他人を見下してはいけない、とする道徳的テーマの実態についての雑記


他人を見下してはいけない、とする道徳的思想を目にすることは、日本に暮らす人々にとって日常的な光景かと思います。
例えば、学歴。
例えば、人種。
例えば、障害。
例えば、能力。

天は人の上に人を造らず」とする俚諺に縋ったところで、人間にははっきりとした差が厳然と存在しています。
その差異について言及する事が善なのか悪なのかを語るならば、善と悪の定義をしなければなりません。

一般的な道徳上で悪とされる行いに「他者を不愉快にさせるもの」が挙げられます。見下すことは悪だとする言説は、恐らくこれに当てはまっているのだと考えますが、見下しちゃダメだと言われて不快になる人の気持ちはどうなるのでしょうか!それって、悪なの!?
…これは別に、意地悪な考え方や突っ込み、論破的な試みではなくて、自分と違う考え方を持つ人間への配慮、思い遣り、優しさの話になります。

自分に取って好ましい性癖の絵が、他者に取って不快であるケースならば珍しくありませんし、その逆もまた成立し得ます。
その時に「他者の気分を害するような絵を描くのはやめた方が良いよ」と切り出すのは、自分自身の好きな何かについて同じように迫害を受ける構造を生み出してしまうのです。


では、見下すこと…差別的な行いについてはどうなのか。
場所に根差したモラルや、自分の大切な人を含むような差別の場合、極力すべきではないとするのが私の考えになります。

理由はシンプルで、自分も大切な人も損をするだけで、いい結果を生まないからです。
極力、と表現したのは、相手との関係性によって見下す内容でも談笑のテーマになるから。
相手や環境によって、言及してもセーフな内容になる場合は結構、あります。
また、自分と他人の重要な線引きをする際に、差別的な表現を欠かせないこともあるでしょう。

自分や大切な人さえ良ければそれでいいのか!との感想を持つ人もいるかもしれませんが、そうではありません。
前述したように、他者を不快にさせない選択肢を取り続けるのはそもそも不可能に近いのですから、あとは、自身がいかに他者や社会と関わっていくかの問題になります。
己にとっての好きは、誰かにとっての嫌いなのです。その逆も然り。

社会には、利己主義を貫く人もいれば、無関心を貫く人もいるし、他者に優しくしようとする心がけをする人も居ることでしょう。
それを見渡せば理解出来ることですが、一般的な道徳はそもそも機能していません
「自分がされて嫌だった事は他人にしてはいけない」 「困っている人を出来る範囲で助けていこう」
と言ったテーマは代表的かと思われますが、実践をしている人は殆どいないでしょう。
イジメられて辛い思いをした人が、ネットでイジメっ子(ネットリンチ等)化するケースも少なくはありません。

一例として挙げますが、人を見下すのは悪い事で、すべきではないと言明している人が、単に嫌いという理由のみで、相手の住所氏名や電話番号・勤務先に近い物をネットにばら撒いたケースを私は知っています。
それ、他人をめちゃくちゃに見下しているし、なんなら犯罪じゃん!と突っ込みましたが、
人(自分)に嫌われた人間には人権などないから何をしても許される、とする、ひどく幼稚な自説展開をすることで補強をしていました。
言っている事とやっている事が真逆ですし、自分自身が誰かから嫌われたときに同じような暴力に晒されかねない構造を作ってしまっています
そんな道徳よりも、合理的に考えた方が良い。
数歩先を想像して、より良い未来を作ろうとする現実的な道徳を実践する方が良い。

このような事例は稀な部類に入るとは思いますが、人間の7割程度はこのような、一般的な道徳に反する生活をしているとするのが私の見解です。

ここで、この様な一般的な道徳を「非現実的な道徳」と定義しておきます。
記事のテーマにしている内容は、これに相当すると考えます。
だから他人を見下してもいいんだ!という話ではなくて、繰り返しになりますが、どのように自分が社会と関わっていくかの話になります。

非現実的な道徳のもたらすデメリットの一つに、口先だけは達者な利己主義者に良いように利用されてしまうケースがありますが、道徳を守って自分が死ぬようなパターンは、自身と周囲に取って最悪のケースと成り得るでしょう。
口約束を信じ、信じた人に大金を貸した結果逃げられる、争いになる…連帯保証人になって一家離散。利己主義とまではいかずとも、似た事例ならたくさんあります。
その時に道徳的な人々が助けてくれるような例は、殆ど無いと言っても良いでしょう。
人間を救ってくれるのは、非現実的な道徳ではありませんし、それを有している人間でも無いのです。

自分と、大事な人と。そして可能なら全体の利益も守れるような選択を取り続けられると良いなあ、と思うのでした。

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