共同作業とRevit双方向連携が魅力の「FAST ZERO」。建設DXを見据えた鉄骨専用CAD
鉄骨専用CADを手掛ける企業で、いち早く建設DXを見据えた開発を進めてきたのが「株式会社ファーストクルー」です。ファーストクルーは従来製品の「FAST Hybrid」のころから「FAST Hybrid for Revit」を開発しており、BIMソフトウェア「Revit」との連携を実現していました。
「FAST ZERO」は2023年6月に同社が発売した新しい鉄骨専用CADです。この記事では、FAST ZEROおよび関連ソフトウェアのFAST ZERO for Revitの特徴を紹介していきます。
「FAST ZERO」の特徴
まずは「FAST ZERO」の特徴についてみていきましょう。
従来製品「FAST Hybrid」のときから複数人でモデル入力ができる「マルチ入力版」をリリースしているファーストクルー製品ならではのメリットがつまっています。
共同作業型鉄骨専用CAD
FAST ZEROの大きな特徴は、主構造・二次部材の入力や、図面作成を複数のオペレーターが共同で行えることです。例えば、ひとりのオペレーターが1階、もうひとりのオペレーターが2階を入力することができます。
これにより、作図に必要な時間を短縮し、納期までの時間的な余裕を生み出すだけでなく、確認の時間を確保することで品質を向上できます。
近年のトレンドとして、建設DXの特徴であるコンピューター技術による設計が増え、自由曲面などを有する高度な建築が登場しています。特殊な形状はモデルを入力するのに時間がかかるため、共同作業で時間を短縮できるメリットは大きいでしょう。
また、共同作業機能は、社内のサーバーだけでなくインターネットでの接続が可能です。オペレーターが自宅やサテライトオフィスでリモートワークをするときも共同作業を進められるため、多様な働き方に対応できます。
大型物件に強い
建築の高度化のほかに、近年の建設業界のトレンドとして挙げられるのが、大手デベロッパーによる大規模再開発の増加です。このような事業ではかつてない大規模建築が計画されており、使用する鉄骨は数万トンに及びます。
従来の鉄骨専用CADでは入力する鉄骨が多すぎるとひとつのモデルとして扱うことができず、ブロックで分けて複数のモデルを作成することがあります。このやり方は、操作性の悪さや境界部の不整合などにより生産性を低下させる原因です。
FAST ZEROは、数万トンの鉄骨を使う物件でもひとつの物件として入力することができます。大規模物件をひとつのモデルで扱うことでモデル入力の手間を減らし、複数のオペレーターが共同作業することで作図時間を短縮できるのがFAST ZEROのメリットです。
高品質な図面を自動作成
FAST ZEROはモデルから図面を自動作成できます。FAST ZEROで自動作成された図面は、高品質で修正作業が少なくて済むのが特徴です。
モデルから図面を自動作成する機能は多くのBIMソフトウェアに搭載されています。しかし、線が見づらい、情報量が少ないなどの理由から2次元CADで修正しなければいけないケースが少なくありません。このような修正作業が少なくなればオペレーターの工数削減に繋がり、建設DXの恩恵を受けられるでしょう。
従来製品である「FAST Hybrid」は大手の鉄骨ファブリケーターでも使われているソフトウェアです。ファーストクルーがそのノウハウを蓄積していることからも、高品質な図面を作成できることを信頼できるでしょう。
「FAST ZERO for Revit」とは
FAST ZERO for Revit は、FAST ZEROの関連ソフトウェアです。FAST ZERO for Revitを使うことで「FAST」と「Revit」間でスムーズにモデルのやり取りができます。それでは、FAST ZERO for Revitの特徴をみていきましょう。
「FAST ZERO」と「Revit」を双方向連携させるソフトウェア
FAST ZERO for Revitを介することで、「FAST ZERO」と「Revit」を双方向連携させることができます。設計者がRevitで作成したモデルをFASTに取り込むことで、最小限の工数で鉄骨モデルの作成が可能です。逆に、FASTで修正したモデルをRevitに返すことができるので、設計者は最小限の工数で修正内容を確認できます。
Revit側で差分チェックをできる環境を整えられれば、より簡単かつ高精度で修正内容を確認できるでしょう。
従来の製作図の確認・修正の作業は、設計者・ファブリケーターの両方にとって大きな負担でした。双方向連携によりコンピューターで修正・確認の作業ができれば、生産性向上に繋がります。
連携時に接合部を自動生成
FAST ZEROは、Revitからモデルを取り込むときに接合部を自動生成することができます。設計者が設計を進めるときは接合部までのモデルは必要ないことが多いため、モデリングを行いません。そのため、従来はモデルを鉄骨専用CADに取り込んだ後、接合部を手入力する必要がありました。
FAST ZEROは、あらかじめ設定したルールに従って接合部を自動生成するので、手入力の手間を大きく削減できます。さらに、接合部を加味した鉄骨数量を手軽に算出でき、精度の高い見積もりや工事計画が可能です。
お金や工期に関するトラブルの回避も期待できます。
ファイルの拡張子は「IFC」や「ST-Bridge」に対応
ファイルの拡張子は、「IFC」や「ST-Bridge」に対応しています。
IFCはBIMの汎用拡張子ともいえる存在であり、意匠・構造・設備設計などのモデルを幅広く扱えます。一方、ST-Bridgeは構造データを有する標準拡張子です。構造設計者が作成したモデルのST-Bridgeファイルを取り込めば、部材の段面寸法だけでなく鋼種などの構造データをインポートできます。
鋼種を間違えると部材が再製作になり、時間とコストのロスに繋がってしまいます。そのリスクを抑えられるのは大きなメリットであるといえるでしょう。
建築BIM加速化事業の補助対象
建築BIM加速化事業は、建築BIMの普及を目指す国土交通省の取り組みです。2023年(令和5年度)に実施された事業ですが、2024年にも継続されることが予想されています。「FAST ZERO」と「FAST ZERO for Revit」は、建築BIM加速化事業の補助対象となるソフトウェアです。
これを機に、補助金を利用して導入を検討してみてはいかがでしょうか。
「FAST ZERO」は建設DXを見据えた鉄骨専用CAD
共同作業やRevitとの双方向連携が特徴のFAST ZEROは、建設DXを見据えた鉄骨専用CADといえるでしょう。設計者とファブリケーターがシームレスにモデルをやり取りできることでスムーズに設計・製作を進められます。
また、コンピュテーショナルデザインによる建築の高度化、大規模建築の増加、多様は働き方など、近年のトレンドにあったソフトウェアといえるでしょう。建築BIM加速化事業を利用できるうちが導入のチャンスです。
参考
・株式会社ファーストクルー「共同作業型鉄骨専用CAD FAST ZERO」
・株式会社ファーストクルー「Revit鉄骨モデルの詳細化ツール FAST ZERO for Revit」
・建築BIM加速化事業実施支援室「補助事業の趣旨」
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