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長崎の揚げ物、ゴウレンとヒロウズ

 「ナシゴレン」というインドネシア料理があります。日本の魚醤に似た調味料やニンニク、唐辛子、香菜などを使った、いかにも東南アジアらしい香り漂うチャーハンです。「ナシ」は、ごはんのことで「ゴレン」は油で「炒める」とか「揚げる」という意味があるとか。インドネシアには「ミーゴレン」という焼きそばもあって「ミー」は、中華めんのことをいうそうです。

01ナシゴレン

ナシゴレン

 ところで、長崎には「ゴウレン」と呼ばれる郷土料理があります。『長崎事典~風俗文化編~』(長崎文献社刊)によると、それは天ぷらに似たもので、ハモを骨切りにしたものを、酒、醤油、砂糖を合わせた調味料(ネギと生姜のみじん切りも少々加える)の中にしばらく漬け込んで味をつけ、小麦粉をまぶして油で揚げたものをいうそうです。
 長崎の郷土料理を紹介したほかの本を見ると、揚げる具材は、白身魚のほか、鶏肉を使っていたりします。長崎でいう「ゴウレン」とは、どうやら「揚げ物」のことをさすようなのです。

02調味料に漬け込んでから揚げるゴウレン

調味料に漬け込んでから揚げるゴウレン

 意味だけでなく、音も、ナシゴレンの「ゴレン」に通じる長崎の「ゴウレン」。その昔、オランダ東インド会社が、拠点のひとつであったインドネシアを経由して日本へ来ていたこと、また家康の時代に東南アジアと盛んに貿易していたいわゆる朱印船貿易などが、長崎へ「ゴウレン」が伝わるきっかけになったのではと想像したりします。
 前述のとおり、「ゴウレン」とは揚げ物を意味し、その実態は、「魚の天ぷら」や「鶏肉の唐揚げ」と、ほとんど変わらないものです。60~70代の長崎の主婦の方々に「ゴウレン」について尋ねると、耳にしたことはあるが、どんな料理かを知らないという方がほとんどでした。
 地元で意外にも知名度が低いのは、「魚の天ぷら」、「鶏肉の唐揚げ」という言い方に馴染んでしまっているからかもしれません。長崎の料理屋さんなどで出している「ゴウレン」も、「鶏肉の唐揚げ」と言っても全く違和感はありません。

03鶏肉のゴウレン

鶏肉のゴウレン

 揚げ物の原型ともいわれる「ゴウレン」。長崎の揚げ物には、これまた変わった呼び名の「ヒロウス」というものがあります。これは、「飛龍頭(ひりゅうず)」とも呼ばれ、「がんもどき」と同じものです。「ヒロウス」の語源は、一説にはポルトガルの「filhos(フィリョース)」というお菓子(小麦粉と卵を混ぜてつくった生地を、油で揚げたもの)に由来するといわれています。江戸時代に著された「長崎夜話草」(西川如見)にも「ヒリュウス」で登場しています。
 「ヒロウス」は、水気をしぼった豆腐に、ニンジン、ゴボウ、キヌサヤ、キクラゲなどのみじん切り、すった山イモなど混ぜて生地をつくり、丸い形に整えて揚げたものです。以前、中国伝来の普茶料理(肉類を使わない精進料理のこと)のメニューのひとつとして、長崎の唐寺でいただいたことがあります。ということは、ヒロウスのルーツは中国なのでしょうか?

05ヒロウスの具材。ヘルシーです

ヒロウスの材料(画像上から時計回りに、水けを絞った豆腐、キクラゲ、ニンジン、ヤマイモ、ゴボウ、真ん中がキヌサヤ

06ヒロウス。おでんにも欠かせません

ヒロウス 長崎ではおでんにも欠かせません

 長崎の郷土料理の歴史をたどると、途中で東西が入り交じり、真相がわからなくなってしまいます。それもまた、長崎らしさなのかもしれません。

株式会社みろく屋
 みろくやは長崎のソウルフードであるちゃんぽん・皿うどんを代表商品として、長崎の「おいしい」を全国に向けて発信している企業です。
「おいしい笑顔」は「幸せな笑顔」。私たちはお客様の「おいしい笑顔」のために日々努力し、前進し続けてまいります。
株式会社みろく屋ウェブサイトhttps://www.mirokuya.co.jp

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