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水族館を泳ぐ

ゆらゆらと絡み合いながら流れていくクラゲの足
キラキラと輝きながら流れていくサカナ
誘うようにひらひらと流れるイソギンチャク

平和、平和、平和である。

分厚いガラスの平和な世界を覗き見る。
あぁ、まるで

組織みたいだ。

毎日自分の水槽で息をする。
同じ時間に起きて、同じ時間の電車に乗る。
見知った人々に挨拶をして、
月の業務が始まる。
隣の水槽には何がいるのか知らない。
大きな海を知らない。
見えなくなって見えなくなって

でも知る必要なんてあるのか。
ここにいれば、
餌を与えられ、天敵に襲われることもなく、
見知った魚と共にその一生を終える。
危険な好奇心はだんだん流されていく。

人間たちがこちらを見ている。
何を考えているんだろう。
毎日毎日いろんな人間が集まってくる。

あの人間肉付きがいいなぁ。
このタコうまそう。
この人間は執拗にガラスを叩くなぁ。
あのサカナキラキラしてきれい。
大きな人間と小さな人間が繋がっている。

「ねぇママ、くらげってずーっとぷかぷか浮かんで、何考えてるんだろうね。暇にならないのかな。」
「クラゲには脳がないからね。何にも考えてないんだよ。」
「ふーん。そうなんだ。」

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