株・投資信託で損した人は確定申告をするとお得?!損益通算と繰越控除の解説

今回のテーマは株式・債権・投資信託など投資をやっている人で特定口座や一般口座で損失や利益が出た方を対象にした内容になっています。

投資は行っているけどNISA口座や積立NISA口座のみの方は今回のテーマでは対象外です。これらはNISAや積立NISAは運用益が非課税になっているので、そもそも税金が掛かっていないからです。

1月ごろに、投資をやっている方で特定口座を開設している方は年間取引報告書、一般口座の方も取引の頻度によって報告書の送付回数が変わるようですが、年間1回はご覧になっているはずです。

原則は株式や投資信託の配当金をもらったり、売買をして利益が出たら確定申告をしなければなりません。しかし、源泉徴収有りの特定口座を開設して、そこで取引している場合は証券会社の方で利益の中から20.315%の税金を引いた上で特定口座に入金します。既に税金を納めているので本来は確定申告の必要はありません。

源泉徴収無しの特定口座や一般口座で取引している方は、利益が出ても証券会社で源泉徴収しませんので自分で確定申告をしなければなりません。
源泉徴収なしの特定口座や一般口座で取引をしている方でも、給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下などの一定の条件で確定申告が不要になります。不要かどうかの判断はその方によって個別判断になりますので、該当しそうな方は税務署か顧問税理士にご相談ください。

毎年、確定申告をしている方は今回のテーマについてご存知と思いますが、本来は確定申告の必要がない、源泉徴収有りの特定口座のみで取引をしている方やこれから投資をしようとお考えの方は節税に繋がる内容になりますので是非最後までごらんください。

所得税の仕組み 総合課税と分離課税

今回のテーマを理解するため所得税の仕組みを知らなければなりません。
所得税は個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りに税率を掛けて税額を計算します。

この「個人の所得」というのは給与所得や不動産所得、さらに個人事業者であれば事業所得、副業などの雑所得など所得の種類毎に分類して、それぞれの計算過程を経て最後に合算したものを言います。これを総合課税といいます。総合課税は給与所得や事業所得、不動産所得などが該当します。この場合は所得額が多いほど税率が上がっていきます。

本来であれば全て合算して税率を掛けるのですが、一部の所得については、この合算から切り離して独自の計算を行い、独自の税率を掛けて確定申告をして税金を納めます。これが分離課税という制度です。

更に総合課税には源泉分離課税と申告分離課税に分かれます。源泉分離課税は所得を支払う者がその所得の支払の際に一定の税率で所得税を源泉徴収します。納税も所得を支払う人が行います。源泉分離課税で一番身近なのが、預金の利子です。利子は源泉徴収をした後に皆さんの預金口座に振り込まれています。

申告分離課税は今回のテーマのような株式や投資信託の売買で生じた利益は「株式等の譲渡所得」に分類されていて、利益に対して所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%が差し引かれます。
*復興特別所得税率=所得税率✕2.1%

株式等の譲渡所得については所得の多い少ないは関係無く一律の税率になります。つまり1年間の給与所得が300万円の人でも1億円の人でも「株式等の譲渡所得」については税率が変わりません。

損益通算の例

では、今回のメインテーマである損益通算と繰越控除について解説します。
先ずは損益通算の例として株式の売却をして50万円の損失が出たとします。一方で別の株式を売却した際には30万円の利益が出たとします。この30万円に関して20.315%の税率を掛けて60,945円の税金が掛かるのですが、50万円の損失と30万円の利益を相殺することができます。これが損益通算です。

例に上げた2つの取引を同じ証券会社の源泉徴収有りの特定口座内で行っていれば、証券会社の方で損益通算をしてくれるのですが、50万円の損失を出したのがA証券会社、30万円の利益を出したのがB証券会社の特定口座だった場合は、確定申告をしてご自身で損益通算をして税金を還付してもらう必要が有ります。

繰越控除の例

次に繰越控除のお話です。
令和4年度に株式の売却で50万円の損失が出たとしてます。次の年、令和5年度は30万円の利益が出て20.315%の税率を掛けて60,945円が源泉徴収されました。この時、前年の50万円の損失を繰り越して利益と相殺することができます。これが繰越控除です。

繰越控除をするには確定申告が必要です。また、今回の例では相殺しきれなかった20万円が残っていますが、毎年確定申告をすることで、3年間…この例では令和7年まで、繰越控除することができます。

損益通算・繰越控除で注意すること

株式や投資信託で利益が出た際に税金を安くできるので非常に有り難い制度では有りますが、注意点があります。

まず、今回ご紹介した制度は上場株式等とされるものを証券会社の口座を通じて行う取引を対象にしたものになります。上場株式や投資信託、公社債などの譲渡損益の他にも、上場株式や公社債の利子所得・配当所得も損益通算することができます。
また、非上場株式の譲渡損益は上場株式等の譲渡損益との通算はできませんが、非上場株式同士の損益通算はできます。

もう一つ注意点が有ります。損益通算や繰越控除の確定申告して、譲渡所得や配当所得が計算上でプラスになった方は、その年の合計所得金額に算入されます。そのため、金額によっては配偶者控除や扶養控除の対象から外れたり、所得金額を算定基礎としている国民健康保険料等の金額が上がることもあります。

もし、これをご覧になっている方が扶養される側の方で、源泉徴収有りの特定口座で取引をしている場合で、更にパートやアルバイトの給与が扶養の範囲ギリギリの方は確定申告をしないという選択も必要かもしれません。

NISA口座のみで取引していれば特に心配は無いと思います。

動画でも詳しく解説しているので是非御覧ください


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