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首吊りと生活

首を吊ろうと思い、紐ではなく金具を買い、
私の背よりだいぶ高い棚の
1番上に引っ掛けて首を通した。
その輪の先に光が見えるんだと思っていたが、
輪っか越しに見えた景色は
私の絶望とそっくりそのまま澱んでて
ただ、空気がまずいな。とだけ思った。
力を抜いて首のみで体を支えてみると
思ったよりも大丈夫で
首は意外とよく伸びるな、
と他人事のように感じ、笑えた。
そうこうしているうちに息が苦しくて
もう空気の味は感じられなくなり
それがとても残念な事だな
とぼんやり考えたことを覚えている。
生きたいと思ってしまったのだろうか、
自分を守る反射のようなものなのだろうか。
私はじたばたともがき、足を伸ばし、
つま先立ちで身体を起こす。
途端に出る咳。冷や汗。冷や汗に似た頬をつたるしょっぱいもの。
私は未だに生きている。
反射のようなものが私を生かしているのか
自分の意思で生きているのかはもう分からなくなっているが、生きている。
そもそも自然死なんてものは
合法的な自死であり、
生活こそが、私をじわじわと死へと導く
消極的な自死なのだから
深く考える必要も無いのかもしれない。
今日は雨が心地よい。
重い頭がちょうど良い。
多少濡れても良いのだ。
これは生活なのだから。
生活は続く、どこまでも

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