在宅ワークの正義。
コロナ禍以降、リモートワークや在宅ワークは当たり前の世の中になりつつあるが、私の在宅ワーク歴はかれこれ12年ほどになる。
子どもを産んでからフリーランスとして仕事をするようになり、在宅で仕事をしているので、私の仕事のスタイルは子育てと一緒に育ってきた。
かれこれ約15年前、私は都内の編集プロダクションに勤務していた。
編プロにしてはまあまあの規模感で、社員数は30名ほど。
女性向けの実用書を多く手掛けていたので、働いているのも女性ばかりだった。
業界的に察しがつく方もいると思うが、夜21時までに家に帰れたら「今日は早い!」という感じ。
都内なので夜中まで電車はあるし、入稿前は徹夜もザラで、「一体いつ寝てるんすか?」みたいな先輩も何人かいた。
そういう先輩は寝ないで仕事をしている自分に酔っているというか、やたらアドレナリンが出てギラついている感があって、すごく嫌だったのを覚えている。
中には結婚して子育て中の編集者もいた。
当時最年少として働いていた私はそういうスタッフの人との交流はほとんどなく、あまり気にも留めていなかったが、遅くても18時までには退社していたと思う。
今考えれば18時退社でも十分遅いが、大体いつも仕事を持ち帰っていた。
子どもの保育園の送迎は、どちらかの親がやってくれているとも聞いた。
実家が東京にないと、編集という仕事は続けられないんだな〜となんとなく感じ、当時同棲していた彼(現旦那)が毎晩作ってくれる夕飯に助けられながら仕事をしていた。
そんな私が結婚し、出産し、地方に移住することになった。
会社は辞めたが、ありがたいことに「家でできる仕事やってよ」とフリーランスとして在宅で仕事ができる状態になった。
編集者ではあったが特にライティングが得意だったので、原稿を書く仕事が多くなった。もちろん営業活動もしたし、それがどうにか続いて今に至っている。
子の人数も1人、2人、3人と増えたが、地方で自宅で仕事をしている母というのは当時とても少なく、理解が足りないと感じることも度々あった。
保育園の手続きをしようと役所に行くと、「家で仕事をしているなら子どもをみれるでしょ」と言われたりもしたし、
年配の方に「家で仕事できていいわよね。毎日会社に通勤しているママは大変なのよ」と言われたりもした(←これは今でもたまに言われる)。
身近な夫にだって、「家で仕事をしている=融通がきく=家事や育児や雑用も当たり前にできる」と思われがちだ。
もちろん、毎日会社や現場に通勤している大人たちには超ハイパー敬意を表したい。
私にはもうできないと思う。
でも、在宅で、しかもフリーランスで仕事をするというのは、そんなに簡単なことではない。
家で仕事が完結する今の環境にとても感謝はしているが、ここに至るまでに私だって大変なことはたくさんあった。
基本的に一人なので孤独だし、相談する同僚や先輩はいないし、融通はきくけど代わりはいない。なので、子どもが熱を出して休んでも、自分の仕事は減らないし締切も延びない。みんなが寝た後に仕事をすることもある。
明日の仕事の保証はないし、会社員のような福利厚生もない。
自分で自分を律し、ご依頼いただけるようなクオリティを維持し、全てにおいて責任を取れなければ続けられないのだ。
子どもを親に預けながら海外出張や勉強会に行く仲間を横目に、
取材日に子どもが熱を出し、クライアントさんや取材先に迷惑をかける、という自分が置かれた現実に絶望して、一時取材の案件を全て断っていた時期もある。
本当に悔しかったし、惨めだった。
とはいえ、やはり子どもに手がかかるうちは在宅ワークは本当にありがたい。
学校から帰ってきた子どもに「おかえり」と言って、おやつを出せる。
たったそれだけのことかもしれないけれど、短い子育て人生のなかで、その時間がどれだけ貴重なことか。
誰になんと言われようと私は今の働き方に誇りを持っているし、偶然の産物なんかではなく、私の努力と能力で試行錯誤しながら勝ち取ってきたワークスタイルだと思っている。
今でも義母には「うちの娘は外に働きに出ていて大変だから」と言われたりしてモヤっとすることがあるのだが、もう視界の範疇にはない。
私は私の仕事と働き方を、これからも育てて確立していくのみだ。