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渦巻き


思考を邪魔するためのうるさい音楽を聴くのにも疲れた。
聴いている音楽と本人の人格にはなんの相関もないことは分かりきったお話で、大好きだった純愛ソングの背景にお前がぼやけてイライラしてしまう。
人に嫌われていく感覚、じわじわと直感が線をなして繋がっていく感覚、その感覚を目の当たりにする度に、私は脆く脆くなっていく。
ひたすら衝撃に耐えながら壊れたパーツを拾い集め、ひとつひとつ丁寧に修復するより、小さな衝撃で簡単に壊してしまって新しいひとつをつくるほうが簡単だ。



テセウスの船ってやっぱりテセウスの船だと思うんだよね。だって私はずっと私だし。君もずっと君だから。私はテセウスの君さえ愛せる自信があったりするんだけど、君はこんな私を嫌うかな。



今日もなんだか右耳だけがうるさくて
右耳を下に寝る。
横になってるとどっちが上かわからなくなってぐるぐるする。
小さい頃に繰り返し見てた渦巻きの夢を思い出す。ただひたすら黒の渦巻きが私を飲み込む夢。不思議と怖くはなくて、むしろその永続性は私を安心させた。



瞼の裏の色は赤のような黒だと思っていたが、ただの黒でひどく落胆した。
黒は少ない方が良い。
黒は本当の色だから、怖い。
どうせ死んだらみんな黒になる。
怖い、怖い、怖い、怖い。
ピンクが似合うあの子も、黄色が好きなお前も、緑が好きなアイツも、赤が好きな私だって、死んだら等しく黒になる。
眉を剃った時、正解だと思った。
髪を染めた時、もっと正解だと思った。
自分から黒が減ると嬉しい。
前髪を切る、視界の端に金色の髪が踊る。
高貴な存在になった気分だ。嬉しい。嬉しい。
本来の自分から外れるほど、黒から遠ざかるほど、私は生きていると思う。



私の内側は真っ黒だと思ってたけれど、
ちょっと切り口を入れて覗きこんだ先には
赤が広がっていて、安心した。
ただ赤の渦巻きは途切れ途切れでつまらない。

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