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【コロナ暇】37歳の元サブカルバンドマン会社員が語る、アラフォー独身男性の休日の歴史

外出自粛のゴールデンウィークが始まった。ただ、ゴールデンウィーク前から4月の土日はほぼ外出自粛だったので、部屋の掃除はやり尽くしたし、サブスクの映画もめぼしいところは見てしまった。満たされていない欲求は、おそらく自己承認欲求くらいだろう。なので、自分のための文章を他人に公開することにする。

簡単にプロフィールを紹介すると、僕は今37歳の広告営業マンで、独身男性だ。稼ぎは、アラフォーの営業なり(今後はわからないが)。独身だから、食事や飲み代には困らない。趣味は友人との飲み会と、音楽と、近所の音楽バーで音楽を聞きながら飲むこと。飲み会はオンラインで実現しているが、バーの方は閉まってしまった。大学生の頃はバンドサークルに入っており、その流れで社会人になってからもしばらくは続けていたが、今はやめてしまっている。

●サブカルバンドマン大学生の挫折

大学生の頃、僕は音楽を軸足にした、小さなサブカル野郎だった。The ClashやGeneration Xなどの初期パンクが好きだった。中野や高円寺のライブハウスに入り浸り、パンクやハードコアのみならず、ダブ・ブルース・ファンクなど、様々な音楽に触れた。自分でもライブをしたし、たくさんの友だちを作った。その多くが「人と違うことに価値を見出す」人間で、僕もその中の一部だった。ここでいう「サブカル野郎」とは、そういった意味だ。

サブカルクソ野郎
http://suugayuuuu.hatenablog.jp/entry/2018/02/10/022705

サブカル野郎という言葉自体は、既に何十年も前から対象化され、揶揄され、忌み言葉として知られてきたものである。ただ一方で、音楽・映画などの趣味を持つ、高校のクラス内ヒエラルキーが不安定だった非運動部系の人にとっては「誰もが通る道」という、ある種親近感にも似たような捉えられ方もしていたと思う。

「人と違うことに価値を見出す」という競争は、受験戦争や部活の大会ほど、すぐにはハッキリとした答えが出ない場合が多い。評価が個人の主観によるからだ。「テストの成績がいい」「スポーツを頑張っている」といった明確な拠り所がない、ヒエラルキー不安定組には、それが魅力に映る。

一方で、音楽活動などをしていると、いつかどこかで、最初から「こいつはぜんぜん違う」と思わされる人に出会う。それまで、僕も周りも、頑張って頑張って違いを出そうとしてきた人間だったのに、聴いている音楽も、ファッションも、やっていることも、何から何まで他と違う。そんな人に巡り合うなどして、サブカル大学生・サブカルフリーターの灯は消えていく。よし、就職しよう、と。

そんな、特異性を目指す、実は多くの場合同質な人々の大部分と同じく、僕は友だちから2年遅れで小さなIT企業に、24歳で営業として就職した。求人広告に「あまり残業がない」と書いてあったから、即決した。「ほどほど働いて、土日は趣味=音楽を楽しもう」の発想だ。実際、さほど仕事はキツくなく、土日は休みが取れた。

その頃のバンドマンは、「就職したらバンドは続けられない」と「就職してもいくらでもやれる」の2派に分かれていたように思う。もちろん、バンドの有り様にもよるのだが、僕はせいぜい月に2本程度しかライブをやっていなかったし、「売れる」事はあまり考えていなかったので、就職しても続けていけた。あと、その頃のバイト先では既にオジサン扱いだったのが、就職したら職場では若者扱いしてくれて、そっちの方がメンタルがフレッシュになれる気がしてよかった。

ああ、できんじゃん。チョロいチョロい。そんな風に思っていた。が、甘かった。

●20代=遊び場が消えていく無常感

実は、ぼくの周りでも、就職してもバンドを続ける選択をしたバンドマンはたくさんいた。しかし、一言で言ってしまえば、20代はそうしたバンドマンがバタバタと倒れていく姿を見続ける無常の時代だった。

社会人の休日は、48時間、睡眠時間と食事を引いて30時間をどこにどう当てるか?のシビアな競争だ。平日に忙しくて出来なかった、掃除・洗濯・買い物をすれば、そのうち4時間はなくなってしまう。彼女とデートでもすれば、4~5時間は消えるだろう。

