企業と倫理

「企業倫理」とは何でしょうか。「企業」と「倫理」という言葉の意味(語源)からその答えを導き出す糸口を探してみましょう。

「企業」を訓読みすると「業(わざ)を企てる」と読むことができます。「業」には「利益を生む方法と実践」「なんらかの意図をもってなした行為」という意味があります。ということは、不祥事を起こす企業は、そのような結果を導く意図的な行為(業)を「企」てたために、不祥事を起こすと考えることができます。

このように「企業」という語源からも「企業がどのようにあるべきか」ということを窺い知ることができます。

一方「倫理」とは、「法令遵守(コンプライアンス)」という意味合いが強い言葉として使用されがちですが、元々は「人を倫(まと)めるための道理」「整理された人間同志の関係」という意味があります。つまり、「倫理」とは人間精神の「徳」によって支えられている高潔心のことで、人間の行動を抑制するルールと捉えて良いでしょう。

「企業」と「倫理」の語源から判るように、「企業倫理」とは「利潤や業績を重視するビジネス価値」と「人間による善なる行為を重視する倫理価値」の二つの価値が均衡したところにその意味を見出すことができます。

ビジネス価値と倫理価値を組み合わせると四つのパターンがビジネスシーンで考えられます。その四パターンとは、以下のとおりです。

① 倫理的に善なるビジネスを実践して、利潤を生むビジネス
② 倫理的に悪とされるビジネスを実践して、利潤を生まないビジネス
③ 倫理的に良いビジネスを実践しているにもかかわらず、利潤を生まないビジネス
④ 倫理的に悪とされるビジネスを実践しているのにもかかわらず、利潤を生むビジネス

①は理想的な<ビジネスモデル>ですから、特に問題はありません。また、②についてもビジネスとして成り立たないため、特に社会的被害について心配することはないでしょう。

問題は③と④です。非倫理的なビジネスで利潤を出す企業や、倫理的に正しいビジネスモデルを展開し社会的貢献をしているにもかかわらず利潤を生み出せない企業が、どのようにしたら①の状態でビジネスを実践することができるでしょうか。

「企業倫理」とは、①のビジネスモデルになるための正しい企業フィロソフィーを考え、実践するものです。「企業倫理」はまさにその内容が実践と直接結びついてこそ意義があります。

企業倫理を体系的に考えてみると、大きく分けて三つの側面があります。この三つの側面は、どれか一つ欠けることなく、相互に影響し合いながら補い合う関係があってはじめて企業倫理は成り立ちます。

① 企業倫理の理論(規範、原則、理由)
② 企業倫理の制度(内規、民間支援、公的支援)
③ 企業倫理の実践(意思決定、制御システム、チェック機能)

この三つがそれぞれ良い関係を保ち機能すれば、倫理の理論だけが一人歩きして実践の伴わない事態になることはありません。また、非倫理的経営に対して自主的制御が働くと同時に、他からの支援を得て更なる倫理の強化が可能となります。


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