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見上げればいつも四角い青空#12 雨待ち顔の紫陽花を愛でる

5月末から7月中旬にかけて、日本は、梅雨の季節に覆われる。
傘が手放せない日々が続き、温度と湿度が高く、感触的には「さらっ」とはゆかず、「びちょっ」とか「じめっ」とか、そんな言葉がぴったりハマる。

この季節のそんな感触を好ましいとは思わないが、ボクがこの季節を楽しみに待つようになったのは、雨に濡れる紫陽花を見ることのできる幸せを知ったからだ。

紫陽花には雨雫がよく似合う。

鞠のように咲く花そのものがキレイなのはもちろんのこと、緑の大きな葉に蝸牛でも乗って居ようものなら、なおよい。
詠めるものなら歌でも詠んでみたい!そんな気持ちになる。

東京に住み始めたころ、梅雨の季節に初めて鎌倉を訪れ、長谷寺を詣でた。
天気予報では行楽日和の晴れだったが、予報は外れ、当時のボクにとってはあいにくの雨空だった。
しとしとと降る雨の中、長谷寺の本堂に続く坂道を上りながら見た紫陽花がとてもキレイだったのをよく覚えている。
この日が、予報どおり、やっと訪れた梅雨の晴れ間だったとしたら、子どものころは大きらいだったこの季節を、こんな風に待つようになることはなかったように思う。

紫陽花が不思議なのは、どんなに近くに並んで植わっていても同じ色の花を咲かせないことだ。土壌の酸性度によって花の色が変わるといい、一般に酸性ならば青、アルカリ性ならば赤になるという。

ボクが感動した長谷寺の本堂に続く坂道に咲く紫陽花は、青、紫、ピンクとグラデーションの量が豊かな姿を見せてくれるし、悟りの窓で知られる明月院は、"明月院ブルー"とも呼ばれる鮮やかな青の紫陽花で有名だ。

この季節に特別な感情を抱くようになってから、東京の街中に咲く紫陽花にも目が留まるようになった。
梅雨の季節に紫陽花を見かけると、「びちょっ」とか「じめっ」とか、そんな感触で沈みがちな気持ちに彩を与えてくれる。

ボクにとっての梅雨の季節は、雨待ち顔の紫陽花を愛でる幸せな季節でもある。

最後まで読んでいただきありがとうございます。同じようでいて同じではない日々の生活の中で、感じたことや考えたことをスケッチしています。よかったらまた立ち寄ってください。

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