バンドは生産性の悪い娯楽だ。たとえばフットサルなら、今度の土日にフットサルやろうよ、で人を集めればいい。バンドの場合、1つライブをするにも練習が必要だ。たとえば、毎週末3時間ずつ4回練習をしてライブに臨む、など。ライブともなれば、15時頃始まるリハーサルから、夜まで拘束される。日曜日のライブなんて、既にライブが始まる前から翌日の辛さを考えてライブをすることもある。

さらなる問題は、集客だ。自分の休日と同じように、他人の休日も、30時間戦争の真っ只中にいる。知り合いの、売れていないバンドを見るために、休日の時間をわざわざ割いてくれる人間は、減っていく。同じ音楽でも、DJイベントのほうがもっと手軽で、盛り上がる。お客さんの少ないライブハウスで、まばらな拍手の中、一生やっていこうと思っていたものが、次第に何のためにやっているのかわからない演奏になっていく。そのうち、人を誘うことが億劫になっていく。

「結婚する」「田舎に帰って実家を継ぐ」「音楽に対するモチベーションが続かない」「メンバーが行方不明になった」辞める理由は、こういったものだったろうか。そんなバンドの中に、一時はメジャーデビューまで行ったバンドもいた。もちろん、自分たちのバンドだって例外ではない。結婚するメンバー、転勤するメンバー、モチベーションの問題etc...

こう言うとき、恐らくより気持ちがスッキリしているのは、辞める側の方だ。辞めることによって、自分の見ている風景や視野が変わる。今まで重荷だったバンドが、肩から降りる。辞められる側は、抗うようにしがみついてきた自分たちの場所から退場者が出るさまを、淋しげに眺めることになる。

●バンドを続けていて、よかったこと

一方で、そんな「良い時悪い時」を経験しながら、デジタルに01で判断せずに、頻度を減らしながらもみんなで工夫して時間を作りバンドを30代まで続けられたことは、社会人生活の中でも大きな勉強になった。

仕事というのは多かれ少なかれ、不可能を可能にしていくことだ。矛盾する、あるいは利害の対立する何かをまとめ上げ、「これがなければできません」と言っていたのを「こうしたらできるんじゃない?」にしていくことだ。そういった意味で、粘りや工夫を学ぶことが出来たのは本当にいいことだったように思う。

あと、もう一つ。集客の問題がない、友人の結婚式の余興のバンドは、本当に幸せな世界だった。何してもそれなりに盛り上がってくれるし。

●暇になる休日問題

さて、結婚式の第一波は、男性27歳前後、女性24歳前後、と、僕の周りの統計では出ている(実家の周りではもう少し若い)。バンドマンに限らず、20代後半あたりから、徐々に飲み仲間や遊び仲間が減っていくという問題も噴出してきていた。

社会人になってしばらくして、付き合っていた彼女と別れて以来、長い間、僕には彼女がいない。まぁあまり言い訳をするつもりもなく、シンプルにモテなかったのだ。遊び友達の減少は、休日の過ごし方に大きな打撃を与えることになる。

もちろん当然起こりうる話ではあるが、実はこれは、30代の今、毎年どんどん広がってくる「孤独感の穴」の、最初の一歩だったのだ。

僕は、毎年お盆に帰省した時、高校の頃つるんでいたメンバーと飲んでいる。毎年続けていることなのだが、これも当然変化する。思いつきで「海まで行こうよ」と、夜に車を走らせて(お酒を飲まないメンバーが運転しています)旅をしたりとか、ダラダラと徹夜で麻雀をしていたのが、いつの間にか終電よりもだいぶ早めに会が切り上がったり、30代を過ぎてから、昼間の開催も多くなった。奥さんや子供の姿もそこにはある。

もちろん、みんなで会えてるだけ幸せなことだし、奥さんや子供がいるのだって、とっても素敵なことなのだ。しかし一方で、変わりゆく仲間と、変わらない自分を、その時間で強烈に実感することになる。本音を言えば、夜遅くまで昔の仲間ノリで豪遊したい(ごめんなさい)。

