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横溝正史原作:市川崑監督:「石坂浩二の金田一シリーズ」を語る回

ええっと・・・これまでの投稿と少し(いや、結構か!?)趣向の異なる記事となるかも知れないのですが、まあ読んでやってつかぁさい。

もう結構前になりますが、異国の地で学生生活を送っていた私は、自分が「この土地においては外国人であること」を痛感する場面に出くわし、幾度かへコむことがありました。人種差別的な言葉をかけられたり、待遇を受けたり・・・も、まぁありましたし、お国柄が裏目に出てしまうといいますか、日本人ならではの謙虚さやシャイさが邪魔をして、大損をしたことも何度か。そんな、所謂「悔しい」思いをしたときに、傷心を癒してくれたのが何故だか不思議に市川崑監督の映画「石坂浩二の金田一シリーズ」だったのです。

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DVDも出ているそうな。・・・文字が並んでいるだけなのに、なんでこんなこわいん?

ある夜、憂鬱な気持ちで、故郷ジャパンにどっぷりつかって癒されたく、でも数少ない日本人のお友達とは予定が合わなく今すぐなんて会えない、時差の関係上遠い日本の家族や友人とは話すこともできない・・・手元には、奮発して買った日本のビールと日本のインスタントラーメン(国内ではなんてことなく安く手に入る品物も、倍以上の値段がついていました)はあるけれど、とっても心細い。仕方ないから日本のドラマが見れる動画サイトでも開いてみるか・・・・・・・お、なんだこれ。期間限定無料で金田一の事件簿のシリーズ配信中・・・!

うれしい

なんですと!ミルッキャナイ!!

面白すぎて、すべてコンプリートしてしまったのでした。

観賞後の私のマインドときたら、すっかり日本人としての尊厳を取り戻していました。「どんなもんだい、日本人ってこんなにコワイんじゃで。日本のコワさはスゴイんじゃで。エレガントで、ひたひたしていて、欧米のガオーやドヒャーやドーンバーン的なアレソレがなくったって、確かにシッカリどっしりコワいんじゃで。まいったか!!!!!!!!!!」的な謎のパワーにみなぎって、ついにはビールにもラーメンにも手をつけないまま、爆睡していたのでした。

寝相悪い

日本人のプライド(?)を取り戻して安心の大爆睡


このシリーズのすごいところは、「ただコワイ」というわけではなく、そこには確かに計算されつくした芸術があるのだというところです。映像に関してはまったくの素人な私にでも、ひとつひとつのシーンが素晴らしい絵の連なりであるということが分かります。こんな最強の作品たちがふるさと・ジャパンでつくられたのだ・・・!という事実は、当時の私にとてつもない勇気を与えてくれました。

※以下からはネタバレも含みますので、ネタバレ嫌!という方はご視聴後、ごらんください。視聴前に知っていても楽しめる程度のネタバレではありますが、念のため・・・※

『犬神家の一族』(1976年)

『悪魔の手鞠唄』(1977年)

『獄門島』(1977年)

『女王蜂』(1978年)

『病院坂の首括りの家』(1979年)

と観て行くと、同じ俳優が何度も出演しており(しかし、金田一とは初対面の設定 or 役柄が異なる)、4作目の『病院坂の〜』あたりでは、もうなんだか同窓会的なテンションになってきてしまいます。

証言のキーとなるバァさんがおなじみのあの方だった時には、「ああまたお会いできましたね!ウフフ!」的な嬉しさもこみ上げてきてしまいました。そんなところも、面白いのですよねえ。

加藤武氏演じる等々力警部なんか、登場しておなじみの台詞や仕草をするのを見ると嬉しくなってしまいます。

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コワーい顔なんだけど、ナイスキャラでユーモアたっぷりの警部

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等々力警部にコテンパンに言われてしまうこちらの地元の警察さんのキャラもめちゃめちゃ良かった・・・また、この人の妹さん役がすっかり視聴者におなじみのあのマダムなんだからたまりませんがな。(「女王蜂」より)

一番のお気に入りを選ばせていただくと、残酷さも切なさも悲しさもナンバーワンですが、和みのシーンも多い4作目『病院坂の首縊りの家』ですね。金田一の相棒(?)役で出演する、若き日の草刈正雄氏も最高。ファンの中には賛否両論あった役柄だそうですが、私はこの人がいたおかげで、全体にユーモアが加わってとても良かったのでは?と思います。

金田一と刑事の人情溢れる部分がにじみ出ている回でもあります。

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佐久間良子さんの信じられないくらいの美しさもみどころです!(「病院坂の首縊りの家」より)

全作品を通して、事件の発端となっているのは「人間の欲」。欲をコントロールできず、動物むき出しの行動をとってしまう人間たちの悪事については、昨今のワイドショーでもよく取り上げられている通り、「今も昔も・・・」てな感じなのでしょう。でも、一般的に「それらはダメなこと、わるいこと」といわれても、一体その先になにが起こるの?なんで悪いこととされてるの?っていうのは、結構みなさん曖昧な認識なのかも。だからなのか、あまり深く考えずに欲のままに行動してしまう人間は結構多い。

そこでですよ。「一時の快楽や欲求を満たす行為によって、どのように不幸の連鎖が始まるのか?「人の心をかき乱すということは、どんなに恐ろしいことなのか?」を、横溝作品は教訓として教えてくれるんですよね。そこが、単なるホラーとは訳が違うのです。とってもリアルな、「もしかしたらすぐそこにあって、ずりずり引きずり込まれてしまうかもしれない闇」を、その恐ろしさを、具体的にみせてくれるのです。人間が私利私欲に溺れてしまった「先の世界」を、説明してくれるのです。これはね、自分をコントロールできないような人は知ったほうが良い世界なのかもと思いますよ。

そういった意味では、わかりやすい教科書のようでもあるのかも知れません。

そして・・・このレビューを今の時期に書いているのにはワケがあります。個人的に、横水作品は夏が似合う!日本の夏に、ホントーによく合うのです。

おばけ

日本ならでは、のコワさってあるよね。

・・・長々と好き勝手語ってしまいましたが、言いたい事はただひとつ!

>> 是非、未視聴のそこのアナタ、視聴済みのアナタも、ジブリやポケモン、任天堂と同様日本が誇るこのミステリーを・・・この夏にこそご覧アレ! <<


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