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恋するマーケティング〜学校イチのモテ男に好きっていわせたい!〜②

「白石さーん、在庫チェック終わりましたー」
「あぁ、桜井さんお疲れ様。」
白石さんは、購買の冷蔵庫からカフェオレを日和に渡す。
「わぁ、ありがとうございます!」

「うん、今日も廃棄なしだね。素晴らしい」
白石さんは、パソコンのキーをタンッと叩く。
「明日の発注は・・・そうだな、、、3年が4限が体育だから・・・」
ブツブツ言いながら白石さんは、パソコンに何やら打ち込んでいる。

日和は、カフェオレを飲みながら、掲示板に貼ったポスターを見つめる。
もうすぐ日和が住む商店街街の夏祭りだ。
日和の好きなたこ焼きパンもこの商店街の昔ながらのパン屋さんからやってきている。
祖母の営む呉服屋「さくらい」と菊さんの営むパン屋さん「菊ぱん」は全盛期の頃は、この商店街の2トップだったと祖母は自慢げに話す。

子供の頃から、菊さんのパン屋さんで、日和は育ってきたと行っても過言ではない。

とはいってものの、菊さんももう86歳で今年の夏でお店を閉めようとしている。

「白石さん、夏祭りの日、購買部お休みしてもいいですか?
菊パンのお手伝いに行きたくて」

「うん、良いけど桜井さんは菊パンさんと知り合いなの?」

「はい。私の家、港町商店街なんです。菊さんと祖母が幼馴染で・・・菊さん今年でお店閉めるっていうから。お世話になってるから・・・」

「ええっ、そうなの?まいったな・・・じゃあ、新たなパン屋さんを探さないとなぁ・・・」

「菊さんのパン本当に好きなのに・・・息子さんが市内にいて、パン屋さんをやってるんですが、商店街のシャッター街じゃパン屋さんやっても意味がないって帰ってこないらしくて」

白石さんは、軽く頷く。

「まぁね、港町商店街は売れないかもだけど、ここの購買部ではダントツなんだけどねぇ。市内からの輸送コストを考えると、息子さんのところからは仕入れることができないし。菊パンさんが撤退するとなると、うちにも打撃がくるなぁ」

「それに、菊さんひとりで寂しそうで・・・息子さんのところに行く話もあるけども、そしたらおばあちゃんも悲しんじゃう。。。」

白石さんは、ちょっと考える。

「OK,じゃあ桜井さん、菊パンさんの撤退を防ぐための戦略会議をしようか。」
「ええっ、そんなことできるんですか?」

白石さんは、パソコンで菊パンの売上データを開く。
「桜井さんは、菊パンの推しポイントは何だと思う?」
「それはやっぱりたこ焼きパン・・・たこ焼きパンってどこにもないじゃないですか!」
白石さんはくすっと笑う。
あれ、白石さんってこんなふうに笑うんだ。
なんだろう・・・どこかで見たことある気がする・・・

「OK.OK、桜井さんはたこ焼きパンの思い入れが強いわけね」
「あーそれは・・・」

日和は、商店街のお祭りを思い出す。
港町商店街のお祭りは年に1度だが、この日ばかりは商店街は人でごった返す。
日和は5歳までは市内に住んでいた。
両親の仕事で忙しいときは、祖母の家に預けられていたのだが、お祭の日は祖母は着付けで忙しい。
日和はつまらなくなって家を出た。

案の定迷子になって、お腹がペコペコの状態の時に、中学生くらいの男の子に助けてもらったのを覚えている。
男の子は持っていた袋からごそごそとコーラとたこ焼きパンを日和に差し出した。

カラカラに乾いた喉に、いつもは飲まない、シュワシュワのコーラがしみわたり、たこ焼きパンのしょっぱいソースの味がお腹を温めていく感じが今でも残っている。

「ほらっ!やっぱり暑くなるとしょっぱいものとか、喉越しのいいもののほうが食べやすいじゃないですか!」

白石さんはクククッと声を立てて笑う。

「日和ちゃん、データを見ようか」
急に名前で呼ばれて、ドキッとする。

「ここみて。今ね、たこ焼きパンの通常仕入れは4個。で、完売してるわけなんだけど、これを20倍にするにはどうしたらいいか考えてみて。」

「20倍って80個ですか?」

「そう、うちの全校生徒は480人。そのうち弁当派は80%の約380人。残りの20%のうち7%。つまり30人位が購買学食利用者なわけ。
他の12%が食べないとかコンビニ利用者ね。だから60人弱。
つまり弁当以外の90人が、購買を利用する可能性はあるわけ」

「80個のたこ焼きパン・・・」

「桜井さん、これなーんだ!」
白石さんは、人差し指と中指で一枚の紙切れをピラピラする。

「もしこれできたらね、奏くんのライブチケットをプレゼントしよう。」
メガネの奥から、白石さんが挑戦的な目を向ける。
「やる?」
「はいっ!」
このパターン前にもあったような・・・
ちょうどその時白石さんのスマホがなる。
「じゃ、明日までに企画考えててね」
白衣をひるがえして、白石さんは行ってしまった・・・

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