなに広くて自然たっぷりの場所、入場料200円で入れるなんて…。散歩がてら季節の花を見にいくのもいいかもな
桜が目当てだったものの、園内に入るとすぐの場所にチューリップが咲いていた。こんなにも色がハッキリとしたチューリップを間近で見るのは初めてかもしれない。というか、チューリップをまじまじと見る機会、なかなかなかったなぁ。赤と黄色とピンク、それぞれの鮮やかな色が、周辺に明るい空気をもたらしていた。
そして、桜。園内には「桜林」と呼ばれるエリアがあって、まさに林のように桜の木々が連なっていた。中に入ると空が見えないほどに、ピンクの木々に覆われた。
少し濃いピンクのしだれ桜がきれいでたまらず、この景色が1年の内たった1週間ほどしか見れないなんて、と悔しい気持ちになってしまう(きっと1週間しか咲かないからこそ、桜はこんなにも愛されているんだろうけれど)。
園の中央に広い広い芝生広場があって、そこに腰かけて先ほど買ったパンを味わう。
小さな子どもたちが追いかけっこをしていたり、グループで写真を何枚も撮り合っていたり。それぞれがそれぞれの楽しみ方で、桜の美しさを味わっているんだと思うと、なんだか嬉しくなる。眠たくなってしまうほどの心地のいい空気の中、私はパン片手に、本を読む。
半木の道
植物園を後にして、パンをおかわり購入、テイクアウトのアイスコーヒーを手に、次の目的地へと向かう。次は、植物園の西側に続く「半木の道」と言われる散歩道へ。
70本以上ものしだれ桜(ヤエベニシダレザクラというらしい)が、トンネルのように続いていく。しだれた桜の枝越しに見る賀茂川もきれいで、この平和で何気ない景色を見られる時間を、ずっと大切にしたいと心から思う。
ここはいつもの散歩コースとして、桜がない時期も何度も通っていたけれど。きっと、地元の人にとっては何気ない散歩やジョギングコース。桜が咲くだけでこんなにも華やかに、非日常感のある世界になるなんて。そして、改めて日常の延長でこの景色が見られる幸福感をひしひしと味わう。
この心地よさの余韻を引きずったまま、鴨川沿いにシートを敷き、先ほど買い足したパンとアイスコーヒーを。
こんな半径3キロ内のミニマムな暮らしの中で、こんなにもささやかな幸せを感じられるなら、京都で暮らしをはじめてよかったと、心から思うのだ。
この日は、北側にしぼって桜巡りをした。たった4時間くらいで、しかもバスや電車を使わず歩きだけで、この景色たちが見られる。たった半径3キロの中で見られる世界。日常と非日常が混ざり合って溶け合う、そんな暮らしを選び抜いた私に、拍手を送りたい。そんなことを素直に思えてしまうくらい、家の近くの桜の世界にうっとりと魅了されてしまった。
来年の桜が咲くころには、もしかすると他の街に引っ越しているかもしれない。でも、そうだとしても、この日の、この街での、この心地よさを忘れることはないんだろうな。
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