大人の時間は、目的のための時間だ。時間生産性という言葉が昨今しきりに取り沙汰されるけれど、かつてのように、目的のない時間を目的がないまま一緒にいてくれる仲間はもういない。当たり前の話だが。

●サブカル野郎が続々と落ちていった「ももクロ」というアリ地獄

さて、話は大幅に変わる。

もう今はヲタ卒してしまっているのだが、30代前半、僕は、周りの結構な量のサブカル野郎が落ちていったのと同じように、ももいろクローバーZが好きになっていた。

話題の漫画『モテキ』作者・久保ミツロウ氏インタビュー(前篇)

今では映画のほうが有名だが、このマンガ版の痛さは衝撃だった。自分が抱え込んできたものを完璧に相対化し、滑稽な存在にしてくれた。と同時に、そこには「ももいろクローバー」というアイドルグループの「走れ!」が、「疲れている時のアイドルソング=麻薬」として描かれて、興味を持った。

リーマンショックとほぼ同時期に訪れた、サブカル野郎の敗北とアイドルオタクへの転換。何の根拠もなく、僕以外に起こっているかも全くわからないが「モテキショック」と呼んでいる。

同じようにドルオタ転向した友人とともに、抽選で取ったももクロのライブを見に行った時に、何名か大学・高校の、同じようなサブカル野郎の知り合いにマジで遭遇した。この頃はテレビなんかでも「あの芸能人が夢中!」といった取り上げられ方をされていたと思うが、これは僕のレイヤーでも本当にそうだった。「えー、お前がアイドル好きなの?」の連続だった。

その頃は、もうバンドも活動休止状態に陥っていた。グッズを買い、DVDを買い、地方に遠征し…30あたりから収入も増えだした時期だったので、やりたい放題だ。

サブカル男子は40歳を超えると鬱になる

こんな記事もあるが、特に独身は30を超えた辺りから兆しが出るのだろう。本来のライフステージであれば妻子を養うためにある収入を、100%自分のために使える状況から、趣味に対する投資が一線を越えるようになってくる。そして、ぶり返しで他者との溝が広がってくるのだ。

こうした趣味のことは、あけっぴろげに周囲に言っていた。周囲からは驚かれたし、●●くんがそっちに行くとは思わなかった、とも言われたが、逆にそれが楽しかった(このあたりもサブカル野郎なんだろう)。あと、少し、いい年になってきたので、サブカル野郎として持ってきたプライドを相対化して、自分を貶めたかったというのもある。

そうなると、ますます「結婚しないんですか?」とも言われなくなってくる。王道の「独身貴族」の爆誕。

その後、エビ中に流れ、軽く地下アイドルを通った後、3年程度で、何事もなかったかのようにアイドルへの熱は跡形もなくなった。

●独身男性の休日は、竜宮城である

今の今でいうと、休日はとにかく暇だ。まぁ今はしょうがないよね。

コロナがない時はどうだったかというと、仕事の勉強用の本を読んでるか、ネットサーフィンしてるか、音楽を聞いてるか、バーで飲んでるかだ。あと、最近一人旅を始めた。若い頃はクソほど興味がなかった「街ブラ」や「寺社参拝」が、なんと楽しくなってきてしまったのだ。去年のゴールデンウィークは京都に行っていた。こうして、一人でいろんな趣味をグルグル回りながら、最終的には孤独な最期を迎えるんだろうと思う。

独身の休日は一言でいうと「竜宮城」だ。いつの間にか僕は海の底に潜り、異常な割合で可処分所得を娯楽に回す。絵にもかけない美しさだ。その気になれば、若い人と同じ趣味を持って、いつまでもいつまでも、この世界が続くんじゃないかと錯覚する。一方、地上では、まっとうな人たちがまっとうに結婚し、子供を育てている。僕が歳を取らないのは竜宮城にいるだけ。地上に戻り玉手箱を開けると、一気に老いた自分に戻るのだ。僕が過ごしている世界はそう言う世界なんだ。

…という持論を飲み会なんかで語ってきたんですが、世の中というのは本当に、一筋縄ではいかないものですね。正直な話、こんな事を一生懸命書いているのですが、仕事的にも、不安はいっぱいです。竜宮城を守るのだって自分なので、日々を精一杯生きねばなりませんね。

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